森 その3 サルを殲滅させるわよ!
門平はベッドの上に座っていた。
緊張で吐きそうだった。
ベッドは大きく、外の汚いサルたちの住処よりかは、はるかにマシだった。
サルの王「お・ま・た・せ」
シャワーを浴びてきた、サルの王様が俺の前に立ちはだかった。
門平たちを裁判にかけた、あの男である。
こいつだけはサルじゃなく、毛むくじゃらの人間のオスだった。
しかもサルたちから、毎日エサを与えられているせいで、ボテ腹の樽体型。
なぜサルの王になったのかは、いまだによくわかっていない。
サルの王「いい体してるね。何歳なんだい?」
門平「16歳です」
サルの王「わおっ! ぴちぴちじゃないか! いい筋肉してるね!」
サルの王がしつように俺の体をさわってくる。
なぜかベルシュタインさんじゃなく、門平が妻に選ばれてしまった。
なぜだよっ!?
死にたくはなかったから、承諾しちゃったけど!!
サルの王「乳首は何色なんだい?」
門平「たぶん、赤……」
サルの王「いいね! フレッシュだね! 甘そうだね!」
王のインタビューが続いていく。
質問がなくなったら、いよいよ本番だ。
AV女優の気持ちがわかる。
門平は両目を閉じ、
門平「(美雪さん……たすけて……)」
――――
――
ー
美雪「はっ!?」(電撃が脳内で走る)
ベルシュタイン「どうしましたの?」
美雪「腹へったなぁ。パンケーキ食べたい」
ベルシュタイン「町に帰ったら、たっぷり食べればよろしいでしょ!」
ベルシュタインは相当機嫌が悪い。
ベルシュタイン「あのサル男! この私を妻に選ばず、門平を妻にするだなんて!」
美雪「男が好きなんだからしかたないじゃない。きっと今はやりのLGBTに配慮したのよ」(ベルシュタインの肩をポン)
ベルシュタイン「さわらないで! そういうのが、映画をおもしろくさせなくするのよ!」
ベルシュタインが私の手をふりはらう。
ベルシュタイン「こうなったら。あの村を全滅させましょう」
美雪「えー。せっかく逃げてきたのにー」
美雪たちはうまく村から逃げていた。
油断していたサルに、ベルシュタインが、ベルシュタイン・スクリュー・ドライバーをくらわせ、脳天に穴をあけたのだ。
ベルシュタインは携帯を取り出すと、
ベルシュタイン「ボビー、マイク。銃を持ってこっちにいらっしゃい。――戦争を始めますわよ」
美雪「えっ? ちょっと? ――携帯のアンテナつながってたの? なんで助け呼ばなかったの?」
ベルシュタイン「美雪さん。戦争の準備を」
美雪「ねえ聞いて。私の質問に答えて」
美雪は追撃するが、ベルシュタインにガン無視されてしまう。
ボビー「お嬢様」
マイク「お待たせ!」
ベルシュタインの部下、ボビーとマイクが森の木から出てきた。
美雪「はやっ!? どこにいたのよ!」
ボビー「われらは常にお嬢様のそばにおります」
美雪「はいっ? ――じゃあ、なんで私たちを助けてくれなかったの?」
マイク「銃も準備はできてるぜ!」
美雪「待って! 私の存在を認めて!」
とことん無視されちゃうんだけどっ!
私は透明人間だっけ!?
ベルシュタイン「さあ、またあの村に戻るわよ!」
美雪「えー、もう遅いって。門平君のお尻の穴、きっとずぶといモノで大きく広がってるって。きっと良妻になれるわよ」
ベルシュタイン「門平なんてどうでもいいのよ!! 私のプライドを傷つけたことが許されないの!!」
美雪「だろうけどさー。もー」
美雪の話を聞かず、ベルシュタインと部下がさっさと戻っていってしまう。
しゃーなしでついていく私。
マイク「おっと。とまりな、お嬢ちゃん」
美雪「何よ?」
マイク「あそこに落とし穴があるぜ。上を見てみろよ」
美雪「うわっ!? 釘がいっぱい!」
マイク「落とし穴に落ちたやつを、あの首で頭上から串刺しってわけだ」
美雪「よくわかったわよね?」
マイク「俺には危険を察知する鼻があるんで、ぐばっ!?」
突然、マイクがはじけ、バラバラの肉片になった。
萌美「にゃお」
後ろに萌美ちゃんがいて、破壊魔法を使ったんだ!
危険を察知する鼻はどーした!!
ベルシュタイン「ボビー! 早くあの子の脳天に風穴をあけてやるのよ!」
ボビー「しっしかし、お嬢様、ぼあっ!?」
ボビーも肉片になってしまう。
いなくなるのはやっ!!
あの強者感はなんだったの!!
ベルシュタイン「もっ萌美ちゃん、私のこと忘れたの、あなたのママよ」(命乞い体勢)
萌美「ママー、ぐうっ」
萌美がその場に倒れた。
ベルシュタイン「どうしましたの?」
萌美「おにゃかすいたー」
美雪「ペロペロキャンディは?」
萌美「パパがお部屋で、生(精?)と死(子?)をかけた、激しいスポーツするから、外で遊んでろって。それでお外で遊んでたら、帰れなくなっちゃった」
ベルシュタイン「あらら。それはひどいパパね。ママが持ってる馬肉の缶詰を食べましょうね」
萌美「わーい」
ベルシュタインが手刀で缶詰をあけて、馬肉を萌美ちゃんに与える。
萌美「しょっぱーい。もぐもぐ」
ベルシュタイン「まったく。こんな小さな子を森におきざりなんて。ひどいパパだわ」
美雪「萌美ちゃんを撃ち殺そうとしたのは誰よ」
ベルシュタイン「これからはママと行動を一緒にしましょう。さっ、美雪さん! 門平さんを助けにまいりますのよ!」
萌美「はぁいっ!」
美雪「自分だけの手柄にしようとしてるー」
美雪は乗り気じゃなかったけど、ベルシュタインさんについて行った。