夢2
ベッドに寝っ転がって目を閉じると、しばらくして意識を失い、そしてまた夢を見た。
さっきと違うのは、今度の夢はこれが夢であると自覚していた点だ。
これは昨日の出来事を夢として見ているようだ。
俺は縋るような目でパーティーメンバーの三人を見ている。
そんな俺に対して三人は同情するような視線を向けていた。
リーダーであるゼオルが言った。
「申し訳ないとは思っているんだ。しかし……もう限界なんだよ」
「限界ってどういうことだよ! こんな急に……。だって、そんな……」
俺は上手く言葉を紡ぐことができなかった。
「説明してくれ。なんで俺がパーティーを抜けなくちゃいけない?」
動揺を抑えつつ、なんとか質問することができた。
この時点では、まだタチの悪いドッキリである可能性を捨てきれていなかった俺は、三人が急に笑顔になってネタバラシをしてくることを待っていた。
そんな希望を打ち砕くように真剣な顔をしたポニテノが頷く。
「ええ。もちろん説明するわ」
ポニテノは言葉を探すように視線を漂わせると、質問してきた。
「あなた、先週の金曜日に自分が何をしたか覚えてる?」
「先週の金曜……?」
俺は必死に思い出そうとした。
先週の金曜……何か特別なことがあっただろうか。
話の流れから考えて、その日にあった何か特別な出来事で三人は俺に対して愛想を尽かしてしまったのだと思うが、しかし俺にはその特別な出来事というのが思い出せなかった。
思い出そうと必死になる俺を見て、ゼオルが悲しげにため息をついた。
「思い出せないんだろう? ああいうことはお前にとって当たり前で、印象に残るような出来事ではないだろうからな」
皮肉っぽい口調に俺は腹が立った。
「金曜に俺がなにしたってんだよ! 言ってみろ!」
ゼオルもポニテノも黙ってしまった。
さっきから一言も発しないもう一人のパーティーメンバーのウタメは、ずっと辛そうな表情を浮かべて口をつぐんでいる。
「おい。何か言えよ。……やっぱり答えられないんだな。俺は何もしていないんだろ? ……ハハ。やっぱりな。これも実はドッキリで、俺をからかってるだけで」
途中から調子を取り戻して意気揚々と三人に向かってそんなことを言い始めた俺の言葉を遮るようにポニテノが
「食い逃げよ」
と呟いた。
「……は?」
俺は心底訳が分からずに呆けた声を出した。
「ど、どういうことだよ。食い逃げなんてそんなしょうもないことで……今までだって」
「そうよ。あなたがこういうことをするのは今に始まったことじゃない」
ポニテノが先読みするように言った。
ゼオルが続ける。
「これまでお前がああいうことをする度に俺たちが店の人に謝りに行っていたのは知っているか? 金を渡してどうか大事にはしないでくれと頭を下げていたことをお前は知っているか?」
「え、いや……」
まったく知らなかった。
……。
そこから俺たちの間にどんな会話があったのかは覚えていない。
ゼオルの言葉を聞いてからの記憶がないのだ。
自分の行動にそんな結果が伴っていたということに衝撃を受けた俺は、きっとパーティーを抜けることに同意してトボトボ歩いて家に帰ったのだろう。
さっき起きた時、テーブルの上に中身のないビール缶が大量に転がっているのを見た。
家に帰ってきた俺が何をしたのかは察しがつく。