第二十七話 「夜烏組」
ビルサ城の広場にて、町人達が抱き合い、涙を流して喜んでいる。広場の端にはこの城の主、“
「ところでウンケイ。あいつらどうすんだ?」
しゃらくが倒れたビルサを見る。
「どうするって、そうだな。・・・本来は首を斬るのか」
「えェ!? 嫌だぜおれは! それじゃア、バカな侍と同じだぜ!」
しゃらくが大きな声を出す。するとウンケイが笑う。
「だろうな。じゃあどうするかな」
すると、城に集っていた町人達が、何やらザワザワと後ろを振り返っている。
「
後ろから大きな声がする。すると、町人達が道を開け、その中から黒い
「何だァ?」
「
ウンケイが、男達をジッと
「
「お前は世の中の事を何も知らねぇのか? どこから話すか。・・・お前も知ってる通り、今は戦国の時代。各地の将軍達が天下を目指し、しのぎを
しゃらくが眉を
「そいつの名の下に、
「ふーん。色んな奴等がいるんだな」
しゃらくが、話を聞き終えてか終えないでか、頭の後ろに手を組んで、少し離れた城壁の破片に腰を下ろす。
「興味ねぇなら聞くな。そうだろうと思ったが」
ぞろぞろとやって来る
「・・・貴様らもビルサの一味か?」
男がしゃらくとウンケイをキッと睨む。
「そうだと言ったら?」
ウンケイが睨み返す。
「引っ捕える」
チャキッ。男が腰の刀に手を添える。辺りに静かな緊張が走る。
「・・・ま、待ってくれ! この人達は関係ねぇ! むしろ恩人だ。ビルサを倒してくれたのは
町人の男が
「そうだそうだ! 第一、今まで知らんふりをしていたあんた達が、今更一体何の用だ!
他の町人達も続いて、ぞろぞろと男に
「近づくな! 町人の
男が腰の刀を町人達に抜きかける。
「あんたらに興味はねェけど、その剣が何も関係ねェみんなに向くなら、・・・おれ達が黙っちゃいねェぜ」
奥に座るしゃらくが、ギロリと睨む。
「・・・くっ! 生意気な・・・」
男は、地面に刺さった刀の方へ、ゆっくりと歩いて行く。そして刀を地面から抜き、
「・・・覚えておけ。次に貴様らと
男が、しゃらく達に背中を向けたまま
*
「わぁっはっは!!」
月明かりに照らされたビルサ城。その城下町に、軽快な
「あいつが一番はしゃいでどうする」
櫓の下、茶屋の店先の長椅子に座り、酒を片手に櫓を見上げるウンケイが微笑む。隣には
「ははは。全く賑やかだぜ、あんたらは。さ、
隻腕の侍が、ウンケイの
「あぁ。悪ぃな」
長く苦しんだビルサの支配から解放され、歓喜する町人達は
「いやァ楽しいなァ! ん? 何だあんた、また泣いてんのか?」
「・・・こりゃすまん」
「皆笑ってんのに、あんたが泣いてどうすんだ。わははは」
しゃらくが笑いながら食べ物を
「ははは。そりゃあそうだな」
そう言うと隻腕の侍もクイッと酒を飲む。すると今度は、食べ物をたらふく食べ、腹一杯になったブンブクが、しゃらく達の前に倒れ込む。
「わははは。食い過ぎだぜブンブク」
しゃらくがしゃがみ、
「ところであんたら、この後はどこへ?」
隻腕の侍が
「まずは、こいつを
しゃらくが、ブンブクの腹を叩きながら呟く。隻腕の侍は驚いているが、ウンケイはニッと笑っている。一方のブンブクは、いびきをかいて眠っている。
「・・・あぁ、その子は確か、“
隻腕の侍が頭を
「へぇ。じゃあ、
ウンケイが笑いながら酒を飲む。
「温泉? いいねェ」
しゃらくが笑顔になる。
「温泉じゃねぇ、
「おォ! そりゃア行ってみてェ!」
ウンケイの話に、しゃらくが目を輝かせる。
「あとな、あそこは確か
ウンケイがニヤリと笑う。
「へェ。おもしれェ! すぐに行こうぜ!」
しゃらくが鼻息を荒げて腕を
「ま、まぁ待ちなよ。そう早まるな。・・・あそこに
侍の
「俺達が食料調達に行けたのは、同じ
しゃらくとウンケイが見つめる中、侍がごくりと
「“
侍が
「な、何故ニヤニヤしているんだ!?」
二人の態度に侍が
「まァどんな奴がいてもよ、こいつは故郷へ届けるぜ。見ただろ? おれ達は
笑い飛ばすしゃらくとウンケイに、侍は
「“
「相手に不足無しだな」
「だな! だァっはっはァ!!」
何故か大笑いする二人に、侍もつられて微笑む。
「・・・はは。・・・何やら要らぬ心配かもしれんな」
盛大な夜祭りに、ビルサの支配から解放された町人達は一晩中
完