モンスター
「何していたの?」
すると、彼女は笑顔で答えてくれたんですよ。
「はい、実は魔王様の秘書をさせていただいております」
それを聞いて驚きました。
まさか彼女が魔王の秘書をしているだなんて思いもしませんでしたからね、
でも、よくよく考えてみれば納得できる部分もあるんです。
だってシルフィーさんって可愛いし優しいじゃないですか、それに料理も上手だし家事全般も完璧にこなせるんです。
だからきっと魔王様も彼女のことを気に入ったんでしょう。
そう考えるとなんだか複雑な気分になってしまいましたが、それでも彼女が元気にやっているようで安心しました。
(それにしても本当に久しぶりだな)
そう思いながらも俺は彼女と話をすることにしてみたんだが、その際に彼女がこんなことを言ってきたのです。
「勇者様、魔王軍に入るおつもりはございませんか?」
とね、まあ、確かに今の俺の格好を見ればそう思うのも無理はないかなとは思いましたけど、でも今は違うんです。
だから胸を張ってこう答えることにしたんです。
「いえ、違いますよ」
すると彼女は苦笑しながら言ったんです。
「そうですか、それは残念ですね」
そして、俺たちは別れた後、魔王から指示を受けた俺は早速行動を開始することにしたんだ。
俺は情報収集を行うために酒場へと向かったのだが、そこで思わぬ人物と再会することになるとは思いもしなかったのである。
こうして新たなる一歩を踏み出したのであった。
草むらを抜けると、そこは森の中だった。
どうやら無事に抜け出せたようだ。
見渡す限り周囲に魔物の姿はないが、油断はできないだろう。
そう思った矢先のこと、 ガサガサッ!
という音と共に草むらの中から現れたのは巨大な蜘蛛のような姿をしていたモンスターであった。
その体躯は人間の数倍はあるだろうかというほどであり、鋭い牙からは紫色の液体が流れ出ている。
明らかに危険そうなやつだな、
ここは逃げるべきか?
いやしかし逃げ切れるかどうか分からないし、何より金がないから野宿もできないんだよな。
まあ、別に死んでもいいんだけども、うーむ、どうしたものかな。
そんなことを考えているうちに蜘蛛の魔物はこちらに狙いを定めたようでゆっくりとこちらに向かってきた。
(よし、こうなったら戦うしかないようだな)
そう覚悟した次の瞬間には蜘蛛が飛びかかってきたのだがそれをひらりと、かわして、逆に蹴りを入れてやることにしたのだ。
すると、意外にも効いたらしく苦しそうに悶えている様子が見えたが、まだまだ元気そうなので油断せずに追撃を加えていくことにしてみた。
その後も何度か攻撃を加えた結果ついに弱ってきたのか動きが鈍くなってきた、
一気に畳み掛けるように攻撃を繰り出すとついに、耐えきれなくなったのか、そのまま倒れてしまったようだった。
(よっしゃー!)
心の中でガッツポーズを取りつつ勝利の余韻に浸っていたのだが、そこでふと我に帰った俺は辺りを見渡してみることにした。
特に何も変わりはないようだと思った次の瞬間のことだった。
背後から何者かの足音が聞こえてきたのだ。
慌てて振り返るとそこには一人の女性が立っていたのである。
年齢は二十歳くらいだろうか、黒髪ロングヘアーで胸は大きくお尻も大きいモデルのような体型をしている美人さんだった。
彼女は俺に近づいてくるなり話しかけてきたのである。
いったい誰なんだ?
と思ったがよくよく考えてみれば、今の俺は全裸だということもあり迂闊に、近づくことができないと判断したので、
しばらく様子を見ることにしたんだ。
すると突然彼女が上着を脱いで下着姿になったと思ったら俺に向かってこう言ったのだ。
「私の名は、田上 菊江。この森でサキュバス族の長を務めています」
と名乗った後に
「あなたは一体誰なの? どこから来たのですか?」
と聞いてきたんだが、俺は答えられなかった。
だってまさか勇者だなんて言えるはずないからな、
そんなことをしたら一発で正体がバレてしまうだろうからな。
だから黙って誤魔化したんだがそれが逆に怪しく見えたらしく追及してきたんだ。
それでもなお黙っている俺に痺れを切らしたのか彼女が近づいてきて顔を近づけてきたのだが
その時に俺のズボンの一部が盛り上がってしまったことに気づき気づかれてしまったかもしれないと思った時にはもう手遅れであった。
彼女の顔は真っ赤に染まっており、恥ずかしそうに顔を背けたと思ったらそのまま走り去って行ったのである。
(やばいぞこれは……どうしよう……)
と思いつつも何とかその場を後にしたのだった。
その後も情報収集を続けてみたものの特に目新しい情報は得られなかったため仕方なく一旦拠点に戻ろうとしたその時のことである。
草むらの方からガサガサという音が聞こえてきたのだ。
「何だ!?」
そう思い警戒していると、そこから現れたのは先程の蜘蛛のようなモンスターだった。
(おいおいマジかよ!?)
もう逃げるしかないと思い全力で逃げたのだが、なぜか追ってくる気配がないのである。
不思議に思って振り返るとそこにはもう姿はなかったのだった。
なんだったんだろうか……?
不思議に思いながらも拠点へと戻ることにした俺は疲れ果てていたので、その日はすぐに眠りにつくのであった。
翌朝になると昨日の出来事を思い出して身震いをするが、いつまでも引きずっていても仕方がないと思った。
俺は再び情報収集に向かったんだが、やはり目ぼしい情報は何も得られなかったため仕方なく戻ろうとした時のことである。
遠くから女性の悲鳴のようなものが聞こえた気がしたのだ。
急いで行ってみることにするとそこにいたのはゴブリンたちに襲われている女性の姿だったのだ。
慌てて助けようとしたが武器もないし、どうしようか、迷っている間に女性は追いつめられていき万事休すかと
思われたその時のことだった。
なんと突然、空から光が降り注いだかと思うと目の前に一人の美しい女性が立っていたのだ。
髪は銀色でサラサラしており長く伸ばせば地面につくだろうというくらいの長さだ。
瞳の色も金色でとても綺麗だと思った。
しかしそんなことを考えている間に女性は何やら呪文のようなものを唱え始めたかと思うと、
たちまちのうちにゴブリン達は消滅していったのである。
そして残ったのは一匹の大きな熊だけだったがこちらも次第に動きが鈍くなり最後には息絶えてしまったのだった。
そんな出来事があった後、俺は無事に拠点へと戻ったんだがそこで再び不思議な現象が起こったのである。
それは俺の体が光り輝き出したと思ったら徐々に小さくなっていき最終的には手のひらサイズまで縮んでしまったんだ。
(な!? なんでだよー!?)
そう叫びたかったのだが声が出ないのでどうしようもない状態だった。
そんな俺を見た彼女の反応はというと、最初は驚いていたのだが次第に嬉しそうな顔になっていき 俺をそっと手に乗せると優しく抱きしめてくれた。
そして彼女はこう囁いたのだ。
「可愛いわね、でもこんなモンスター見たことないけどひょっとして新種かしら?」
俺が驚いていると彼女は更に言葉を続けた。
「ねえ君、うちに来る? 私の眷属にしてあげようか? そうすれば色々と便利だと思うわよ」
と言ってきたのだが俺はもちろん断ったんだ。
だって嫌な予感しかしないからね。
だけどこのまま黙っていても拉致が開かないと思ったので彼女に頼んでみたんだがあっさりと拒否されてしまったため
仕方なく自分で歩くことにしたんだけどこれがまた大変だったんだよ。
「ほれ、おまちど!」
そう言って差し出されたものは白い皿に載ったホカホカのステーキと山盛りライスだ。
ちなみに、これらの料理は全てセレナが作ったものだそうだ。
彼女の調理技術は大したものだが、いったいどこで覚えたのだろうか?