おまけ
曾祖母は私が気に入ったのか、それからも時々夢に出てきてお話をするようになった。夢で羊羹やおこしをねだられるので、時々実際に仏壇にお供えしている。お供えしたお菓子は、ちゃんと夢で会った時に食べて感想を教えてくれる。昔の羊羹は切って置いておくと切り口から砂糖が吹き出したとか、おこしは歯が折れそうなほど固かったとか、でも今のはそんなことなくて不思議って言っている。最近のお菓子も食べてくれるけど、昔ながらの和菓子の方がお好みみたい。お煎餅も好きらしいけど、固くて大きいと食べられないとのことで、粒が小さい浪花屋の柿の種や雪国あられを専ら欲しがる。
「龍彦さんに会った?」って尋ねたら、「内緒」って言われた。これは、会ってるな…
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何年かして、私にもお付き合いする相手ができて、今度彼の田舎にご挨拶に伺うことになった。夢で曾祖母に伝えると、喜んでくれた。けれど、「あちらの方によろしくね」と言った切り後ろを向いて、何やら堪え切れずに笑っているようだ。身体が震えている。ちょっと嫌な感じ。何なんだろうな、この人は?
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彼の田舎はいわゆる地方の名家みたい。もう今の時代そんな家ほとんど聞かないけど、法事等では今でも親戚が何十人か集まるって聞いた。実際、遠目にも広くて大きいことが分かった、時代劇で見るような門があり、塀で囲まれた立派なお屋敷だった。
中に入り、彼のご両親やご家族にご挨拶をした。それから仏間に通されたので、彼に続いて私もお仏壇を拝ませてもらった。ふと、上を見上げると、ご先祖様の遺影が並んでいた。中に妙に若い人がいて、見た瞬間思わず声が出た。
「龍彦さん!」
「…あなた、ご存知なの?」
彼の曾祖母という人が驚いて私に尋ねてきた。彼女の叔父で若い頃に亡くなったのに、どうして私が知っているのかを色々と尋ねられた。子供の頃よく遊んでもらったらしい。行きがかり上、曾祖母と龍彦さんの話を色々と話すことになった。彼も隣で唖然とした顔でそれを聞いていた。
話してる間中、後ろで曾祖母が笑い転げている気がした。これは、多分仕組まれたなぁ。こういうのも、運命っていうのかな? まぁ、彼に不満は無いし、いいんだけどさ。
どっちにしろ、「波」はここへ置いて行こう。