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本編

 繁華街の大通りを歩いていたら、急に辺りが薄暗くなった。にわか雨かと空を見上げてあっけにとられた。そこに見えたのは、巨大な人影だった。丁度スカートの中を下から見上げるような感じ。パンツがどこかで見たようなって…これ、もしかして今日の私の服装? ってことは、これ、私? 何で?
 他の人に見られたら嫌だと思って辺りを見回したけど、何か誰も気にして無いみたい。私にしか見えてないのかな? 良く確認してみたいので少し離れた所から改めて見直した。顔も髪型もカバンも服装も、どう見ても今の私の姿だ。けれども、全く動いていない。何ていうか、写真に撮った私を人形にしたみたい。どうしよう…
 と、突然耳元に声が聴こえてきた。
「申し訳ない。1/8で出力するつもりが、間違って8倍で出力してしまいました。今すぐ消しますね?」
「えっ、えっ、えっ???」
辺りを見渡すけど、私に話しかけているような人は見当たらない。
「声はあなたにしか聴こえないようになっていますし、我々はそこにはいませんので」
 気づくと、私の巨大人形は消えている。辺りも明るくなっている。
「ちょっと待って下さい。どういうことですか? 説明して下さい」
「あーー、えーー。我々はここでは無い銀河の惑星で雑誌の出版をしています。『他惑星の知的生命体』というシリーズがありまして、付録でフィギュアを付けているんです。結構コレクターに好評なシリーズでして、この地球ではあなたをモデルに選ばせて頂きました」
「私そんなの許可した覚えないです!」
「…その星で売る訳じゃないから我々今まで許可なんか取ったことないですね。もう、デスクの承認も通っちゃってるし。あの、モデル使用料払うので許して貰えませんか?」
「うーん、幾ら? 安売りするつもりは無いよ」
「私の裁量でお支払いできる限度額を、お持ちのM銀行の口座に振り込みましたので確認して下さい」
 何で私の銀行口座知ってるんだろう? まぁ、良いけど。スマホで残高を確認する。えっと??? 千、万、十万、百万…って、いっせんまんえん???
「後で契約書も送っておきますんで。源泉分天引きしてありますけど、確定申告きちんとしてくれたら問題になりません。あ、ご両親の扶養外れちゃうかもしれないから、そこは良く相談して下さいね。10万円か、もう少し位払えば諸々やってくれる税理士もいると思いますよ。質問とかあれば、契約書に記載した窓口会社に問い合わせてください。では」
と、言うだけ言って、彼らはいなくなってしまったみたいだ。
 この一千万円、何に使おう?

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