帰っちゃった
「ただのマザコンだよ」
リーダーは鳩が豆鉄砲を食らったようにポカンとした。
「ご、誤魔化さないでくださいよ」
「ははは。ごめんごめん。まぁ真面目に答えてあげたいのは山々なんだけどさ、多分ちょっと急がないといけないんだよ」
「え、なんのことですか?」
「すぐわかる。悪いけど、走ってもいいか?」
「? えっと。いいですけど……」
「じゃあついてきてくれ」
俺はリーダーが追い付いてこられる程度のスピードで走り出した。
ダンジョンを出ると、やはり予想通りの状態だった。
「あーあ。遅かったな。まぁ俺からすればどっちにしてもあんま変わんないんだけど」
ここまで来た馬車が無くなっている。
ランとリサが二人で勝手に帰ってしまったようだ。
「二人とも、僕たちを置いて帰っちゃったみたいですね」
リーダーが息を整えながら言った。
「俺から逃げてるわけだから俺は無理としても、せめてあんただけでも馬車に乗せてやりたかったんだけどな」
「ははは……」
リーダーは乾いた笑いをこぼした。
「よし。じゃあまたまた悪いんだけど、走って帰るか」
「ん? ……えぇ!? 走って!? ここから町までですか?」
「うん。しょうがないだろ。馬車がないんだから。あれ、ってか俺宝箱の剣どうしたっけ?」
「さっきリサにちょっと持っててと言って渡してましたよ」
「あ、そっか。なら荷物も少ないし大丈夫だな」
「え……本気ですか?」
リーダーは嘘だと言ってくれという顔をしていた。
俺は笑ってリーダーの肩を軽く叩いた。
「別にあんたにまで走れってんじゃないさ。あんまのんびりしてたら多分面倒なことになるから急いで帰らないといけないし。俺があんたを背負って走る。それが一番早い」
リーダーが自分の分と俺の荷物を背負い、そのリーダーを俺がおんぶした。
「な、なかなか恥ずかしいですね」
「ははは。まぁ我慢してくれ」
「……えーっと。うやむやになるのは嫌なので先に言っておきますけど、町に戻ったらさっきの話の続きを聞かせてくださいね」
「いいよ」
リーダーは割と良く接してくれたし、お礼の意味も込めて少しくらい自分の話をしてもいいかと思った。
「じゃ、しっかり掴まっててくれよー」
「はい」
俺はリーダーに負担にならないくらいのスピードを意識して走り始めた。
あんまり飛ばし過ぎると多分リーダーが振り落とされるからだ。
でも悠長にしているわけにもいかない。
さっきも言ったけど、俺の予想が当たっていれば、先にギルドに戻ったあの二人の行動を止めないと面倒なことになる。