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ブサイク

深く掘られた穴に彼女は土を戻すようにスコップを動かしていた。
次々と落ちてくる土に気が付いた穴の底でグルグル巻きにされている女がカッと目を開けた。
「ペッ」
落ちてくる土が口に入り、それをつばと一緒に飛ばして、穴の上で自分に土をかぶせてくる彼女を睨む。
「あ、あんた、こんなことしてタダで済むと思ってるの!」
「大丈夫、心配してくれなくても。遺体が見つからなければ警察は動かないから」
「あんた、うちの親が誰か知ってるの?」
「ええ、知ってるわ、あんたが遊び好きで二、三日家に連絡なしで遊び回るのが珍しくないこともね。だから、あんたがここで生き埋めになっても、すぐ騒ぎにはならないわ」
「あ、あんたのせいだったのね、今まで彼の周りで行方不明の女の子が出てたの。そのせいで、彼が、女の子を狙う殺人鬼みたいに噂されて、大学で孤立してるのも知ってるでしょ、彼に何か恨みでもあるの」
「恨み? その逆、愛しているのよ」
「は?」
「彼に近づく女を片っ端から始末すれば、彼を独占できるでしょ。今だって、その噂のおかげで、彼に毎朝挨拶するのは私だけになってきてるわ」
「か、彼を独占したいから周りの女を殺しまくって、彼が殺人鬼と疑われるのでさえ利用して、独占しようとするなんて、狂ってるわね」
「だって、わたし、見ての通りブサイクでしょ。あんたたちが陰で私の容姿をバカにしてたのも知ってるわ、だから、あんたたちを殺すのに、ためらいはなかった。むしろ、あんたたちが消えてせいせいしてるわ」
「そ、そうよね、あんたみたいなブサイク、こんなことでもしないと男を独占できないわよね。けど、その顔じゃ、世界中の女が消えても、彼があんたに惚れることはないと思うけど、ブサイクさん」
「ふん、そうやって土の中で粋がってなさい。生き埋めって結構苦しいらしいわよ」
そうして、生き埋めにされたが、その後、彼女が彼を独り占めできたかというと、殺人鬼という噂に耐え切れず、彼は大学を自主退学し、そのまま身を隠すように噂の届かぬ彼女の知らない遠くに彼は引っ越していった。

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