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1-16:魔法書庫


「それで、アルムが契約であたしの御主人様って言うのは仕方ないニャ。でも恋愛の自由はあるんニャよね?」


 カルミナさんが私の使い魔として仕える事になって、城中大騒ぎになっった。
 しかしアマディアス兄さんの取り計らいで、獣人の能力は護衛としてとても優秀で、ネコ科の獣人はとても周囲に対して敏感で刺客などの早期察知に役に立つと言う事で私の従者として承認された。
 特に使い魔の契約をしているので、主人に対して絶対に謀反は起こさないと言うのが決め手でもあった。

「それは、僕としては問題無いと思いますけど……」

 いや、恋沙汰の問題を横から見たい私としてはイベント要因が多いほどいいのだけど。
 とは言え、自分の従者、使い魔が恋愛しても大丈夫なのだろうか?
 人や亜人なのでその辺についてはとやかく言うつもりはないのだけど……


「そうニャよね! じゃあアルム、アマディアス様をあたしに紹介するニャ!!」

「アマディアス兄さんって…… もう知ってるんじゃ?」

「そうじゃなくて、もっとこう、あたしとアマディアス様の間が進展する様なのニャ!!」


 ほほう、あのガードの硬いアマディアス兄さんを攻略したいと?
 数々の女官が言い寄り、そして第一王位継承権があるとなれば貴族令嬢も黙ってはいないあの兄さんを。

 それって玉砕覚悟って事ね!?

 それはそれで萌える!
 負けヒロインコース確定。
 これは横で見ているのはきっとイベントモリモリになって楽しいだろう。


「そんな事はどうでもいいです。アルム君、納得のいく説明をしてください!」

「猫のお姉ちゃんだ~」

「ふーん、獣人って初めて見たけど、耳と尻尾以外は人族と同じなんだねぇ~」


 やっと恋愛沙汰を楽しめると思っていたら、アプリリア姉さんやエナリア、シューバッド兄さんが私を取り囲んでいた。

 一応、アマディアス兄さんから説明はあったはずなんだけど……


「まったく、アルム様の護衛など私一人で十分と言うのに。アマディアス様もこんなどこの馬の骨とも知らない猫など」

「なんニャ? あたしが何だってニャ??」

「気まぐれな猫などアルム様のお役に立てるとは思えません。日向でゴロゴロしているだけではないのですか?」


 なんかマリーも機嫌が悪い。
 しかし流石にここまで来るとカルミナさんも黙っていない。

「ふん、お付きかニャンか知らニャいけど、獣人の村一のこのあたしに啖呵切るとはいい度胸ニャっ!」


 ふしゃーっ!


 カルミナさんはマリーに向かって毛を逆立て威嚇する。
 マリーもマリーでいつの間にかその手にはなぎなたを持っていたりする。

 これは流石にヤバい。

 私は慌てて仲裁に入ろうとすると、エシュリナーゼ姉さんがぴしゃッと言う。


「やめなさい二人とも! それより獣人が使い魔契約できると言うのは初耳よ。過去にそんな事例があったか無かったか『魔法書庫』で調べて来るから大人しくしてなさいよ」


 ぴぴくっ!

 
 今エシュリナーゼ姉さんは「魔法書庫」と言った。

 今回の事例もそうだけど、私の魔力量はすさまじい。
 正直自分でも押さえられない時がある。
 シューバッド兄さんにもらった杖でさえ、二回くらい魔力を押さえるとすぐに余剰魔量を吸って満杯になる。

 このイザンカ王国は魔道の歴史が長い。
 当然そう言った研究や事例、記録も沢山有る。

 
「エシュリナーゼ姉さん! その『魔法書庫』って僕も行ってみたいです!!」

「アルム? うーん、本当は成人するまでダメなんだけど、まぁいいか。じゃあ一緒に行きましょう♪」


「あ”-っ! エシュリナーゼ姉さんまたアルム君を独り占めですっ!! 私も行きます!!」

「お兄ちゃん、またエシュリナーゼお姉ちゃんと行っちゃうの? あたしも、あたしも~」

「『魔道書庫』かぁ、エシュリナーゼ姉さん僕も一緒に行っていいよね?」

 エシュリナーゼ姉さんが私を連れて「魔道書庫」へ向かおうとすると、みんなも行くと言い出す。
 それを聞いてエシュリナーゼ姉さんはため息を吐いて言う。


「大切な本ばかりだから、破ったり汚したりしちゃだめよ?」

「「「はーい!」」」 


 そのエシュリナーゼ姉さんの言葉にみんな声を合わせて返事をするのだった。


 * * *


 イザンカ王国が保有する「魔道書庫」。
 長い歴史を持つ我が国が保有する、人類歴に伝えられた数々の魔法がここに在る。
 
 中には古代魔法王国時代のモノもあると言われているも、現代の魔法使いの保有する魔力は有限であり、「賢者の石」から供給される無限の魔力があった当時と違う為扱えない魔法もあるとか。

 そんな魔道に関する一級の資料があるここは、王国の最重要施設でもある。
 しかし、原則王族で成人した者なら制約なく閲覧できるらしい。

 そんな書庫へ私たちは着ていた。


「す、すごい。こんなに魔導書が!!」

 そこは正しく大図書館の如く大量の本棚があり、たくさんの魔導書があった。

「エシュリナーゼ姉さん、ここ自由に見ても良いの!?」

「ええ、アルムならほとんどの書が読めるでしょう? 私は召喚魔法と獣人の使い魔契約について調べるから、読みたい本は閲覧台で読むのよ?」

「うん分かった!」

 

 私は喜び魔導書を見上げるのだった。

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