ヤンキーだった……
やばい。
学校の廊下を歩いていた友達に対して、いつものようにペシッと頭と軽口を叩きながら挨拶した。
そのはずだったのに……。
「よっ。元気かぁ~? あれ、なんかお前日焼けした? 黒っ。全身に墨汁でも塗りたくってんのか? なんちゃって。ハハハ。……あ、え……?」
「んだよ。アァ?」
振り返ったのはヤンキーだった。
一個上の先輩だ。
僕の顔からサーッと血の気が引いた。
真っ先に友達を恨んだ。
ちくしょう。
お前の後ろ姿がこの先輩に似てるせいで、とんでもないことになってしまったじゃないか。
どうしてくれるんだ。
ヤンキー先輩が僕に詰め寄ってくる。
胸倉を掴まれて壁際に押しやられた。
「おい。なんだ、喧嘩売ってんのかテメェ」
「の、望むところです!?」
「ハァ? 望むところですぅ?」
間違えた。
気が動転して致命的なセリフが口をついて出てしまった。
命に関わる言い間違いだ。
なんだよ望むところって。
望むな。
やばいやばい。
ヤンキー先輩の顔の血管がピキピキッと浮き出てきた。
「ハッ。いい度胸じゃねぇか。ここじゃアレだ。ツラ貸しやがれ」
「ま、待ってください! 痛い痛い! あ、ちょ、もうッ! 待ってくださいって言ってんだろこの変態! どこ触ってんのよ!」
こんな時でも僕の無能な口は軽口を叩いて状況を絶望的にする。
とうとう先輩から腹に一発貰った。
めっちゃ痛い。
それにより僕は完全に抵抗する意思を無くした。
それからは校舎裏まで引きずられ、殴られ蹴られの大惨事。
結局この日は救急車のお世話になった。
そして七針縫う大怪我を以って、僕は軽口も程々にするべきだという教訓を得たのだった。