友達でしょ
「は? 金がないからタダで除霊しろ? マジで言ってるの」
「友達でしょ」
「いや、友達でも、タダは無理、だいたい、私がそっちに行かなきゃならないんでしょ、交通費は」
「なによ、友達の頼みなんだから、すぐ来て、さっさとやってよ」
「私はいま東京で、今あんたは沖縄の離島でしょ。いくらかかると思ってるのよ、タダで除霊するにしても交通費まで自腹って、いくら何でも無理」
「なによ、友達が困ってるんだからそれぐらい、いいじゃない」
「だいたい、島の言い伝えで行っちゃいけないところにあんたのバカ息子が行って呪われたんでしょ。自業自得で私に何の関係もないじゃない」
「友達じゃない」
「中学のとき、同じクラスだっただけじゃない、なにが友達よ」
「ちょ、き、切らないで・・・」
薄情かもしれないが、本当に友達といえるほど会話したことなく、いきなり電話が掛かってきたときも、最初、名前を聞いても全然心当たりがなく、学校名とクラス名を聞いて、ようやく同じクラスだったひとだと認識したような相手だった。断るのは当然だったが、その女、私が高額の除霊料を吹っ掛けてきたと当時のクラスメイトに吹聴して回り、仕方なく、直接文句を言うために連休中、その島に飛んだ。
彼女はげっそりやつれていて、憑りつかれておかしくなっていた息子さんは部屋に閉じこもっていた。同居していた祖父母が良識人で、私に交通費も含め相場の除霊料を払うと約束してくれたので、除霊してあげた。だが、私が、祖父母からお金を受け取ったと知ると、あの女、今度は祖父母を騙して高額な除霊料をふんだくったと吹聴して回り、息子が憑りつかれた場所を調べていた彼女の夫に別の悪霊が憑依したと聞いても、私は、もう交通費がないと除霊を突っぱねた。