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9:50 P.M.

 蓋を半分くらい開けてそこからお湯を注ぐと、蓋を閉じて割り箸を上に置いて開かないようにした。
時計を確認すると九時四十分だった。

「今が四十分だから四十三分でゴザルな」
けいはカップ麺を凝視しながら言った。

「……インスタントラーメンはこの時間が待ち遠しいでゴザルよな。あんまり嫌いではないでゴザルが」

「そうだね。僕も嫌いじゃない。そういえばさ、この近くにラーメン屋さんとかないのかな。あったら食べに行くでしょ?」

「もちろんでゴザルよ」
けいは即答した。
ラーメンはけいの大好物なのだ。

「っていうかこの前ひーちゃんと話してる時にラーメンの話題が出てきたんでゴザルが、近所にひーちゃん御用達のラーメン屋があるらしいでゴザル」
「へぇー」

「今度みんなで行ってみるのもいいかもしれんでゴザルな」
「そうだね。行ってみようか」

ひーちゃんというのは、妖風(あやかぜ)緋彗(ひすい)のことだ。

普段から地雷系? とかいうメイクを施している自称ギャルのクラスメイトで、けいの後ろの席の生徒である。

「なんかすっかり馴染んできたよね、学校」
僕がそう言うと、けいは大きく頷いた。

「そうでゴザルな。入るまではどうなることかと不安だったでゴザルが、入ってみれば面白いものでゴザル。同世代の人間があんなに集まっている環境というのも貴重でゴザルしな」

「そうだね。小学校も中学校も同じようなものなのかな?」

「さあ? どうでゴザろうな。行ったことないから知らんでゴザル」
そう言ってけいは肩をすくめてみせた。

「ところで、天文部の方はどんな感じでゴザル?」
けいが時計をちらっと見てから訊いてきた。
僕もつられるように時計を見た。
もうすぐ三分経つ。

僕は視線を戻しながら答えた。
「楽しいよ。天艶から色々教えてもらってる。今、星座に関する本を貸してもらってるんだ」

「そうでゴザルか。そういえばほたる殿ってマジックが出来るとか言ってたでゴザルな」

天艶の下の名前は、ほたるだ。
天艶ほたるがフルネーム。

「うん。マジックも教えてもらってるよ。今まさに練習中」
「ほーん。習得したら見せてほしいでゴザル」
「もちろんいいよ」

そんな会話をしているうちにカップラーメンがいい感じに食べ頃となったようだ。
僕たちは蓋を開けて湯気を顔に浴びた。

「んー。美味そうな匂いでゴザル」
けいはうっとりとラーメンを見つめた。

それから手を合わせて
「いただきます」
と二人で言ってから食べ始めた。

夜食のカップラーメン。
昼間に食べる時よりも少しだけ美味しく感じた。

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