バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

新しい仲間

彼女達に挨拶をすると、こちらに気付いたようで駆け寄ってきたんだが、その勢いはかなり凄かったのでびっくりしたんだけどね。
何せかなりの美少女達なので、普通なら目を奪われても不思議ではないくらいのレベルだからね。
それなのに男が一人もいなかったから逆に違和感を感じたんだよ、そこで思い切って尋ねてみたところ、
どうやら現在魔王討伐の為に世界各地を回っている戦士達が続々と集まっているらしいということが分かったんだ。
なんでも今回の魔王はかなり強力であり、今まで何人もの兵士を派遣していたが返り討ちにあっていた為、
いよいよ王国側が動き出そうとしているらしいとのことなんだ。
それを聞いて戦慄が走ったよ、つまりそれほどまでにヤバイ相手だという事になるからね。
下手したら命を落とす危険性すらあり得るんじゃないかと思ったんだよ。
しかしそうなると俺達もうかうかしていられないぞ、いつ魔王の部下が現れるか分からないのだから気を抜くことはできないし、
それに早く魔王を見つけ出して倒さないと世界が終わるかもしれないからな、何としても急がないと!
そう思って気合を入れていたんだが、ここで意外な人物が現れたんだ。
なんとそれは、勇者パーティーのメンバーであるグレンさんと、双子の妹にあたるリンゼさんだったのだ。
彼女らは俺の姿を見るなり声をかけてきたんだが、その表情はとても険しいものだった。
恐らく彼らもまた、俺と同じことを考えてここに来たんだろうなって思ったんだけど、それにしても妙だと思ったんだよ。
いくら何でも早すぎるのではないかと思っていたら、そのことについて尋ねてみると驚くべき答えが返ってきたのだ。
何と彼らはついさっきまではこことは違う場所に居たらしく、これから戻るところだったんだそうだ。
しかも、出発の際に転移魔法を行使した際、時間差が生じた為にこの場所に来ることになったと話してくれたんだが、
俺にはどうも信じられなかったんだ。
なぜなら普通ならば有り得ない事だからだ、だってそうだろう?
普通はこんな長時間に渡って違う場所に転移するなんてあり得ない話だしありえない事だと言えるから、
普通に考えれば絶対におかしいと思われるはずなんだよ。
ところが今の話が事実だとすると辻褄が合うことになるんだよ、何しろ、
実際に今目の前に広がっている光景を見た限りにおいては間違いなく、ここに彼らが来た形跡があるんだ。
だから疑いようがないとも言えるわけで、そうなると考えられる可能性は一つしか無かったわけだ。
そう、彼らは別の場所にいたのではなく、この世界とは別の世界にいたって事なんだ。
何故そう思うかというと、理由は簡単さ、先程聞いた話だと彼らの言う目的地がそもそも
この近くではなくかなり離れた場所にあるらしいからである。
それに加えて、ここに来る際に時間が掛かったと言っていたのでやはり間違いなさそうだった。
何故ならここが彼らの知る元の世界では無い可能性が高い事が示唆されていたからだ。
少なくとも異なる次元に存在するのは間違いないだろうと考えた次第なのである。
そして、そう考えると全てのつじつまが合いそうだったんだよね。
だから思い切って聞いてみようと思ってたんだけどさ、その前に彼が俺に話しかけてきたんだよ。
「やぁ! 久しぶりだね元気にしてたかい?」
そう言って嬉しそうに話しかけてくれたんだけど、相変わらずテンションが高いんだよなぁこいつって思わず苦笑してしまうと、
今度は反対側からも声が聞こえてきたのでそっちを向くことにしたわけよ。
そしたらそこにはなんとエルナがいたんだよね、それを見た瞬間に俺は嬉しさのあまり泣きそうになってしまったのよ。
というのも彼女が無事に俺の元に帰ってきてくれたからに他ならないからね、
やっぱり好きな人の顔を見ることができただけでも嬉しいじゃん。
しかももう二度と会えないかもしれなかった人なわけだからさ当然喜ぶのは当然だと思うんだよね〜まぁとにかく、
久しぶりに顔を見ることができたんだから嬉しくないわけないじゃない。
だから思わず抱き締めちゃったんだけど仕方ないよね、それくらい嬉しかったんだもん仕方がないでしょう?!
「おかえりなさい、待ってたよ」
そう言ってあげると彼女も嬉しそうに微笑んでくれたんだ。
その笑顔を見た時、俺は改めて思ったんだよね、やっぱりこの人のことが好きなんだなって実感したわけよ。
だからこそ、もう二度と離したくないと思ったし、ずっと一緒にいたいと思ったんだよ。
その為には何が何でも魔王を倒して平和な世界を取り戻す必要があると考えたわけだな、
だから、そのためにも頑張らないといけないって思ったんだよ。
「それで、グレンさんと、リンゼの姉妹に話があるんですけど」
俺がそう言うと彼らは不思議そうにしながら、
「どうしたんだい?」
と聞いた。
だが、その前に俺はどうしても確認しなければならないことがあったんだ。
それは彼女たちが本当に魔王討伐のために、異世界に来たかどうかという事である。
何しろ彼らが別世界から来たというのはあくまでも俺の考えであって、実は違う可能性もあるわけだからね。
もしそうだとしたら、俺たちの行動には大幅な変更が必要なわけだし、
何よりも危険を伴う事になりかねないんだよ、だから事前に確認しておく必要があったんだよね。
幸いにして、俺の問いに答えてくれたグレンによると、彼女達もこの世界を救うために
やって来たということだったのでホッと胸を撫で下ろしていたんだけれど、それと同時に新たな問題が浮かび上がってきたんだよね。
というのも彼女達の世界でも同じような出来事があったらしくて、その際には勇者が仲間として共に戦い抜いたということだった。
そこで、今度はエルナさんの方を見たら彼女も頷いた後で言ったんだ。
どうやら彼女も同じような境遇だったらしく、その時に得た力を行使する事ができるのだそうだ。
そして、それを用いて、俺達の力になってくれるという提案を受けたのだが、
それを聞いて驚いたのと、それと同時に嬉しかったのを覚えている。
何せ、これで頼もしい仲間ができたんだからな!
これから一緒に戦っていく事になるんだろうけど、それでも俺は全然構わないと思っているよ。
それよりも今はとにかく早く魔王を見つけ出して倒さない限りは何も始まらないし終わらないと思うんだ。
それに何より、この世界に住む人達が苦しんでいる姿なんか見たくないからな、絶対に助けてやりたいんだよ!
「それじゃあ、俺、いえ私は仲間達がいるからそちらと合流してきていいかな?」
と聞いて見たんだが、構わないと言ってくれたのでお言葉に甘えて彼と共にリンゼさんが
持っていた魔導具を利用してゲートを形成するとその中へ入っていったんだ。
そこに広がっていた光景はまさしく絶景だったね。
見渡す限り大草原が続いていて、太陽も出ていたこともあって暖かい空気に包まれていたんだ。
思わず深呼吸をしてしまって、そのまま眠ってしまいたくなるほどだったよ。
でも今はそんな場合じゃないから我慢することにしたんだけどね。
そんな俺を見て苦笑いを浮かべながらも彼は、ある方向に手を差し出したんだ。
その手に俺もそっと重ねて歩き始める事にしたんだ。
暫く歩いているうちに小さな村が見えて来たんだけど、どうやら王国とはしばらく断絶になっているらしくて、
兵士が大挙して押し寄せれば、不審に思われてしまうために、それぞれ別行動を取る事にしたんだ。
エルナはお墓参りに行きたかったテントがなんと千を超える巨大で、今まで見たこともない規模の拠点だった。
それも全て高度な技術で作られたらしく、中に入っても一切物音がなかった。
まるで遺跡のような雰囲気を感じさせる内装になっており、
壁や天井などに取り付けられた松明からは暖かみのある光が差していた。
そんな場所に足を踏み入れた瞬間の衝撃は今でも忘れられないだろう。
それ程までに異様であり異質な雰囲気を漂わせていたのであるのだ。
(こんな場所、見たことも聞いたこともないぞ!)
俺はそう思って興奮していたけれど、隣にいる彼女の様子もいつもとは違っていたので、不思議に思った。
なぜなら、妙に落ち着き払っているように見えたからだ。
それどころか、この場の空気を感じているような様子でもあったんだ。
(どうしたんだ? もしかして、この場所には何かあるのか?)
そんな疑問を抱きつつも、辺りを見回しているとエルナがぽつりと呟いたんだよ。
「これが、お姉様の思い出の場所なんだね」
(え?! もしかして、この場所ってシルフィー先輩の秘密の部屋か何かだったってことか?!)
正直、状況が良く呑み込めなかったよ。
何せ、シルフィー先輩のことがわからなかったからだ。
流石に立ち入ってはいけないのかと思って遠慮していたら、彼女の方は構わないと言って俺を連れ込みたかったようだね。
結局、俺も興味があったので中に入ることにしたんだが、そうしたら彼女が案内してくれましてね、奥の方に入っていったんだよ。
そこには一際目立つ部屋があって、どうやらそこがエルナさんの使っていた部屋らしいんだけれども、
そこには膨大な量の書物や資料が所狭しに置かれていたのを覚えている。
しかし、それ以上に驚いたことがあった、それは彼女が見ていたある本である。
何と、エルナさんが読んでいたのは勇者関連の資料だったんだよ。
そこに書かれていることが嘘であることを既に知っている俺からすれば、
それについて色々と知りたかったみたいであるが、当時の俺には理解ができず内容を読むことはできなかったから、
残念に思っていたのだが、後でシルフィー先輩から詳しく話を聞いて、
その内容を確かめることが出来たのでとても有意義な時間を過ごすことができたのだ。
それから暫くして、彼女はこう言ったのだった。

しおり