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それから!

正直言って、勘弁してくれと思ったよ。
それでも、一応は元仲間だし、食事くらいならいいかと思ってついて行ったんだけど、そこで出された料理がまた美味くてさ。
ついつい食べ過ぎてしまったせいで腹がいっぱいになってしまったんだけど、あいつとの昔話に花を咲かせているうちに
酔い潰れちまったみたいで気づいたら朝になってたんだよ。
でも不思議と気分が良くてスッキリしていたこともあって、そのまま泊めてもらうことにしたんだけれど、問題はその後だったんだよ。
何とあいつが俺の頭を撫でながらこう言ったんだぜ。
信じられるか?
しかも耳元で囁かれたんだぞ。
「僕は君のことを本当に愛しているんだよ、だから、これからもずっと一緒にいようね」
その言葉を聞いた瞬間、全身に鳥肌が立ちましたよ。
恐怖と嫌悪感が入り交じったような感覚に襲われて吐きそうになったんですが、必死に堪えてたんだ。
しかし、その後も執拗に迫ってくるあいつにとうとう我慢できなくなった俺は、思わず手を上げちまったんだよ。
そしたら、思いっきり殴っちまって、その結果、あいつを半殺しにしてしまったんだが、そのことが問題になって、俺はパーティーから追放されちまったんだ。
当然だよな、だって仲間を殺そうとしたんだからさ。
でも、後悔はしていないぜ。
だってそうしないと俺がやられるところだったから、仕方ないだろ。
そんなわけで現在に至るわけだが、やっぱり元の世界には戻れなかったみたいだ。
それにせっかく稼いだ金も全部没収されちまったうえに指名手配されちまってるしで踏んだり蹴ったりだよ。
全く、 そんな俺の苦労なんて知ったこっちゃないと言わんばかりにエルナさんが話しかけてくるんです。
しかも、俺が何か言う前に勝手に決めちまいやがるんだから困ったもんですよ。
本当に。まぁ、相手が相手だけに文句は言えんのですけど、
それでも、何とか交渉したものの、結局聞き入れてくれず、渋々諦めざるを得なかったというわけですよ。
そんな感じで一悶着ありましたが、なんとか乗り切ることができましたし、いよいよ出発の時になったわけなんですけど、
ここで思わぬ事態が起こってしまったんです。
「それじゃあ、これからの旅路についてだが、まずは王都から西に行くと大きな港町があるらしくてな。
そこで船を発注しないといけないんだが、そのための費用が足りないため稼がないといけないという結論に至ったわけだ」
とロランさんが説明を始めましたが、正直言って何を言っているのかわからなかったんですよね。
というのも、俺にはこの世界の知識が全くないからですよ。
でもね、だからと言って文句を言ってもしょうがないです。
「それで、どうやって稼ぐつもりなんですか?」
と聞いてみたところ、返ってきた答えは意外なものでした。
なんでも、冒険者として依頼を受けて報酬を得るんだそうですが、その際に依頼者からもらうお金の分け方にも注意が必要だとかで、
よく考えて行動しないといけないらしいんです。
ちなみに、依頼者に渡す金額は5:5にするのが基本なんだそうですから覚えておいてください。
言われましたのでちゃんとメモしておくことにしましたよ。
そして翌日出発することになったのですが、移動には馬車ではなく徒歩になったようですけど何故か聞いてみると、
まずは徒歩で旅をしながら街の様子や戦い方を学んでいく必要があるということでしたし、俺自身体力に自信がないわけじゃないっていうこともあって
引き受けることにしたわけですよ。
そんなわけで始まった新生活だったんですが、初日にして早速トラブルに巻き込まれてしまうなんて考えても見ませんでした。
「てめぇ、このクソガキ! よくも俺様の荷物に傷をつけてくれやがったな!」
どうやら、馬車の持ち主が怒り心頭で怒鳴っているようです。
実は、俺が走っている途中でぶつかってしまったらしいんですよね。
それで怒らせてしまったというわけなんですが、どうしたものかと考えていたら突然ロランさんが仲裁に入ってくれたおかげで事なきを得ましたね。
「まあまあ、落ち着いてくださいよ。
彼も悪気があってやったわけじゃないんですから」
と言って宥める彼の言葉を聞いて冷静さを取り戻したのか、謝罪の言葉を述べると許してもらえたようですが、問題は解決したわけではありませんでした。
というのも、荷物に傷がついたせいで商品が売れなくなってしまったらしく、その損害金を支払わなければならなくなったからなんです。
しかし、その額はとても一人で払えるようなものではないため悩んでいるところ、ロランさんが助け舟を出してくれたお陰で事なきを得ましたけどね。
まあそんなこんなでなんとか依頼を達成することができましたよ。
ちなみに報酬は僅かだったそうです。
いや〜それにしても本当に不思議な感覚でしたね。
まさか自分が異世界に来てこうして冒険することになるなんて思ってもみませんでしたからね〜いやあ驚きましたよホントやっぱり知らない
土地や世界を旅するのはとてもワクワクします。
「ところで、次はどこへ行くんだ?」
とロランさんに聞かれたので、とりあえず近くにある街へ行ってみることにしました。
その道中、色々と話を聞かせてもらったんですが、どうやらこの辺りには盗賊が出るらしいんです。
しかも複数人いるらしく、警戒しながら進む必要がありますね。
まあでもそれ程焦る必要もないと思うんですけど、というのもその理由として、この辺は比較的治安が良いみたいだし盗賊たちは
それぞれ縄張りを決めて行動する習性があるといわれていて拠点のようなものはないんです。
だから適当に歩きまわっているだけなんですが、それでも危険なことには変わりはないです。
もし見つけたらさっさと別の街に逃げましょう。
そんな会話を交わしつつ歩いていたのですが、何やら揉め事があるみたいですよ。
気になって近づいてみると数人の男たちが誰かを囲んでるじゃないですか、
これは助けなくてはと思って駆け寄ることにしたんですがそこにはとんでもない光景が繰り広げられて
「くっ、離してください!」
そう言って抵抗している女性がいたので、すぐに助けに入ろうとしたのですが、男の一人が女性の手を掴んで引き寄せました。
その瞬間、女性はバランスを崩してしまい倒れ込んでしまったので怪我はないかなと思って手を差し伸べたんですけど、男はその手を振り払うかのように殴り飛ばしてしまったのです。
これには頭にきましたね!
そしてそのまま勢いに任せて男たちに飛びかかっていきましたが、何故か相手にしませんでした。
それは他の仲間たちも同様で全く相手にされてなかったと言いますか何といいますかね?
それにしても腹が立って仕方が無かった。

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