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閉じ込められるやつ

 時間が進み、俺は学校の体育館にいた。
授業内容は、男子がバスケで女子はバレーボールのようだ。

作者による設定では、俺は運動神経がいい。

ヒロインである桜子は、いつも気だるげにしている俺が体育の授業で無双する姿を見て、ギャップ萌えみたいな感じでまた余計な好感度が上がるのだ。

だから俺はわざと下手くそに動いた。
看病イベントのことで、俺はちょっとイライラしていた。
強引にでも作者の意図から外れてやる。

ふと、体育館の後方でバレーボールをしている桜子の方を見てみると、俺のことを見ないように気をつけているようだった。


 また時間が飛んで、俺は体育の授業の片付けをしていた。

体育倉庫にボールを運んでいる最中のようだ。
そこに桜子が来た。

「手伝えって先生が。あくまで先生に言われたから来たってだけで別にあんたの」

「ためなんかじゃないんだからね。勘違いしないでよね。だろ? 絶対勘違いしないし、したこともないわボケ」
作者がワンパターン過ぎてセリフが読めてしまう。

「わかってるならいいのよ」

それから二人でボールの入ったカゴみたいなやつを体育倉庫に運んだ。

この時点で気づくべきだった。
これも定番の流れじゃないか。
閉じ込めれるやつだ。

自分で思っている以上に、看病イベントは俺にとってかなり心が乱されることだったようだ。

完全に油断していた。
気づいたら体育倉庫の扉には鍵が閉められていた。

いや、もしかすると俺の油断が原因ではないかもしれない。

作者が閉じ込められた時点まで時間を進めたのだったとしたら、俺にはどうしようもない。

ボーっとしてたから真相を知るすべはないが、結局現実は変わらない。

フィクションの世界で現実っていうのもおかしな話だけど。

ともかく、こうなってしまった以上仕方ない。
この状況から俺にできることをするだけだ。

「あ、開かない!? 閉じ込められちゃったみたい……」
桜子が真っ青な顔で俺の方を振り返ってそう言った。
俺は頷いた。

「ああ。ちょっとそこをどいてくれ桜子」
「どうするつもり?」
「こうするんだよッ!」
俺は力いっぱい扉をぶん殴った。

「誰かぁあああ! 助けてくれぇええ!」
そして腹の底から大声を出した。

「ちょ、晶午」
「うわあああ! 助けてェエエ!」

「晶午落ち着い」
「いやぁああああ!」

「ちょっと、冷静に」
「あああああ!」

俺は桜子の制止を振り切って扉を殴り続け、叫び続けた。

あまり俺を舐めるなよ作者ァ!
俺はやるときはやる男だ!
何がなんでもラブコメな雰囲気をぶち壊してやるぜ!

「うぉおおお!」

五分ほど経った頃、救助が来た。
ブヘヘヘ!
俺の勝ちだ!
前回の恨み、晴らしたりィイ!

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