クソ忌々しいネズミだかなんだか分からん生物
それから二時間くらい後、ご主人が外出した。
私とうどんが二人きりという状況だ。
私がこの家に来てからかれこれ一年くらいは経っただろうか。
それほどの時間を過ごしたのだ。
留守中にいたずらをしたらご主人が怒ることくらい考えずとも分かる。
私はいつものように大人しくご主人の帰りを待っていた。
それなのに、うどんがやかましく騒ぎ始めたのだ。
うどんはご主人が外出する時にはケージに入れられているのだが、いつもヒュルリと抜け出して遊んでやがる。
そしてご主人が玄関の鍵を開ける音を聞くと、飛ぶようにケージの中へと急いで戻るのだ。
今日も今日とて、あのクソ忌々しいネズミだかなんだか分からん生物はケージを抜け出したようだ。
気がつけば昼寝をしていた私の真横に来ていた。
「ねぇちょっと!」
そしてなんか話しかけてきやがった。
睡眠を妨害された私はイライラしながら体を起こした。
「……なに?」
「なに、じゃないわよ。さっき私に向かってあざといって言ってたでしょ」
「は? 言ってませんけど。耳腐ってんじゃないの? 頭大丈夫? 気持ち悪。どうせ被害妄想でしょ」
「絶対言ってたし。言いたいことがあるなら直接言えばいいじゃない。陰でコソコソ文句言うとかあんたってほんと根暗ね」
「うざ」
「あ、もしかしてこの前のことまだ根に持ってんの?」
私の眉の辺りの筋肉がピクリと動いた。
「いいや?」
「その反応、絶対図星じゃ〜ん。うわ、キモーい。いつまで引きずってんのよ。あんなのちょっとしたいたずらじゃん」
私は食ってやりたい気持ちを必死に抑えながら静かに答えた。
「別にもうなんとも思ってないってば。昼寝したいからさっさとどっか行ってくれる?」
「ちぇ。つまんない奴。根性なし。臆病者」
「はいはい。分かったから消えろボケ」
「きゃー! 怖〜い」
うどんはケタケタ笑いながらどこかへ行った。
クソが。