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第八話☆新学年も前途多難!?

今日は始業式。

一年上がって私たちは二年生になった。

クラス替えはないから一年生の時と
同じメンバーだから気が楽だ。

そして、恋と先生のお付き合いも
上手く行っていて一安心だ。

退屈な校長の話しもやっと終わった。

まぁ、殆ど聞いてなかったけど。

そして、あの時のことを思い出して
笑ったのを理香が見てたらしい。

教室に戻ると質問された。

「華蓮、さっき何で笑ってたの?」

『あれはね、高校時代を思い出してたんだ』

去年の始業式でやっぱり、校長の話しが
つまらなくて欠伸した時マー君が出席簿で私の頭を
コツンとしたのを思い出して笑った。

その話しをしたら皆も一緒に笑ってくれた。

「ねぇ、今日は午前だけだから何処か遊びに行こうよ」

陽菜子が言うと恋が申し訳なさそうに眉を下げた。

「ごめん、今日は無理」

それに気を悪くする人間は此処は居ない。

「何々、デート?」

逆に興味津々って感じで皆、恋に詰め寄る。

「うん」

恋が濁して断った時点で此処に居るメンバーは
分かっているのだが琴羽はあえて訊いた。

因みに、デート以外の用事の時はちゃんと理由を言う。

『それじゃぁ仕方ないね』

相手を知っているが此処はあくまで教室。

知らないフリをして明らかに残念って声を出した。

「ごめんね」

もう一度、恋が謝った。

帰り道、学校から離れた場所で私たちは盛大に大笑いした。

始業式から二ヶ月が経ち夏休み直前、
一つの事件が起きた。

盗難とかじゃなくて一人の一年生が
よりにもよって恋に告白した。

しかも、二年の教室がある廊下で更にその場に居合わせた
私たちも左京先生も一瞬固まってしまった。

「ありがとう、でも、恋人が居るのごめんね」

そんな中、告白された当事者の恋だけが冷静に対応していた。

"ありがとう"を先に言うとは
流石、恋だよなぁと思った。

「そうですか、自分の気持ちを伝えられてよかったです」

彼が行った後で金縛りから解けた様に私たちは動き出した。

「恋、カッコイイ」

興奮した様に琴羽が言い、左京先生が手をギュッと握った。

廊下に居た人数が少なかったことと
私たち以外すぐ教室に入ったことが
幸いして誰も見ていなかった。

とりあえず、一難去ったわけでよかったよかった。

『皆、今日家に来ない?』

でも、この告白を断ったことで後々大変なことが
起きることを誰が予想出来ただろう……

何となく、集まりたくなった。

左京先生を含め、全員分の了承を得て
私たちは教室へ授業がない先生は職員室へ向かった。

集合時間は午後七時頃にした。

結局、流れで皆
泊まることになるけど今の私は知らない。

そんなことがあった一週間後、夏休みに入った。

現役教師が二人も居るとなれば
当然、遊ぶ前に宿題をやらされる。

家のリビングで珍しく眼鏡をかけた
マー君と左京先生がテストの時みたいに監視している。

テスト時と違うのは何でも聞けることくらい。

そのお陰か分からないけど、
結果的に宿題が三日で終わった。

持つべきは、年上の彼氏ってね。

そして、二人共成人してるから
行きたい所があると必ず車を出してくれる。

今回も、皆で旅行に行く計画を立ててたら
二人が連れてってくれることになった。

どっちにしろ、この辺に
遊びに行く様な所はないから一石二鳥だ。

場所はまだ決めてない。

旅行誌を何冊か見ながら皆で考える。

結果、三泊四日で京都に行くことになった。

旅費は理香のお父さんが全員分出してくれた。

『理香、ありがとう。

でも、よかったの?』

「いいのよ、お父さん忙しくて
私に構えないからって
今回の旅費を出すって言ったんだもん」

今度、マー君と一緒にお礼しなきゃだね。

荷造りを終えた私たちはマー君と左京先生が
運転する二台の車で行くことになった。

修学旅行のバスみたいだと思った。

マー君の車には私と理香と陽菜子が、
左京先生の車には恋と琴羽が乗った。

そして、いざ京都へと出発したのだった。

旅館の部屋は三部屋取り、
私たち女とマー君たち男と部屋を分けた。

着いた今日は疲れたから観光は明日からにした。

温泉に入り、夕飯を食べ皆でのんびりする。

家とは違ったのんびりが出来て嬉しい。

家族にお土産を買って行かなきゃね。

旅行なんて何時ぶりだろう……

寝る時間になり何時もなら一緒に寝るマー君は
左京先生と隣の部屋に戻って行った。

男性陣が居なくなりガールズトークの時間。

左京先生と恋の話を中心に理香の話や
私の話など、現在好きな人が
居ないと言っていた陽菜子は文句も言わず
私たちの話を聞いててくれた。

一通り話し終わり、布団を敷いて寝た。

翌朝、先に目を覚ましたのは私と理香だった。

あの家で一人の理香と朝からマー君の
お弁当やらを作らなきゃいけない私は
必然的に目が覚めたらしい。

廊下に出ると男性陣二人に会った。

『マー君おはよう、左京先生
おはようございます』

二人は自販機に行こうとしてたらしく
手には財布がそのまま握られていた。

私たちも同じ状態なんだけどね。

「佐川さん、左京先生、
おはようございます」

理香も挨拶し、四人で自販機に行くことになった。

「恋たちはまだ寝てるのかい?」

左京先生の質問に答えたのは私。

『はい、私たちは目が覚めてしまったので二人で来たんです』

その横でマー君が笑うのを耐えてることに気付いた。

『ちょっとマー君』

大方、私の敬語が可笑しかったんだと思う。

「佐川さん、どうしたんですか?」

理香の質問には答えず先に自販機の方へ行ってしまった。

『私の敬語口調が
可笑しくて笑うのを耐えてたんだよ』

二人にそう説明するとポカーンとした顔をされた。

高校時代は、教師に対して敬語なんて
使わなかったからね。

『二人共、何時までもほうけてないで行くよ?』

私の言葉にはっと現実に戻って来た
二人を連れて自販機に向かった。

着いた時には笑いが治まってた様で
備え付けのベンチに座って缶コーヒーを飲んで居た。

私と理香は三人の分も買って戻ろうとしたら
左京先生が恋の分を出してくれた。

部屋に戻ると三人は起きていた。

「何処行ってたの?」

既に布団を畳み始めてる陽菜子が聞いて来た。

『自販機だよ』

手に持った五種類の飲み物。

『そうそう、恋の分は左京先生が
買ってくれたんだよ』

「朝食の時にでもお礼いいなよ」

理香が恋を小突きながら言った。

「分かった、教えてくれてありがとう」

昨日の夜と同じ様にマー君たちの部屋に
集まって、皆で食べた。

「左京先生、ジュース、
ありがとうございました」

食べてる最中に箸を置いて、先生の目を
真っ直ぐ見て恋が言った。

「いいんだよ、それくらい。

彼氏なんだから」

あっ、恋が照れてる。

そんな二人が微笑ましく思った。

皆で色んな所を回ったり、
途中で恋たちを二人っきりにしたりと
何かと楽しかった。

そして、今日は最終日。

楽しい時間は案外あっさりと過ぎて行く。

今は、皆でお土産屋さんに来ている。

私とマー君は家族へのお土産が被らない様に
二人で選んでいると左京先生が皆を呼んだ。

「皆ちょっと来て」

そう言われれば行くしかなく、
呼ばれた方へ行くと勾玉の形をしたストラップがあり、
色で言葉が違っていた。

その中で左京先生が手にしていたのは、
翡翠色で"仲間"だった。

「これ、皆でつけないかい?」

そんな楽しかった夏休みも終わり
二学期になっても私たち六人は仲良しだった。

携帯にはあの時のストラップがぶら下がっていた。

校内では先生と生徒でも校外では仲間である。

そんな仲のいい私たちを妬ましそうに
見ていた人物が居たのをある日の帰りに
理香たちが怪我をしたことで知ることになる。

「華蓮!!」

家の中に入るなり理香が
泣きそうな顔して抱き着いて来た。

二学期に入って三週間目の週末、
何時もの様に一度帰ってから私の家に来る途中で
何者かに襲われたらしい。

リビングへ連れて行き、救急箱を
寝室から持って来て手当をした。

それから間もなくして左京先生が来た……

皆の傷を見て驚き、恋を見つけると真っ先に抱きしめた。

『それで、犯人の顔は見た?』

四人は首を横に振った。

それもそうか……

外はかなり暗いもんね。

『そいつらは何か言ってた?』

質問を代えてみる。

「お前たちが邪魔なんだとか
そんな類いのことを言ってた気がする」

邪魔……

すると左京先生絡みかな?

『女の声だった? 男の声だった?』

とにかく、手掛かりを見つけなきゃ……

「両方だったと思う」

緑茶を一口飲んで琴羽が答えた。

『質問ばっかりで悪いんだけど、背丈は分かる?』

暗くて顔は見えなくとも背丈くらいは分かるはず。

「それなら分かるよ」

未だ、左京先生に抱きしめられたままの恋が答えてくれた。

「大体だけど、男の方は百八十後半が二人と
百七十半ばが一人女の方は百七六くらいだと思う」

マー君が百八二で左京先生が百七八。

それから、理香が百五九で恋が百六三、
陽菜子が百五五、琴羽が百五一
因みに私の身長は百五三だ。

そう考えると男三人はかなりの長身だ。

私は携帯を開き、悠緋さんに電話を掛けた。

「もしもし」

直ぐに出てくれてよかった。

『こんばんは、今大丈夫ですか?』

自分から掛けといてあれだけど、相手に確認を取ってみる。

「大丈夫だけど、何かあった?」

悠緋さんの察しの良さには何時も驚かされる。

『流石悠緋さんですね』

早速、今さっきあったことを話した。

「そんなことが……

分かった、調べてみよう」

優しいなぁ。

『本当ですか?

ありがとうございます』

電話口だけど、お辞儀する勢いで
お礼を言って通話を終わらせた。

『親父、何だって?』

向かい側に座ってたマー君が
早く教えろとばかりに私を見て来る。

『調べてくれるって』

これで、犯人は早く見つかるだろう。

『ねぇ、皆、一つ提案何だけど当分、
此処から学校に通わない?』

「でも、教科書とか家だよ?」

陽菜子が困った様に言った。

「じゃぁ、取りに行かないか?」

左京先生が提案する。

『そうだな、華蓮は留守番してて』

車の鍵を手に取り出掛ける準備万端のマー君に頼まれた。

『任せて』

玄関を出る時に四人が不安そうな
顔をしていたけど大丈夫だと言って見送った。

三時間くらいして皆が帰って来た。

『お帰り』

そういえば、皆の親達には何て言って来たんだろう?

『ただいま』

皆の荷物を客室に置き、リビングに戻った。

『それで、何て言って出て来たの?』

悠緋さんが調べてくれるとは言え一日二日じゃ分からない。

「検定が近いから
泊まりで勉強すると言って来たよ」

成る程、尤もらしい言い分だね。

『理香ん家は?』

夏休みでさえ、忙しくて構えないからと
旅費を出してくれたくらいに忙しいはずだ。

「相変わらず居ないから電話で話したよ」

そっか、今日も居ないのか。

『分かったって一言
言ってすぐに電話切られたよ』

そんなに忙しいのか……

とりあえず、これで誰かが一人になることは
なくなるから少しは安心出来る。

敵が学校に居なければだけど……

『とりあえず、一人にならないことだよね』

「そうだね」

犯人探しはとりあえず悠緋さんに任せて
私たちは休むことにした。

『皆、お腹すいたでしょう、ご飯作っといたよ」

悠緋さんから連絡が来たのは
それから二ヶ月してからだった。

その間は、何もなく私たちは無事に過ごせた。

とにかく、一人にならず授業以外は常に一緒にいた。

『マー君、悠緋さんが特定出来たって』

その言葉に皆が一斉に私の方を向いた。

『私たちの敵はやっぱり学校に居るらしいよ』

悠緋さんのメールによると、私たちが通ってる
専門学校の教師と一人の生徒の誰かが黒幕らしい。

「それが誰かはまだ分からないの?」

何時も勝ち気で男前な恋が不安そうに聴いて来る。

『待ってね、今まだ途中だから』

読み進めて行くと意外な人物の名前と写真があった。

『皆、夏休み前に恋に告白した一年生覚えてる?』

そう、悠緋さんが送って来たメールに
添付されてたのはあの日、恋に
告白した一年生と知らない女だった。

「勿論覚えてるよ」

皆が頷いた。

『それと、左京先生この人知っますか?』

携帯を左京先生に見せる。

「隣の席の販売担当の先生だよ……」

これで繋がった。

『悠緋さんのメールによるとこの二人は義姉弟だそうですよ』

『靖紀、その女から何か言われたことないか?』

いつの間に名前呼び?

まぁいっか。

「そういえば……」

左京先生は思い当たる節があるのか
何かを思い出そうとしている。

「思い出した、確かあれはまだ
恋たちが一年の頃で
約一年前くらいに告白されたことがあったんだ……」

明らかにそれしかない。

つまり、姉は左京先生に
弟は恋に降られてその二人が
付き合ってるのを何処かで知って
何時も一緒に居る私たちも憎いから今回の様なことをしたと。

「馬鹿のすることって低能過ぎてやんなっちゃう」

陽菜子が呆れた口調て吐き捨てた。

「確かにね」

琴羽も同意する。

此処に居る全員が思ってることだ。

『迷惑な話しだよな』

確かに、振ったくらいで逆恨みされても迷惑でしかない。

この二人の思考はWorld is mine何だろうか?

もしそうならかなりイタイ思考の持ち主だ。

犯人が分かったのはいいことだけど、
こうなると恋と左京先生は学校に行きたくないよね……

だって、自分たちのせいで私たちが怪我をしてしまったんだから……

私だったら、絶対に行きたくない。

しかし、学校を休むわけには行かないよね……

あの二人は、私たちの誰かが一人になるのを
待っているに違いない。

何かいい方法はないものか……

『とりあえず、今後も此処から通って気をつけるしかないだろう。
俺は、親父と一緒に
そいつらの情報をもう少し集めてみる』

流石マー君だ。

頼りになる旦那様だ。

『やっぱり、それしかないよね』

安全第一。

敵が学校に居るならそいつらに隙を見せなことだ。

しおり