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1-14:召喚獣


 この世界の魔法使いにも使役できる使い魔と言うのはいる。

 大体は私が元居た世界同様、猫とか鼠、フクロウとか言った動物の類が多い。
 しかし、魔力が大きく複雑な術式を組める優秀な魔法使いは別だ。
 その気になれば悪魔召喚さえ出来てしまい、力が強ければ使役できる。
 
 と、モノの本には書いてあったんだけどねぇ~。


 これ、どうしよう……


「つまり、あなたは私の使い魔にはなれないって事?」

「そうニャ! あたしは助けを求めたけど、使い魔じゃないニャ!!」

 
 ふっしゃーッと毛を逆立ててエシュリナーゼ姉さんに喰ってかかっているこの獣人の猫娘、年の頃はエシュリナーゼ姉さんと同じくらいに見える。


 どうしてこうなった?


 私は頭を抱えて何があったのかを思い返すのだった。


 * * *


「私の目的は強力な召喚獣を呼び出し、使役することよ。そしてその使い魔を使ってアルムを襲った輩の足取りを掴む。人では出来ないような能力を持った召喚獣であればきっと足取りを掴めるわ!!」


 エシュリナーゼ姉さんはそう言って書き直した魔法陣に手をつく。
 そして私に振り向き言う。


「だからまたアルムの(魔力)を私に入れて、もう、奥の奥まで!! そして(私の)中にドバドバと濃い(魔力)のを出して!!」

「だから言い方ぁ―っ!!」


 わざとか?
 わざとなのかこの女ぁっ!?


 思い切り叫びたいのを我慢して、渋々エシュリナーゼ姉さんの背中に手をついて魔力を流し始める。
 前回の様に流し過ぎて暴発して服が飛び散らない様にしなきゃならないので、ゆっくり魔力をエシュリナーザ姉さんに流し込む。


「んはぁ♡ アルムが私の中に入ってくるぅ~♡」

「はぁ~、もういいですよ、なんでも……」


 いい加減この姉に突っこむのも面倒になって来た。
 なので私は魔力供給にだけ集中する。
 
 と、エシュリナーゼ姉さんが手をついている魔法陣に魔力が流れ魔力回路が起動を始める。
 その術式は空間認識から、亜空間へとその触手を伸ばして行き、エシュリナーゼ姉さんの魔力に応えるべく、いるはずの召喚獣を探す。

 姉さんは特殊能力を持った個体を欲しがっていた。
 そしてこの術式は見る限り多重に組み込まれたおかげで、召喚する対象がかなりのものになるはず。

 一体どんな召喚獣を呼び出すのだろう?

 ちょっとワクワクしながらエシュリナーゼ姉さんに魔力を注ぎ込む。


「んふぅ♡ やばい、アルムの魔力気持ちいいぃ~♡」

「姉さん集中して!」


 何故か赤い顔してはぁはぁしているエシュリナーゼ姉さん。
 年頃の娘の癖に凄いことを口走る。
 まったく、乙女なんだからもう少しつつしみと言うモノを……


 などと私が考えていたら、魔法陣に反応があった。
 どうやら注ぎ込んでいる魔力に対して、使い魔として了承を得られるかどうかの存在に行きついたようだ。

 エシュリナーゼ姉さんは更に魔力出力を上げて言う。


「アルム、凄そうなのがいた! もっと私に魔力を!!」

「はい、エシュリナーゼ姉さん!!」
 
 
 私はエシュリナーゼ姉さんに言われ、更に彼女の背中についた手から魔力を注ぎ込む。
 しかし、思った以上に魔力が魔法陣に吸い込まれてゆく。
 このままだと対象を引っ張ってくる前に魔力の触手が切れてしまいそうだ。


「姉さん! もっと魔力送ります!!」

「分かったわ、もっと私に(魔力が)濃いのたくさん流し込んで!」


 もう突っ込みはしない。
 それより目の前の事。

 私はエシュリナーゼ姉さんに魔力を更に送り込む。
 
 すると魔法陣が輝きを増してきた。
 もう少しだ。
 こちらの魔力量が上回れば召喚獣は言う事を聞いてくれる!


 あと少し!



 ぶぅうううぅぅぅん

 カッ!



 それは突然やって来た。
 魔法陣が唸り音を上げて、一気に光があふれ出す。


「やった! 召喚に成功よ!!」

「きたっ!!」


 目の前の魔法陣が輝きを徐々に収め、真ん中に影が見えた。
 その影は光が収まるとゆっくりと立ち上がる。

 一瞬何が召喚されたか分からなかったけど、それは二足で立ち上がる人型だった。


「えっ?」

 
 しかしそれを見たエシュリナーゼ姉さんは間の抜けた声を出す。



「助かったニャーっ! 危うくお陀仏になる所だったニャーっ!!」



 現れたのは、年の頃エシュリナーザ姉さんと同じくらいの金髪ネコミミ、尻尾を持つ美人の獣人だった。


「エ、えええええぇっ!?」

 私は思わず声を上げてしまう。
 だって、獣人が召喚獣として呼び出される事例など聞いた事が無いからだ。

 しかし、エシュリナーゼ姉さんは冷静に彼女に言う。



「よく来たわね、さあ、主従契約をして私の使い魔になりなさい!」




 エシュリナーゼ姉さんは迷うことなく彼女にそう言うのだった。
    

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