葬式帰り
正直、あの子の葬式なんて出たくなかったが、クラス担任がクラス全員で出席と決めたので仕方なく、制服姿で参列した。ま、クラス全員が葬式に参列しているのは、学校としても見栄えがいいのだろう。あの子がクラスのみんなに慕われていたような演出である。しかも、葬式の雰囲気に飲まれて、あの子と全然親しくなかった女子が泣き始めると、女子全員が、友人を亡くした悲しみにくれるクラスメイトという役に心酔するように涙を流し、嗚咽した。仕方なく、私もうつむいて白々しく泣いているふりをして、その葬式を終えて、帰る途中、そのおばさんに襲われた。
「あの子がいなくなったのに、涙一つ流さず、平気な顔して! あんた、あの子がいなくなって良かったと思ってるの!」
葬儀のとき着ていた喪服のままで、あの子の母親が、私に襲い掛かって来た。どうやら、泣いているふりを見抜かれたようだが、その程度で殺されたらたまらない。何とか包丁を防いだがざっくりと腕を斬られて血が出ていたが、痛みより、あの女のために死んでたまるかという想いが強かった。
「あの、おばさんは知らないでしょうけど、私、あの子大嫌いだったの。だって、いじめって言うほど酷くはなかったけど、大学生の彼氏がいる自分イケテルって感じで男のいない女子をバカにしてて、鬱陶しかったから、あの子が自慢げに男を何股もしてるのを語ったのを教室で聞いて、それを彼女の彼氏に懇切丁寧に教えてあげたの。まさか、嫉妬で、顔がぐちゃぐちゃになるくらい刺されるとは思ってなかったけど。あの子がいなくなったからって、私のせいじゃない、あれは自業自得ってやつよ、おばさん」
私は殺されるもんかと激しく抵抗し、逆に包丁を奪い、おばさんをめった刺しにして殺した。私もおばさんに切られて命の危険があったことが認められ正当防衛が成立し、腕に切り傷が残ったが、私が、あの子の彼氏に色々チクったのが原因というは周囲にバレなかった。