芸術
「これは、芸術なのよ、芸術は表現の自由として守られるべきものでしょ?」
「表現の自由だからって、何をやっても許されるわけじゃないでしょ」
「けど、存命の人間の写真を芸術の名のもとに焼くのが許されるのなら、実際に人間を焼くのも前衛芸術として許されると思わない?」
「あ、あんた、なにいってるの?」
「私は、焼く光景を撮影するだけ、人間が燃える炎って、きっと地獄の業火のように美しいと思うわ」
「あんた、正気?」
「火葬は、日本では当たり前の弔いの仕方でしょ、それを芸術作品として写真にしたいだけ。たぶん、私が捕まって、その裁判で一回しか目に止まらないでしょうけど、一回でも、人々の目にさらされる機会が与えられるなら充分。きっと、傍聴席や陪審員の目に焼き付くような作品に仕上がると思うわ。あなたも、この写真のモデルに選ばれたことを光栄に思って焼け死んで」