美食家
「ゲテモノほど、食べると美味い珍味だと聞いたことはないかね」
「珍味ですか?」
「そうだ。だから、私は、地上のあらゆるものを食べつくしてきたつもりだが、まだ食べていないものがある、何か分かるかね」
「さぁ、なんですか?」
「人肉だよ。カリバニズムという言葉があるように、人肉を食べた人間は存在する。なぜ、そのようなことが行われるのか。そこまで人を引き付けるほど美味なのか、他人の肉を食うことで何か素晴らしい恍惚を得られるのか、美食家として、その味に非常に興味をそそられるのだよ」
「だ、だから、私を殺して食うと?」
「君の両親は、快く、君を売ってくれたよ」
「両親が私を、そんな馬鹿な」
「本当さ、若い君の肉は柔らくて、きっと美味だろうね」
「ハハハ・・・、なるほど、両親が私をあんたに引き合わせたのは、こういうクズなら、私も遠慮なく人間が食えると思ったからでしょうね」
「な、何を言って、て、そ、その目は・・・」
「普段は普通の人間に擬態してるだけよ、この化け物じみた姿が、本当の私。残念だけど、私たちの主食は人間なの。いただきます、美食家さん」