1-3:悩み
どーすんのよ、この状態……
私は授乳をされながら悩んでいた。
今この身体では何もできない。
おっぱい飲んでねんねして、抱っこしておんぶして~。
マジ、乳幼児ってこうだったんだ!!
くぅ、人類の成長と進化ってすごい。
早く私も人間になりたあぁ~いぃ!!
などと考えても今はどうしよも無い。
とにかくおっぱい飲んで、ねんねして、排泄物を排出して成長するしかない。
「うぶぅ~、あぶぅ~」
声を出してみてもまともな発音は出来ない。
はぁ~、どうしたもんか。
なんでこんな乳幼児からスタートさせらるのかねぇ~。
こんな乳幼児で意識があっても苦痛でしかないってば。
どうせなら、あの乙女ゲーの様に転生してある程度成長してから前世を思い出す方がいいのにぃ~。
私はここ数日、自分が男になった事や今の乳幼児の不自由さにストレスを溜めていた。
だが今は耐えるしかない。
とにかく現状をしっかりと把握してこの体を成長させ、そして今後の人生計画を立てて行かなければならない。
だって、男の子になっちゃったんだもん!!
う~、男の子になったって事は私は将来何らかの形でお嫁さんもらって子孫を残さなきゃならないのよね?
子供の作り方はもちろん生前にしっかりと理解しているからそれは良いとして、問題は同じ女性とそう言う事が出来るかって話。
正直無理!!
いや、三十九年間女やっていて同性とそう言うことするなんて考えた事も無いわ~。
そりゃぁ、中には可愛くて性格のいい友達はいたけど、あそれはあくまで友人としてしか見た事が無い。
恋愛対象やそう言った事をする為の同性なんて考えた事も無かった。
でも今の私は男の子。
これから男の子として成長して、そして来るべき時を迎えなければならないとなった時に、同じ女性相手に?
できるかそんな事っ!!
考えただけで背筋がぞわぞわとする。
私にレズの気なんてこれっぽっちも無いってば!!
はぁはぁ、とは言えどうあがいても今度の人生は男の子。
噂では男の子は女の子と見ればそう言う対象としてしか見ないとか。
ほんとうに男ってどうしようもないわよね?
でもそんな男の子に私はなってしまった。
うううぅ~。
もう何度もそんな事をぐるぐると頭の中で考えていると、眠気が……
まだまだ乳幼児なので考える力も弱い。
私は不服ながら睡魔に抗えなくてまた眠ってしまうのだった。
* * * * *
「あれ? ここは……」
気が付けば私は生前の姿で明るい場所にいた。
しかも裸で。
足元にはもやがかかっていて、まるで天国か何処かのような感じの場所。
「もしかして、あの女神が私を呼び戻した? いや、あの時は薄暗い部屋だったし……」
そんな事をぼやきながら何処へ向かうと言う訳でもなく歩き出すと、目の間に大きな光る玉が見えて来た。
それは固そうでいて柔らかそう。
ツルツルの表面に見えてザラザラしているようにも見える。
白っぽかった色は七色に変わったりと、どんどんその様子を変えて行く。
「一体これは?」
そう思い触れてみると、とても暖かい。
いや、何と言うかそこから私の身体に力が流れ込んでくるような感覚?
「これは一体?」
そう、私が思った瞬間私は目が覚めた。
そしてうっすらと目を開くと相変わらずのベビーベッドに寝かされているようだ。
しかし、なんか今は感覚が少し違う。
体の中を何かがうねりまくっている?
いや、流れている。
そのなんとも言えない流れているモノはまるで血液のように体中をめぐっていた。
一体何なのだろう、これは?
でも面白いものでそれを感じようとすると体の奥底、何と言ったら良いのだろう臓器で無く私の奥深くからそれはにじみ出ている。
そんな変な違和感を感じながらまた今日と言う一日が始まるのだった。