第8話 『特殊な部隊』への誘い
巨大な地下駐車場で長身で体格の良い青年が辞令を片手に小首をかしげていた。その大きな体の割に自信がなさそうな表情が見る者にどこか頼りない印象を植え付けた。
「遼州同盟会議・遼州同盟司法局 実働部隊 機動部隊、第一小隊に配属する……ってなんだよ、遼州同盟司法局って?」
長身の青年、
周りに人がいないのを確認すると、再びそれを読み上げる。
「遼州同盟司法局……司法局って何?」
誠は『司法』と聞いて『司法試験』を思い出す。
『司法試験』と言えば『弁護士』を思い出す。
『弁護士』と言えば『サスペンスドラマ』で犯人を追い詰める人だと思った。
誠は大卒のわりに社会常識の欠如した偏差値教育の生み出した『理系脳』の持ち主だった。
「公務員で『司法』関係者と言えば『警察』か『裁判所』じゃん。どっちもパイロットはいらないと思うんだけどな……」
そう言って誠は周りを見回した。
朝の出勤時間と言うこともあり、通り過ぎる人も少なくはない。それでも誠を気にかけることなく、大柄の誠をかわして自動ドアを出たり入ったりしていた。
誠は再び辞令に目をやった。
「それに、実働部隊……って……『実働』って何?意味が分かんないんですけど」
そう言いながら誠はただ困惑していた。
「東和共和国宇宙軍総本部の人事課まで、出てこいって言われて来たのに。辞令を渡されて地下三階の駐車場入り口で女の人が迎えに来るから待ってろって言われても……」
誠は先ほどの東和宇宙軍の総本部の人事課の中での出来事を思い出しながら独り言を続けた。
「それに、人事の担当者の司法局実働部隊は『特殊な部隊』だって説明……なんだよ、それ。『特殊な部隊』って」
そんな誠の愚痴は続いた。
「『「特殊部隊」ですか?』って聞いたら『「特殊部隊」じゃなくて、「特殊な部隊」だよ』って……なんで、『な』が入るんだよ……エロゲか?嫌いじゃないけど。僕はパイロットじゃなくて、絵がうまいからキャラデザインで呼ばれたのか?あのスダレ禿の眼鏡の人事課長の大尉……木刀があったら、ぼこぼこにしてやったのに……」
誠はそう言って大きくため息をついた。