第3章の第138話 どうしようもない問題65 9月(6)借用証書をでっち上げる事によって、言って利かせる悪政の手腕
★彡
【カジノ】
【化けの皮の探り合い】
――その豪奢なセンスを持ったマダムの指摘により、自分たちの素性を明かすことにした。
行われたのは、名刺交換だった。
『……』
『……』
スッ
この中で、次に動いたのは、サクヤさんに代わって、アサヒさんだった。
これも一連のやり取りの中で、予定していた通りの動きだったという。
豪奢なセンスを持ったマダムは、そのアサヒさんからの名刺に目を見やる。
アサヒさんは、予定外ではあるが、その豪奢なセンスを持ったマダムからの名刺に目を見やる。
ここで両者の素性が、明らかとなったわけだ。
『――なるほど、静止軌道ステーションから降りてきた者達でしたか……』
『……』『……』『……』
そう呟き得る豪奢なセンスを持ったマダム。
アサヒさんの元に集まるは、イチハ様にサクヤさん、3人でその人物の素性を頭の中に叩き込むのだった。
【豪奢なセンスを持ったマダム:クリューソス アントス ハンゲショウ(黄金の花言葉でトカゲの尾)】
紫黒いドレスに身を包んだ貴婦人に見受けた。
時代を先取りした自己主張的な帽子に、そこから垂れ下がったレース状の黒いカーテン。その素顔は窺い難い。
ずんぐりむっくりな体形に沿うように、完全オーダーメイドのドレスに身を包んでいた。
目視で観察する限りでは、一般女性2人分ほどの体積がありそうな感じだった。
それが、実物の人物を通しつつ、名刺交換をして受け取った印象だった。
そして、小さく、コクッ……と頷き得る。
胸に去来するは、この気持ち。
(((((化けの皮を被ってやがる)))))
【――イチハ達が、マダムが、その同じ言葉を、その心の内で強く強く思う問うたのだった】
ジワッ……
と変色す、それはアサヒさんの付けている手袋の指の部分だった。
(この手袋は特別製だ……。相手の魔力をつぶさに感じ取り、変色するようになってる……)
(でも、まさか……ホントに人の姿に化けられるだなんてね……)
(これはスバル君に聞いてた通り、うち等が手を出すべき相手やない……。逆に返り討ちに会うわ)
その手袋には、ある仕組みが施されていた。
それが、人差し指の部分だけが変色し、濃度の色合いが違うという事だ。
(だが……)
(でもまさか……)
(最大警報やなんて……)
瞳だった。
瞳孔は漆黒、虹彩は緑色、角膜は黄色、結膜は暗黒(それは本来であれば白い瞳の部分が黒一色)だった。
これには言葉を無くす。
思わずイチハさんは。
(これは……あかん……。ここにいる全員を人質に取られてるもんや!?)
それは、何も知らない、ここに着ていた人達全員やった。
紳士服を着た人も、綺麗なドレスに身を包んだ婦人も、
ヨーシキワーカさんも、そしてクレメンティーナさんも、人質に取られてものやったわ。
(アカン!! 任務失敗や!!)
ナレーションの語り手は、イチハ様。
【――対して、豪奢なセンスを持ったマダムは、『……』何も言わずに】
【ただただ、不穏な空気を醸し出していたものやったわ】
ナレーションの語り手は、豪奢なセンスを持ったマダム。
【――あたしは、ここには用があって、着ているだけ】
【あの例の娘に会うために】
【ここで、不祥事を犯すために着ている訳ではない】
ナレーションの語り手は、トヨボシ。
【――そう、双方、ここには、敵対しにきている訳ではないので】
【その静まり返った心の内で、相手の動向を伺う】
【それは、比すれば、つぶさに相手の反応を伺い知れるものだった】
【そんな中、未来の世界から来たスバル(トヨボシ)は――】
(――少女ではないが……。ここに来たのは、釣れたのは、副隊長(サブリーダー)的な何かか……!?)
対して、豪奢なセンスを持ったマダムは。
(この者達、中々できるザマスわね……。まぁ、人間レベルとしてはですが……)
豪奢なセンスを持ったマダムは、そのセンスを口元に充て、こう窺い知れる。
力の序列は、トヨボシ、L、アサヒ、イチハ、サクヤの順だった。
(――特にこの男……。そして、この妙な気配……)
『……』『……』
そう、それは、トヨボシとLの事だった。
気配で、Lを感じ取ったのだ。
――とその時、トヨボシが、その名刺を持っていたアサヒさんに、こう尋ねて。
『――それを貸して、アサヒさん』
『……! はい、どうぞ』
『どうも!』
トヨボシは、その名刺に目を落とすのだった。
(なるほど……)
注目すべきは、彼女の名前である。
(クリューソス・アントス・ハンゲショウさんか……)
それに対して、彼女、クリューソス・アントス・ハンゲショウさんは。
(地球人レベルで済ませられるほどのものではない……。……これは、首領レベル以上……!?)
【ヒヤリと冷や汗が垂れる……】
【彼女が着こんでいる、ドレスを湿らせ、汚していく……】
【それは、内包する心の不安の現われにも似たもので――】
(――上手く上手く、オーラを隠しているけど、内包している潜在魔力量は、ウチキを超過しているザマス……!)
【静寂な間が流れる】
『……』『……』
『……』
先に口を開いたのは、トヨボシであった。
『クリューソス・アントス・ハンゲショウさん』
『クリューソスで、充分ザマス』
『……』
『あなた達、日本人の名前に習えば、姓と名が逆になっていて、
日本人形式ならば、ハンゲショウ・アントス・クリューソスになります。
これが、日本人形式の姓と名という扱いですが、
ここでは、下の名前を呼ぶとして、クリューソスで充分ザマス』
『なるほど』
『あなたは?』
『トヨボシと呼んでくれ!』
『左様ですか……』
トヨボシ(俺)は、この女性から片時も注意の眼を外さないまま、
その名刺に視線を落とすのだった。
(名前がおかしい……。
クリューソス・アントス・ハンゲショウだって!? 何の意味合いがあって、こんな名前に……!?)
フムゥ……
と一考してみるトヨボシがそこにいたのだった。
(名前は、ゴールドをイメージしているな。
金とか黄金とかは、英語でMoney(マネー)で、ギリシャ語でChrimata(クリマタ)と呼ばれていて。
さらに、ここで、アントスという花の意味合いもって、
黄金の花、英語でGolden Flower(ゴールドフラワー)。ギリシャ語で、Chryso Louloudi(クリューソルルディ)
花言葉で縮めて、Chrimata(クリューソス)と呼称されている。
ハンゲショウは花、方白草、
花言葉の意味は、トカゲの尾、『Saururus(ソーララス)』。
トカゲは、英語でLizard(リザード)、ギリシャ語でSavra(サブラ)。またはSauros(サウルス)とも呼ばれ。
尻尾は、英語でTail(テール)、ギリシャ語でOura(オウラ)で、
サウルスとオウラで、ソーララスと縮めて呼称している。
えーと……つまり、『クリューソス アントス ハンゲショウ』……かな?
えーと……つまり、これを日本語に要約していけば……、『黄金の花言葉でトカゲの尾』……となっているッッ!?
……って、まさか、この人って!? 昔、エメラルティさん達が言ってたあの人ォオオオオオオ!?)
『……』
もう驚きしかない。
昔、確かに、エメラルティさん達美人三姉妹を通して、この人の事は、いくらか知っていた。
ただし、面と向かって会うのが、これが初めての事なので、無理もない話だった。
気づくのが、遅かったのかもしれないが、むしろ、早過ぎる方であった。
【――思わぬ、運命の巡り会わせであった】
【とそこへ――】
ゲシッ
『――痛ッ』
ツーーン
視えざる角度から、そのトヨボシの足を蹴ったのは、意外や意外な事にイチハさんだった。
これにはさすがに、マダムの方も。
『へ……?』
あの際立った感じの緊張感は、いったいどこの空へ飛んで行ったのか、甚だ、疑問を拭い切れない。
これは、もしかしたら、イチハ様のファインプレイになるのかもしれない。
とここで、Lは。
(ああ、これ……以心伝心いるかなぁ?)
姿をまったく見せないLは、そう思い至るのだった。
(ちょっと2人とも―ッ! 聴こえるー!)
((!))
(今、繋がっている状態だから、手早く済ませて)
(わか)
(ちょっとスバル君!!! オーラと魔力!! もっと抑えて!! ……漏れてるわよ!)
(いいいっ!?)
(クスクス、毎度毎度、ダダ洩れだからね君ぃ)
(クッ……意外と難しいんだぞコレ!!)
フッ……
と超人的な気配レベルから、一般人レベルのそれまで落とすのだった。
これには、豪奢なセンスを持ったマダムも。
(モロバレ……ってか遅……)
もう呆れるしかない……。
この瞬間、彼女から見た力の序列は、L、アサヒ、イチハ様、トヨボシ、サクヤまでの力の位まで、落ち込んだのだった。
(もう少し、パワーを内包したまま、抑えられなかったのかしら? そちらお嬢さんよりも、力が低い……)
それに対して、トヨボシたちは。
(どうだ?)
((完璧!))
(フゥ……)
(そのまま保っててね!)
『……ッ』
『……』
その様子を認めていた豪奢なセンスを持ったマダムは、
『……』
その口元に充てがったセンスから、ちょっと話し、この言葉を放つのだった。
『もしや、あなたたち……』
『!』『!』
(いけない)
(さすがにバレたか!?)
イチハさんが、トヨボシが、まさかの思いを去来してしまう。
『姉弟とか……!?』
ドシャン
そこには、呆けた感じのイチハさんがいて、そこには盛大に机の上にバンザイ姿勢のトヨボシ選手の姿があったのだった。
で。
『な訳あるか―ーッ!!』『今年でイチハ様は、ピ――歳ですよ! ……ハッ!?』
ガシッ
『ヒィッ』
そのサクヤさんの肩を掴んだのは、イチハ様だった。
にこりぃ
と可愛らしい笑みを浮かべて。
『秘密をバラすぞ?』
『お、お許しを……イチハ様……』
ガクガク、ブルブル
とさしものアサヒさんも、トヨボシ選手も、その言い知れない重圧(プレッシャー)に気圧されるのだった……。
そんな様子を見ていた、豪奢なセンスを持ったマダムは。
『……クスッ、いったい何の話をしてたですか!?』
(ホホ、いいものを見れたザマス。してやったり、亀裂を生じさせてやったわ!)
その心の内で笑うマダムがいたのだった。
『――さーて、話の道筋の流れからして』
クルッ
とその顔を向けた豪奢なセンスを持ったクリューソスは、ここにいる者達に対して、こう問いかけるものだった。
『アストル、テラコルさん、話の流れは!?』
『昔、ヨーシキワーカが職業訓練校時代に通っていて、そこの7月、8月の話は、ほとんど終わっている状態だな』
『あぁ!』
『となると、9月からですね……』
『……』
そう、9月からの話である。だが……。
『……ですが、7月ぐらいの時、月見エビバーガーオーロラソース社から職業訓練校へ、一報が送られていて、
そこから、ドクターイリヤマ達が、消防試験センターへ、一報を送っていて、
で、その当日中の、8月中下旬の消防試験の時の話は、まだ、話してはいなかったのではないのですか!?』
『あ、忘れてた……』
『仕方がありませんね。……では、代わって、私から、説明していきます』
★彡
【職業訓練校時代、8月】
【消防資格試験】
――消防資格試験会場は、どこかの建物の中のホールを貸し切って、豪勢に執り行われていたのだった。
そして、1度目のきっかけ作りは、不可解な出来事だった。
『――あの子が着てるな! 良くここへ、その顔で出てこれてきたものだ!』
『……?』
(あの子……いったい、誰の事を言っているんだろう?)
それは、私には直接取り次がずに、誰かを介しながら、話だけ聞いていたものだった。
それは、間違った情報工作だった。
『あのすみません、ちょっといいですか?』
『!』
その試験官の人は、その人物と思わしき人に尋ねられて、そこへ足を運ぶ。
ヨーシキワーカの疑問は、こうだった。
『あの、ちょっとここで聞いていて、気になっていたんですけど……。
携帯電話が去年の12月ぐらいの時期に買い替えたばかりなんですよね。雨が降って、それで壊れたから』
『あのぅ……それが何か?』
(意図がわからんぞ!?)
すんません。それは、ただ単に、ヨーシキワーカの説明不足でした。
『えーと……それで、ここにあるように、携帯電話(本体)が変わっても、携帯電話番号(そのもの)が変わっていない場合は、
どうすればいいんですかねぇ!?
何かそうした影響があるんですか!?』
『そんなのは、消防の資格免許を取った後にでも、何なりと申請すればいいだけの話だろ!?』
『……』
『質問はそれだけかい!?』
『……』
コクリ
と頷き得るヨーシキワーカ。
ハァ……
と溜息を零す試験官の人。
その場に置いて、もう話すことは何もなく、背を向けて歩み出していく。
その時だった。
『んんんっ!? なんか聞いていた感じの子と違うぞォ!? どうなってんだいったい……!?』
それは、懐疑的な疑問だった。
それは、間違った情報工作がされていた線だった。
そして、2度目のきっかけ作りとなりそうなものは。
『――消防の資格試験が始まったら、その途中になって、止まる事はできない。
そこで、途中退席したり、トイレに行ったものは、無条件で失格とする。
また、各々各自、携帯電話は、電源を切っておくように。
また、マナモードにしても、その機種次第によって、そのアラームの時間帯になったら、鳴る機種もあるようなので、要注意するように。
また、あそこの壁掛け時計の針が、10時になったら、スタートとする。
何か、意見があるものは、この場にいるか!?
ないなら、そのまま、その時間が過ぎ去るまで、その場で待機状態になるが……。
この中で、あそこの時計の針が見えないいるか!?』
『あっはい!』
『……何か!?』
『時計の針が見え難いんですけど……。ここから、結構距離が離れていて……』
『我慢しろ!! みんな条件は、その同じなんだ!!』
『それだけか!?』
『はい……』
『……』
(何だ、つまらん奴……)
2度目は、そんな感じだった。
★彡
【カジノ】
――豪奢なセンスを持ったマダム、クリューソスは、こう語る。
『――このように、月見エビバーガーオーロラソース社、職業訓練校伝いから、消防資格試験センターまで、事前連絡が飛んでいた事になります』
これには、サクヤさんも。
『目的は?』
『簡単に話せば、その月見エビバーガーオーロラソース社在職中時にも、消防資格試験を受けていた事があっていて、
通算、2年間受け続け、3回か、4回かは、落ちていて……。
その職業訓練校時代でも、1回は落ちているので、最低4から5回は、落ちている事になります』
これには、サクヤさんも。
『ハァ!?』
『で、ホントの事実の点数だけで言えば、90点台は取っていても、調整調整されていて、
ポイント制が、別の誰かに流れていたのです。
調子に乗るな!! って感じでね!』
これには、アサヒさんも。
『パートだからか?』
『はい』
『動機は!?』
『動機は簡単です。
月見エビバーガーオーロラソース社在職中、『2月』の時、ヨーシキワーカ氏は、その消防資格試験を受けてきて、
そこの物産店で、買い物をしていたのです。
辞める前の、『贈答の品物』の用意です。
翌日、『退職願届』を出していたのです。
これには、カンカンの思いの総務課の方々がいて、周りに連絡を飛ばしまくっていて、
その人を、ワザと落とすようにしていったのです』
これには、アサヒさんも、サクヤさんも、イチハ様も。
『何やってんんだ、あの人……!? フツーそんな事したら、怒って当然だぞ!?』
『あぁ、あたしだって、わかる……』
『うちもや……』
それに対して、クリューソスさんが、『動機ですか……』と言いつつ。
フムゥ……。
と考えてから、こう言ってきたものだった。
『実は、込み入った話を聞いていけば……。
1.その人のお父さんが、『定年退職する前』だったから、それに合わせて、『退職願届』を出した事になります。
2.また、職安のヨシュディアエさんを推しても、いったい、いつ、その職業訓練校を受けるのか!? いつ辞めるのか!?
もどろかしかった事があるのですよ!?
3.また、弟君からも、こう言われていて、お兄ちゃん、その最初の勢いがその大事だから、
その途中になってから、もう振り返らない方がいいよ。
お兄ちゃんの事だから、甘いから、そこで止めちゃうと……。
また、ズルズルとなって、そこで1年、2年と過ごしていく中で、また、貴重な時間を損する事になるんだよ!?
これは、お兄ちゃんの人生だからね、そこだけは、割り切っていかないとね……。
と言われていた事もあって、月見エビバーガーオーロラソース社を、辞めていったのです』
これには、イチハ様も。
『なるほどなぁ……辞めた動機は、だいたいわかってきたわ。……で、その消防試験の経緯は!?』
『実は、こんな事は、何度も蹴落とされていた経験はあっていて、
ボイラーは別で、危険物、消防と続いていたのですよ。
そのヨーシキワーカさんの前に、その結果通知が来る前に、
月見エビバーガーオーロラソース社に、その事前連絡が行っていて、その結果を、先に知り得る事ができていたのです』
これには、イチハ様も。
『まさか……!? そこでも、ワザと落とされていた……!?』
『はい、そうです。
ヨーシキワーカさんの手元に届く前から、その合格結果通知表が届く前から、
意図的に操作されていて、落とされていたのです』
これには、イチハ様も。
『なるほどなぁ……。本人はそれを知ってたんやなぁ!?』
『はい、その通りです』
『読めてきたわ……。段々と辞めていった、根本的な根元の動機がなぁ……。
その人物を、会議室かどこかに呼んだんか!?』
『それは、断じてNOです!』
『何ッ!?』
『仕事中で、騒音がうるさい時に限って、人を伝手を介して、ちょっとだけ言ってから、引き返していったそうです……』
これには、イチハ様も、アサヒさんも、サクヤさんも。
『……』
『……』『……』
『人伝手を介して……騒音管理区分におって、仕事中にか……!?』
『バカか!! その会社は!!』
『そんなの失敗するに決まってるわよ!!』
それに対して、クリューソスさんは。
『伝言ゲームのやり取りでしたからね……。
一応断っておきますが、その合格結果通知表が、ヨーシキワーカさんの『手元に届く前』から、そんな兆候があっていたようでしたから、
当然、ヨーシキワーカさんご本人は、『結果は当然知りません』から、不思議に思っていたほど、そうなんですよ!?』
これには、イチハ様も。
『……まさか!?』
『はい、落とされました……』
『あぁ、やっぱしな……』
『あそこは、ちょっとだけ言ってから、それでわかるんだと思っていて、比較的どの子も優秀なんだと思い込んでいたんですよ!?』
『無理やろそんな事!!』
『ホホッ、ザマスわね!?』
――クリューソスさんは、続けてこう語るものやったわ。
『――次は、その流れで、9月の話です』
★彡
【職業訓練校、9月】
【消防免許の取り消し】
【第一種消防設備(スプリンクラー)、その配管のネジ切り中、消防免許の取り消し、運命の巡り会わせ、後戻り不可能地点】
――それは、件のヨーシキワーカさんの身の周りで起きた出来事のほんの一部だった。
『……』
ギィゴ、ギィゴ
と配管のネジを切っている最中のヨーシキワーカ。
ドクターイリヤマ、ドクターライセンの2人は、設備管理科のカリキュラム訓練の場、配管のねじ切りの現場視察に着ていた。
応対に当たるは、設備管理科の講師の方だった。
『――あぁ、ウチではあの子辺りが優秀ですね!』
『あの子……?』
『ええ』
設備管理科の講師の目線の先には、配管のねじ切りをしているヨーシキワーカさんの姿があった。
作業着を着て、手袋をはめて、作業帽を被り、真剣に望んでいる姿だ。
『ヨーシキワーカ君という生徒です!』
『ホゥ……』
『ウチではベスト5の一角ですね! 優秀なんですが……実務経験がないらしく、他の生徒さん達と同じ、下の水準と定めています!』
『……』
『……』
★彡
【カジノ】
――クリューソスさんは、こう語るものだった。
『――ドクターイリヤマとドクターライセンのお二方は、何でもそこにいた人達に聞き込んでいく限りでは、
7月、8月の時期ぐらいから、頻繁に設備管理科の方に、足影く通っていたそうなのです。
そこで、業を煮やした設備管理科の講師が、その2人を改めて招き入れたそうなのですよ!?』
そこへ、イチハ様が。
『なるほどなぁ……。そこで、初めて、ヨーシキワーカさん達、設備管理科の訓練生たちは、
改めて、その医学講師2人の名前を知ったって事かいな!?』
『はい、その通りです』
【職業訓練校、9月】
【(続)消防免許の取り消し】
【第一種消防設備(スプリンクラー)、その配管のネジ切り中、消防免許の取り消し、運命の巡り会わせ、後戻り不可能地点】
――ドクターライセンは、こう呟きを落とす。それは、気になっていたあの人の能力の評価だった。
『――そのヨーシキワーカさんの実力の水準は……!?』
それは、ドクターイリヤマを推しても、気になっていたところだった。
『……』
コクッ……
と小さく頷き得る。
それについて答えたのは、設備管理科を務める講師の見解と意見だ。
『……仮にもしも、どこかの企業で務めていたら、NO1かNO2辺りでしょう……。ですが、栓泣き話です……』
『……』
『……何事も経験か……』
黙るドクターライセンに。
心当たりがあるドクターイリヤマが、そう呟くのだった。
栓無き話とは。
そんな話をしても、無意味であり、無益である事。どうしようもない事。
ドクターイリヤマは、その設備管理の講師に、こう尋ねる。
『……他に優秀そうな子は?』
『そうですねぇ……他には、タチバナ、ヤマグチ、そして紅一点の美人コバヤシですね!』
『『へぇ~』』
『3人とも実務経験があり、将来有望株ですから、どこの企業に出しても、恥ずかしくない人材ですよ!?』
『あと1人は……!?』
『残念ながら……歳が結構行っている方で、実務経験と免許をお持ちなので、ここで腰を据えて、じっくり場を睨んでいる方ですよ。
経験値は、ここにいる誰よりも積んでらっしゃるので、『後進の育成に手解きをなさるような人』であれば、『人望も厚い』でしょう!』
『『ホゥ……』』
(ホントにこの人は、良く見ているなぁ……)
と感心の思いの医学講師2人がいたのだった。
『あと、よく混同されるんですが……』
チラッ
とヨーシキワーカ君の隣にいる、生徒と、あっちに見える生徒さんを見比べる。
先に体型のいい子から述べる。
「ヤマグチという子は、ここには2人いて……。
優秀なのはふくよかで、あの通りガッチリした体型の子で、前職は電気だったらしく、現場で積んだ実力はある方です!
そして、あちらに見える比較的若い子は、そう、ヨーシキワーカ君の隣の子ですね!』
『『……』』
『……』
そのヤマグチ君(年下)の様子を見守る2人。
呟いたのは、ドクターライセンだった。
『……あの子が何か?』
『設備管理を学ぶのは、ここが初めての子なのですから、将来最も有望ですよ!
どんな会社に入っても、あの通り若い子だからか、周りからも可愛がられます!
そこで真面目に勉強を積めば、あそこにいる3人にも、引けを取らないでしょう!』
『……そのヨーシキワーカ君と比べては……!?』
それは当然の疑問だった。
気がつけば、ドクターライセン(僕)はそう尋ねていたんだ。
横から、ドクターイリヤマ先生が、ジト目で見てきて、ちょっと恐い……。
『う~ん……あの子はなんていうか……、他の生徒達と違って、なんか急ぎ過ぎてるキライがあって、危ないですね……』
『『!?』』
それは不意な疑問だった。
実力とは、また別のところだ。
『……あの、危ないとは……!?』
『……さあ……?』
こればかりは、私としてもよくわからない。だから、こう言うしかない。
『私も本人とは親しくありませんから、私から声をかけた事はありません……!』
『『……』』
それはまだ、講師と受け持っている生徒さんとの間で、経過観察の時期があったという事だ。
つまり、ヨーシキワーカの実力水準は、まだ可能性のある、未知数だ。
『――とそうだ!』
何かを思いついた設備管理科の先生。
『私は、ちょっとここでお暇させていただきます。ちょっと野暮用があるので!』
そう言うと、その設備管理科の講師は、その場を『失礼』といい、後にしたのだった――
この場にいるには、設備管理科の生徒達みんなと、その医学講師の2人だけとなるのだった。
――その配管実習場の講師の席に座るは、ドクターイリヤマ。
『――……』
そのイリヤマ先生から見て、右側にいるのは、ドクターライセンとなる。
『……』
それは、設備管理科にいる生徒達からすれば、左手側にドクターライセンが立っていた構図になるのだった。
『……?』
『……?』
何の用で着ているんだあの人達。さぁな……。
そんな心許ない、声が聴こえてくる思いだった。
――その時、ドクターイリヤマが、何事かを思い出すものだった。
『――あぁ、そうだ!』
それは悪乗りだったという。
『そう言えば、つい先日、消防試験があったはずだろうがッ!!
速ければ、もう採点が終わっている頃やろうが!! ちょっと先に、その結果だけ聞いてみないか!?』
その反応を買うは、ドクターライセンの姿だった。
『……! えーと……確かここ等辺に……』
ガサゴソガサゴソ
とドクターライセンは、その配管実習場の教卓の机の引き出しから――
『――その各種公共機関の試験が開始される年の、『各試験センターの電話番号の控え』が、ここ等辺にあったはずなんですけど……!?』
『よしっ! それを出せ!』
『えーと……どこだったかな!?』
ガサゴソガサゴソ
『オイッ急げ!』
『ちょっと待ってくださいよ……! えーと確かここ等辺に……あっ! あったあった!』
『よしっでかした!』
『はい』
とドクターライセンの手から、ドクターイリヤマの手に、
その各種公機関の主催する各試験センターの電話番号の控えが渡されたのだった。
『……オイッ、今、あいつ等達の様子はどうだ? こっちを怪しんでみているか!?』
『いいえ、ちっともどなたも見られておりませんよ? 皆さん、配管のネジを切る事に、一心不乱になって取り組んでおられますよ!』
『フゥ……その程度なもんか……!
じゃあ、その消防資格試験センターへ問い合わせてみるぞ!?
オイッ、お前は、逐一ここに人が入ってこないよう、そこでよーく見張っておくんだぞ!?
誰か1人でも、怪しまれた行動を取りやがったら、そこのドアから廊下の方へそいつを摘まみだしていってな!
そこで反省させるんだ!! ……わかったな!?』
『何もそこまでの事をする必要性はないって……僕は思うんですけど……!?』
『フンッ……こんな事は、徹底してやらせるべきなんだ!! そいつが反論できなくなるようにしてやってなァ!?』
『……』
(この時、僕は、強いあなたに心酔していて……。
何も物事の道理を、条理を、人の道を踏み外すような倫理を言えなかったんだ……ッッ)
僕は、この頃から、道を踏み外していたのかもしれない……。
――とその時だった。
『――……』
その顔を上げ、その瞳で捉えるは、ヨーシキワーカだった。
その瞳で、いったい、何を見る。
★彡
【カジノ】
――クリューソスさんは、こう語るものだった。
『――話をどなたさんにも聞き込んでいけば、やっぱり、素行ものの不良講師だったそうなんです』
これには、イチハ様も。
『不良講師!?』
『ええ。なんでも、前職は職業訓練校の設備管理科の講師であり、その後、ハーバード大学姉妹校の医学講師の教職位まで上り詰めたそうなんです』
これには、イチハ様も、サクヤさんも。
『何それ!? スゴッ!?』
『ハーバード大学って、あのハーバード大学!? どんだけ頭がいいのあの人達!?』
『って、技術系から、医学体系まで、修めてたのかよあの人達!! すげぇな!!』
それは、もてはやされるほどの逸話プリだった。
『じゃあ、ヨーシキワーカも!?』
だが、それに対して、断として、否を唱えたのは、クリューソスさん、アストルさん、テラコルさん、他カジノのみんなだった。
『『『『『な訳あるか!!! あいつはパートだぞ!! 頭はそこまでよくない!!!』』』』』
これには、イチハ様も。
『なんや、素の出来は、その程度やったんか……』
ホッ……
と胸を撫で下ろす思いやったわ。
クリューソスさんは、こう語る。
『ドクターイリヤマは、もう人として引き返せないところまで着ていたらしいです』
これには、アサヒさんも。
『じゃあ、ドクターライセンは!?』
『あの人は、頭髪が残念なほど、後退気味でしたが……』
『プッ……上手い……』
『最近では、昼休み時間中に、トイレに駆け込み、そこで『毛髪コンディショナー』を使っていたようなのです』
とこれには、女性陣営のイチハ様が、サクヤさんが。
『いや!! アカンやろそれは!!』
『そうそう、毛髪コンディショナーよりも、まだ、『毛髪トリートメント』の方がいいですよ!!』
『わかっとらんなぁ、そいつは……!! 毛穴に油が詰まって、頭皮がより一層、後退気味になるやろうが!!』
『ですね……。まぁ、日本人なら、その後退してしまった部分を活かして……』
とここで、アサヒさんが。
『『ちょんまげ』にしたらどうや!?』
『『『『『ちょんまげーッ!?』』』』』
ライセン先生は、頭のについたボタンを押して、ビヨーンビヨーンとちょんまげちょんまげして、遊ぶのだった。もはや、芸の1つである。
これには、一同、思わず。
『何それ!?』
『受ける―ーッ!!』
ハハハハハッ
と談笑し合うのだった。
これには、さしものクリューソスさんも。
『クッ……クッ……腹が痛い……プッ、クックックッ!』
ナレーションの語り手は、ヨーシキワーカ。
【ドクターライセン、あなたは、まだ、この時には、引き返せるところにいたんだ】
【なぜ、その事を誰にも打ち明けなかったんだ!?】
【それを、本人にさえ報せていれば、まだ、違った未来が待っていたのに――】
【職業訓練校、9月】
【(続)消防免許の取り消し】
【第一種消防設備(スプリンクラー)、その配管のネジ切り中、消防免許の取り消し、運命の巡り会わせ、後戻り不可能地点】
PPP……PPP……ヴーン……
と中空にエアディスプレイ画面が投影される。それは、顔出しNGだった。
【――その後、ドクターイリヤマは、直接の回線を繋ぐために、ここ職業訓練校の講師用の電話回線を使って】
【そこの消防試験研究センターへ問い合わせるのだった】
【そこで聞いた合否結果は、驚くべきものだった――】
『――えっ!? 嘘――ッ!?』
それは、ドクターイリヤマの一驚から始まるものだった。
『入所時期が6月で、試験があったのは8月だから、たった2ヶ月間しかなかったハズとぞッ!? そんなんでいったいどうやって!?』
(バカな、幾らなんでも早過ぎる!!)「
『えっ!? あいつは、いったいどんな手を使ったんだ!? どんな高度な勉強法を試して……!?』
そこには、もう驚きしかないイリヤマ先生と、素っ頓狂に驚いた姿のライセン先生の姿があったのだった。
ナレーション語り手は、ドクターイリヤマ。
【俺は、その詳細を誰よりも詳しく知りたかったのかもしれない】
【講師として!!】
【講師という名目上、そいつを調べれば、そのデータを取りさえすれば、そこに至る解に辿り着くからだ】
【いつの日か】
【だが、その為には、1人だけではダメで、何人もの被験者のデータが必要だったんだ】
【その為の問題がどうしようもない問題を通じてのもので、そいつの親族兄弟などを使って】
【わざとそいつを落ち込ませてから、そうしたデータ取りが必要だったんだ】
【他の被験者の方のデータ取りと照らし合わせるために……】
【そして、それが、第二の扉、第三の扉と続いていく、地獄への門だったんだ】
【俺は、講師としてチヤホヤされたかったのかもしれない】
【そーゆう教えを、その場に集まった生徒さんを通して、実践経験を経て、そうした認証試験データを取りたかったのも知れない】
【そうしたデータがすこぶる集まれば、後は正書し、特許申請をしてしまえばいいからだ】
【――だが、既に同じことを考えていた人がいて、ウェーブグローバルを通じて、そーゆう宣伝告知をしていたんだ】
【俺は、あくまで後発のもので、後れを取っていたのかもしれない……】
【光と闇、俺は問題を通してデータ取りをしていた以上、そうした事が会っていた事を漏らす奴がいて、誰が見向きなどするだろうか!?】
【それが、密告だった……。俺は、抱えていた身内から滅ぼされていくことになっていくんだ……――】
『……えっ!? ちょっと待って……!?』
『……!?』
驚きの声を上げるドクターイリヤマ。
ドクターライセン(僕)は何だろうなと思いつつも、次のイリヤマ先生の言葉を待つ。
『……』
そして、どこかで、その設備管理科の先生は、それを知っていたから、ジッと黙って、見据えていたんだ。
その2人の所業の悪さを、見るために。
『嫌々さすがにそれはないだろ……ウソだろ……96点!?』
『ハッ!?』
『ハズレは、たったの2問だけ……!?』
ドクターイリヤマの口から衝いて出た呟きは、本人すら驚愕するほどの点数だった。
エアディスプレイ画面越しの向こうの相手は、こう語る――
『――その子が受けていたのは、消防試験の甲種4類と乙種7類で、
4はそれで、7は点数こそ足りませんが……。おそらく本人の記入ミスによる、ドワスレかと……!』
『ド……ドワスレ……!? ど……どーゆう事だ? 言ってる意味がさっぱりわからんぞ!?』
『? ……』
ドクターライセン(僕)は何だろうなぁと思いつつも、その様子が気になって、
イリヤマ先生の所へ近づいて、その音声を聞き取るようにするんだ。
先方からのご意見は、こんなものだったんだ。
『あぁ……つまりですね。消防試験を受ける時に、資格試験申請の受付願書がありますよね?』
『あぁ、あったなそう言えば……。ウチでは、ウェーブグローバル申請も進めてはいるが……』
そこへ、ドクターライセン(僕)が、横から口を挟んできて。
『その方が優秀な生徒さんですもんね!
それにその人達が帰ってから、その資格試験の願書を出そうにも、どの郵便局も時間的に閉まっていて、手遅れですから……。
前にもそうした生徒さんたちがいて。
出そうとしても間に合わなかった……と後悔ににじんでいましたから……。
そうした子は、よく見ています。
ですからウチでは、その対処法として、ウェーブグローバル申請を強く進めているんです! その方が値段的に安く抑えられますから!』
『……で、どうなんだ!?』
『あぁ、おそらくそれでしょう!』
『やっぱり……』
『あぁ……』
思った通りの切り返しだった。
そこには、ガッカリ加減のライセン先生がいて、『あぁ……』と嘆いたほどだった。
これには、イリヤマ先生を推しても。
『何やってんだあいつは!?』
『……ッ、そんな大事な所で、オオポカをやって仕出かしてしまうだなんて……。あの人にもそんな所があったんですね!?』
『だいたいそんなもんだ!! どこもな!! 誰、彼もがな!!』
『……ッ』
そのライセン先生の洞察眼と勘の良さは、さすがだ。
だが、こうも思い上がってしまう。
『たったの2点程度……か!?』
『……?』
ナレーションの語り手は、この場にはいない、ヨッシュタダワカーセ。
【――だが、それは大きな思い上がり、とんだ過ちだった……!?】
【それは、言うなれば、どの試験センターに置いても同じなのだが……】
【実は、年度別に、新しい難しい問題を出してみては、そこに受けにくる人達に、満点を取らせないようにしてる仕組みなのだ】
【だいたい、その割合が2,3問ぐらい】
【去年、合格者層が多いなら、今年はもっと難しくして、それを取らせないようにしようと】
【そーゆう行政の取り組み方があり、世界経済のグローバル水準を保っているのだ――】
『……』
そして、この時、何も知らないヨーシキワーカは、その心の内こう思うのだった。
(いや……だって、資格試験があるのが8月で、その紙の資格試験申請受付は、6月だったじゃないか……!?
私が、その職業訓練校の職員室の窓口に、顔を出した時、1部しかもらえなかったんだ……ッ。
だから、追加はなしで、記入ミスをしないかと、そのサインを書いているうちに、そうなってしまったんだ……ッ!
そもそもその時、2つの消防資格試験を受けるだなんて、初めてだったからな……ッ!)
それが、道理だった……。
その消防試験研究センターの電話相手の方は、こう続けて語っていく。
『本人が出したのは、紙の申請願書で、4の方は試験免除科目ありで、7の方はなかったですから……。こちらとしてもそのように勧めました』
『『……』』
『この試験免除科目を活かしての1教科の欄を見る限り、同じような結果だとすれば……2科目とも合格水準ですよ!
そちらからの他の生徒さんは、全員不合格でしたけどね……!
その人1人だけです!』
『『!』』
『1人だけいたのはほんとにスゴイですよ! いったいどうやったんですか!?
まぁ、今回は残念な結果でしたけどね……。
まぁ、本人が、甲種4類を取った後に、強く望めば、同じような結果には違いないでしょう!』
その驚きの内容を聞いたドクターイリヤマ(俺)は、呆然と立ち尽くしながら、こう言葉を吐いた。
『合格ライン……!? えっマジッ!? どうなってんだあいつ……!?』
ドクターイリヤマ(俺)は、あいつの様子を伺う。
『俺がちょっと目を見たら、水道管工事のねじ切りをやってて、今、他のみんなと一緒にネジ切ってるぞ……!?
ハァ――!? ちょっと待て待て!? こちらが組んであるユニットテキストも、まだ何もやってもいないのに……!?
いったいどうやって……!?』
ドクターイリヤマ(俺)は、もう痛く混乱した。
『……』
ヨーシキワーカは、その心の内こう思うのだった。
(まぁ、何も知らないからな……。
イリヤマ先生もライセン先生も、前に自分が、その消防資格試験を受けていただなんてこと、何も知らないからな……。
なーんにも、尋ねられてもいないし……)
それが答えだった……。
――どうしようもない問題の、最大の分岐点は、実はここにあったのだ。
ドクターイリヤマのその心中は、とても穏やかじゃなかった……。
(何で俺の時より、あんなポッと出の若い奴が出てくるんだよ!? ホント!! 気に食わん!!!)
それは、妬み嫉み、嫉妬からくる邪(よこしま)な感情だった。
それが動機だ。
(落としてやる……!! 毎度いつもの手を使って!!)
俺は、ワザと、その中空に浮かぶエアディスプレイ画面から、幾分かその顔との距離を放し、こう言うのだった。
『……あっ、ちょっと失礼してよろしいでしょうか? 今、この場にそうした本人の方が着ていますので』
それは、ウソだった。
本人は、配管のねじ切りを今もしていたのだった。
『!?』
『!?』
――ドクターイリヤマ(俺)は、まず、その電話先の相手を騙す必要があった。
『――あっ、ヨーシキワーカ君、ちょっとこっちにきて!』
『!』
『!』
その話を聞き入るは、消防試験研究センターの人と、ドクターライセンの2人だった。
『は~い!』
『うわっ! 腹話術師下手くそ!? 本人の声と全然違う!?』
ヨーシキワーカ(本人)の声は、そんな声じゃないのに。
『シ~~ッ……黙ってろ! あっ! 何でもないですよ!? ちょっとこっちの事なんで……!?』
『……』
『……』
黙るドクターライセン(僕)に。
消防資格試験センターの人。
ドクターイリヤマによる、似ても似つかない上手い声(?)で、腹話術師が、どうしようもない問題に関わる、嘘とすり替えが行われる。
消防試験研究センターの人は、黙ってその話を聞くばかりだった。
『さあ、ヨーシキワーカ君、ちょっと君に話がきていてね?
……。
んっいいかな?
『何だろう僕、すごいドキドキする!?』
……何でも凄い点数なんだって!? でも、君なら……もっと上に行けるだろ?
『うん、そうだね。どうせなら僕、満点取ってみたいかな~ぁ!?』
……』
その時、ドクターライセンは、こう思う。
(本人は、絶対にそんな事は望まないのに……)
その時、消防資格試験センターの人は、こう思っていた。
(本試験は、年度別に計2回行われていて、
その度に、前年度の筆記試験や、どの参考書にも使わられていないような、模擬回答がこちらの方で用意されいて、
最低2問は、外れるようにしてできていて、そこだけは取れないようにして、できているのだけど……。
そうしないと、ほとんどの人達が合格してしまい、
世の中の産業の流れが、経済事情の流れが、滞るのだが……。いいところ、職の斡旋のパワーバランスなのだよ、この世の中……)
睨み合う、三者三様。イリヤマ、ライセン、センターの人。
『……』
『……』
『……』
そして、それは、消防試験研究センターの人ですら、わかっていた事だった。
だから、相手としても、決していい顔をしていなかった……。
毎度ながら、この逝かれ爺は、こっちのセンターでも話題で、何かと問題とトラブルの多い講師として、名が上がっていたからだ。
だが、講師という名目上、生徒さんの言動は、よく見てらっしゃるので、そちらの意見を勝っていたのだ。
だが、まさか、自分の番になって、周ってくるとは……運も尽きたな……。
だが、人を見る眼があるのかどうか!?
その観察眼だけは、講師という責任ある立場上、尊重されて当たり前だからだ。
奇しくもこの時、口に出して、言い出せなかったのを、スゴイ後悔している……。
とその時、ドクターライセンが。
『うわっ! この人、そんな事するんだァ!? 信じられない……ッ!! 僕なんて言ってないですよあの人……!!』
『……』
『……?』
(では、ここでは、何と言っているんだ!? 俺か!?)
それに対して、ドクターライセンの心の内では。
(いつも、あの人は、ここでは、『私』という呼称で言ってましたよ……)
そう、職業訓練校時代では、私、という呼称だった。
なお、月見エビバーガーオーロラソース社時代では、俺、という呼称で。
小学生時代では、僕から俺に変わっていった、呼称だったかと思う。だいたい、小学校5、6年生の時期である。
これには、急に話を振られてしまったイリヤマ先生を推しても、余計なトラブルだったので。
『シッ、黙ってろ!! とまあ本人もそう言っていますんで、次回に見送ってやってください!
……それよりも、もっと惜しい子がいますよ……!?』
『惜しい子……!? ですが、他の人達は全員、『不合格』ですよ!』
そう、ヨーシキワーカ以外、この時、全員不合格だった。
そこへ、先生という立場と権力を振りかざして、こんな事を言い腐ったのだ。
『ええ、ええ、そうなんですが……!? そこを大目に見てやってくれませんか!? ……私の顔を立てて!』
『……あんた、前にも、『そうやって何度もやってる』だろうが!?
改ざんする者の立場になって、物事を言ってほしいですねぇ!!
不正をまた働くんですかァ!?』
『そこを何とか言っているじゃないですか~!? 私の方からも、他の者に取り次いでまわりますから、いいんですか~ァ!?』
『……なに!?』
『ああ、お前の名前は何てゆーんだ!?』
クソッ、また、この脅しか、毎度毎度……。
その喧嘩、買ってやるよ。
『………………だ』
『そうか、覚えたぞ……そんな名前か……。ちょっとこっちで調べてやるから、どっちがいいか!? そっちで判断して決めろ!?』
『……』
『このまま俺の言う通りにするか!? 後で俺たちと集まって、酒の飲み会の話に誘いに乗るか!? ……決めるのはあんただ!』
『……そうやって、『他でも』やってるんだな……!?』
『フンッ! こっちは伝手が多いからな! 出来のいい返事を期待しているぞ!?』
『……』
俺はここで、ドクターライセンの顔を見て。
こうやり取りを豹変させる。
『あぁ、そうなんですか!? できればお願いしますね!
ええ、ええ、私(わたくし)どもから見ても、特別目をかけている子なんですけど、
私の教え子の生徒達の中でも、技術面に光る子がいまして!?
その子に持たせてもらえませんでしょうか!? ……どうか!?』
『……?!』
『『僕もその人ならいいと思いますよ』!?』
(こっこいつ、また『腹話術師』を……ッ!! 俺たちの誇り(プライド)と信念をなんだと思ってるんだ……!?)
『と本人も申されているんで……もちろん、できればなんですけど~~!?』
『~~! ~~!』
『えっそうですかァ!? それなればよろしいと、私共も思います! ではそうなるように、是非、お願いします! はい!』
『~~!』
ブッツ……
とこちらから強制的に、その中空に浮かぶエアディスプレイ画面の電話回線のやり取りを落としたのだった。
これには、イリヤマ先生も、ライセン先生に振り返りざま。
『……やったぞ!』
『うわっ……マジィ……!? これバレたら、相当、マズいんじゃ……。『懲戒免職処分』ものですよ……!?』
『シッ黙ってろ!! 幸い、こんだけ距離が離れているんだ……。……さっきの会話は聞かれていないはずだ……!?』
――その頃、何も知らない設備管理科の講師とその生徒さん達は、真剣にそのカリキュラムを望んでいたのだった。
(オイッ!! そんな不正、本気で許されると思うなよッッ!?)
メチャ、ご本人様が怒っていたのだった……。
☆彡
――過去から現在に返り、サファイアリーさんが、こう語る。
「――そんな感じだったらしいわよ……!?」
これには、アユミちゃん、スバル君、ミノルさん、アヤネさんが。
「マジ……!?」
「信じられない……」
「アメージング……、そんなできる人もいるのか……!?」
「どこの世界にもいるものね……。ホントの天才は……!?」
これには、サファイアリーさんが、エメラルティさんが、クリスティさんが。
「違うわよ!」「うん!」「違うもの!」
と進言してきたのだった。
これには、アヤネさんを推しても驚くしかなく。
「違うの!?」
それに対して、サファイアリーさんが、こう切り返してきて。
「ホントを言うとね……。前の会社を辞める前にも、その試験を数回臨んでいたそうよ!?」
「は……!?」
「だから初めてじゃないのよ!
筆記試験を何度も受けた経験があるからか……その整合性のやり取りについて、ある程度の目測と憶測が事前に建てられたのよ!」
これには、アヤネさんを推しても。
「ウソ―ッ!!?」
それに対して、サファイアリーさんが、エメラルティさんが、クリスティさんが。
「事実だから!」
「うん」
「そう言えば、そうだったかも……!」
サファイアリーさんは、続けてこう語る。
「でね、ご本人は、設備管理のそうした実地の経験者じゃないから、あとちょっとのところで何度も落ちてるのよ……!?」
「そーゆう事!」
「うん!」
サファイアリーさんが、クリスティさんが、エメラルティさんが、揃って頷かんばかりだった。
サファイアリーさんは、続けてこう語る。
「でもね。ここでドクターイリヤマがちょっとした悪戯を仕掛けたの……。
腹話術師によるもので、ヨーシキワーカさんの点数を、タチバナさんに、調整して回していたのよ。
それが、教職員の立場を脅かすもので、それが件の問題の契機の始まりだったの」
導火線のついた爆弾があった。
イリヤマ先生は、それを何度もやらかしていて、複数の爆弾が爆発しまくっていった。
笑う哂う嗤うイリヤマ先生。
そのライターを持って、次の爆弾を探す。
そして、それが見つかる、取扱注意と書かれた、導火線のついた爆弾があった。そう、それは、特殊な爆弾だった。
イリヤマ先生は、誤って、それに火をつけてしまうのだった。
――次いで、クリスティさんが、こう語る。
「――ドクターイリヤマの魂胆は、この時は、まだ、誰にもわからなかったそうよ!?
後になって、それが明るみになれば、それは火を見るよりも明らかで、最悪としか形容し難いものだから!
そりゃあそうよね!? 本来なら、その人の手元に届くはずだった免許の話を取り消して、別の人に持たせたんだから……!!
それは医学講師の面を汚し、講師という役職柄の体裁を大きく欠いた出来事……!
そう、不祥事案件! 私利私欲物の、公私混同の職権乱用に当たるものだったわ!!
本来なら、進むはずだった道を、閉ざされる人だって、中にはいるもの!
そうやって、何度も、何人もの人たちが、希望していた求人の道を、閉ざされてきたのよ……ッッ!!
他ならない、イリヤマ先生達の悪政の手腕によってねッッ!!
そんな事が明るみなれば、懲戒免職処分になって、その職業訓練校から、追い出されても、まぁ仕方がないわ……!!
そう、医療と設備管理の袂を分かつ、最悪の不慮の出来事(アクシデント)だったらしいわ……!
その職業訓練校の面子と建前さえ汚したのよ、あんの逝かれ爺はね! フンッ!!」
――次いで、サファイアリーさんが、こう語る。
「――それが、最大の過ちだったらしいわ……。2人は、ここから、大きく人生の下り坂に差し掛かったそうよ……」
その時、ミノルさんが。
「下り坂……!?」
「ええ、ドクターイリヤマの魂胆は、この時は、まだ、わからなかったの……!?
何でこんなひどい事ができるのかってね!?
先生達の中でも、その教職員の人の道を踏み外していたのよ」
「……教職員の、人の道……」
それに対して、サファイアリーさんが、こう切り返してきて。
「先生とは、人にものを教える立場の人の総称よ!」
「人にものを教える立場」
「ええ、だって、その時、ヨーシキワーカさんご本人には、それを直接言って、取り次いでいなかったもの。
自分勝手な判断で、推し進めていってしまい、
挙句の果てには、その教師と言う立場さえ、危ぶまれてしまっていたのよ。
塵も積もれば山となる言葉があるでしょ」
「ああ、あれか……」
「そう、タカハシ先生達が、それ事前に察知していて、どの教職員さん達も、回してたわけよ」
「……」
「そして、そんな怪しい会話さえ、聴こえてしまっていた……」
「……」
もう、地獄耳である。
サファイアリーさんは、こう語り部を続ける。
「後になって、それが明るみになれば……。
それは火を見るよりも明らかで、最悪としか形容し難いものだったの……ッッ!!
そりゃあそうよね!? 本来なら、その人の手元に届くはずだった免許の話を取り消して、別の人に持たせたんだから……!!」
そこへ、ミノルさんが。
「それが、タチバナさんなんだな!?」
「ええ、そうである可能性があるってだけよ!? それはタカハシ先生の話の中にも、それとなくあったわよね!?」
それに対して、ミノルさんは、こう呟きを落として。
「お前が気に入った、お気に入りの生徒か、優秀かぁ……。……なんだかなぁ……!?」
という思いで、不承不承だったわ。
サファイアリーさんは、こう語り部を続ける。
「そして、この日を境にして、その運命の歯車が大きく巡り出し、
今まで積み立ててきた暴挙が、明るみになっていったんだから……!
そう、取り次いだ先が、ドクターイリヤマだったから、こいつは気に入らない生徒を堕とす、
問題の行動のやけに多い先生で有名だったの……!!
俗に言う問題好きの先生ね……」
とここで、クリスティさんが、エメラルティさんが。
「あたしが嫌いなタイプだわッ!」
「あたしもねッ!」
★彡
【職業訓練校、9月】
【(続)消防免許の取り消し】
【第一種消防設備(スプリンクラー)、その配管のネジ切り中、消防免許の取り消し、運命の巡り会わせ、後戻り不可能地点】
【――それは、あの電話会談の後だった――】
『――イリヤマ先生、何だってこんな事したんですかァ!?』
そう、食って掛かったのは、ライセン先生だったんだ。
だが、これを一蹴して見せたのは、イリヤマ先生だったんだ。
『チッ! 別にいいんだよそんな事は!』
『えっ……!?』
『体育会系寄りのブラック会社だ』
『体育会系寄りのブラック会社……』
そんな会社があるのか……? そこには疑問に思うライセン先生(僕)がいたんだ。
イリヤマ先生は、こう告げる。
『ああ、だからか、信じらないほど人が辞めていくんだ……。
パワハラか何かか……!? 謎の病が、なぜか流行していてな……!?
その詳細はこっちでも不明なんだ……。どーゆう訳かすごい人が抜けていって……』
『……謎の病……?』
『……』
その詳細は何もわかっていない。
一種の謎だったんだ。
『でも、何でですかね?』
『さあ、そんな事はちっともこっちの方はわからん。
ただ1つわかる事は、その会社から、信じられないほど人が辞めていく現象が相次いで起こっているという事だけだ』
『あぁ、なるほど……だからかァ!?
このうちの方の学校に学びにきて、どーゆうわけか、ここを出て行った日の後からは、
変な問題事が度重なって起こってからは、その会社に呼び戻されていくんですね!?
でも、何だってそんな事が平然と起こり得るんですか!?』
『……』
ジロリ
と睨みつけてくるイリヤマ先生。
これには、僕を推しても。
『うっ……』
と次の言葉が詰まる思いだったんだ。
『ハァ……お前は何年間、ここの教職員として立場で招かられているんだ!?』
『えーと。それはあそこの職安の職員さんの間を通して……!?
あっまさか……、……だからかァ!? あんなに呼び戻されていたのは!?』
『フッ……』
(勘がいいな、ドクターライセン! さすが、俺の右腕だな!)
『……』
(そうだ! どれも職安を通している事例案件なんだ! そうした職安さん達による、悪政の手腕の見せ所なんだ……!?)
視線を絡ませ合う両雄。イリヤマ先生に、ライセン先生。
『……』
『……』
(そうか……!? だからかァ!?)
僕は、ここから見える、あのドアの向こうを見たんだ。
過去を思い起こしながら、この言葉を告げる。
『だからか……あそこのドアを出て行った先で、『叫んだり』、『人や物に当たり散らしたり』、『ここのものを荒らしたり』して。
その人の周りで、何だかおかしな事態が相次いで起こり、『情調不安定』になっていくのは……!?
その人が『死んで』みたり、『持ち家や財産を失っていた』のは……!?
そうしたご家族さんすら、どーゆう訳か死に目に……!?』
フッ……
とそこには、怪しい笑みを浮かべるイリヤマ先生がいたんだ――
『――『損害賠償責任』『報酬』というやつだ!』
『……』
『それが幾らかは、俺達の『懐にも入ってきてたりもしていた』だろ!?』
『……』
(やはりか……。あの訓練生たちは死に目に会い、そうした証拠の品々さえ揉み消されていて、
その人も、親御さんも、御兄弟さん達も憂い目に会い、死に目に会い、
持ち家や財産などを失い……。
そして、僕達の懐を潤すために……。
本校の借り入れの借金を、その回収計画のための糧になって、礎になっていって、終いに……ッッ)
それは、最悪だった。人として、人の道を外した倫理的観点だったッッ。
イリヤマ先生は、こうキツク、注意の声を掛けてきて。
『オイッ! お前はその話は、黙っていろよ!? こっちとしてもいろいろと言っていて、立場上マズイんだからな!?』
『……わかっていますよそんな事は……!』
(いいところ、犯罪者の片棒を担いでますよ……もう)
ハァ……
とドクターライセン(僕)は、溜息を零したんだ。
『……でも何だって、そんな事が『平然と起こり得る』んですかね!?』
『……』
ドクターイリヤマ(俺)は、過去を思い起こしつつ。
『……』
この眉間にシワを刻んでいく。
ヤバい、事例が多過ぎた。何なんだこれ!? だが、その中でも、一際多いのは、女の数だったんだ。
『ホラッ、いるだろ、あの娘(こ)が!?
電話伝いで取り次いで回って、訳がわかんないようにしてくれたあの娘(こ)が……!?』
気づけば俺は、眉間に脂汗を溜め込んでいたんだ。……あの女を怒らせたら、後が恐い。
『あぁ、いましたね……』
あぁ、あの女か……。思い起こすは。……あっ、ヤバい、数が多過ぎる。それは、複数形だったんだ。
そうとは知らず、イリヤマ先生は、こう独白していったんだ。
『で、周りから嫌になるくらいにハメて、『本人が謝りに行ったところ』で、『散々な目に会わせた』んだからな!?』
(本人が謝りに行って、そこで散々な目に合わせた!? そうなるように仕向けるために、周りから、嫌になるぐらいにハメて言ってて!?)
『……まぁ、あれは、こっちとしても、後味が悪いからなァ……!
以前に受け持った俺の生徒なんだし……。
入れ替わりで、、あいつを戻してやろうと思ってる……!!
こんなタイミングなんだしな……!?
本人にもそれとなく伝えて、それなりにあいつを使わせてやれ……ってな!
ちょうど、ここにあれを学んでいるし、本人としても、それくらいでいいだろ!?』
『ヒドイ人だなぁ……!? 『本人にそれを聞いていない』のに、『こっちで勝手に決めつける』もんですね!?
大丈夫なんですか――ッ!?
これが周りに取り次いで回って、本人たちの耳に、もしも、入りにでもしたら……メチャクチャ怒りますよォ~!?』
『チッ! いいんだよ!! 『そーゆう会社』なんだから……!!』
『えっ……!?』
『体育体系寄りのブラック会社だ……! だからか、なぜか従業員たちが、信じられないほど辞めていって……!?
パワハラか何かか……!? 謎の症状が、なぜか流行していてな……!?
その詳細は、こっちでも不明なんだ……』
『『また、その話』なんですか……!?』
『……』
また、同じ話が戻ってきたんだ。2回目である。
ライセン先生は、こう語る。
『いったい何なんですかね……!?』
『さあ、そんな事は、ちっともわからん! こっちの方は何もな……!? 聞いとらんけんな! 何もな!?』
『また、そうやって、話をはぐらかせるんですもんね!?』
『……』
(また、周りにそうやって、ウソをつきまくっていって、
僕達、教職員全員が、頑なにその口を閉ざして、言い繕う流れなんですよね!?
前回、ここを出て行って、再び、入行してきたあの人も、それを知ってたぐらいなんですからね!?
いいところ、これ、汚職ものですよ!?)
フゥ……
と嘆息し、ライセン先生は、こう語るものだった。
『また、そうやって、『何もやっていない人』であっても、『罪なりなんなり着せてる』ですもんね!?』
(それわかってます~~ゥ!?)
『……』
『いつかは、こんな話周りにもバレて、捕まりますよ? イリヤマ先生(俺達)!!』
『……』
ダラダラ
と脂汗が、顔中から流れるものだった。
『だから、こっちの方も、色々と手を尽くして、結構遠くの方の方々まで、掛け回って、こんな手の込んだやり方をやっていたんだろうが!!』
『……』
(舐めてとやお前、ホントッ!?)
(いいところ、同罪なら、僕が証言台に立って、あなたの罪重さを暴露して、明かしていけば……。
最終的に、罪が重いのは、いつも、あなたなんですからね!?
そこんところだけ、それ、わかっていますか!?)
★彡
【カジノ】
そのクリューソスさんの話を聞き、僕達、あたし達、私達は。
う~ん……
と考えさせられるほどだった。口をついて出た言葉は――
『――あのさ、謎の病……ってなに?』
そう言ってきたのは、サクヤさんだったわ。
それに対して、クリューソスさんは。
『わかりません……』
『え……?』
『その謎の病の正体は……皆目見当もつかないのです』
『そっか……』
この時は、まだ、過去であり、答えは、この時出ていなかった。
それを知っているのは、トヨボシとLだけだった。
(あれ? これって……!?)
(僕達、もう知ってるよねぇ……!?)
(……)
これには、トヨボシを推しても。
(黙ってよう……。だって、あれが明るみになっていくのは、御兄さんが書き物を遺していて、それを知っていた経緯だもんなぁ!?)
(それが一番いいよね!?)
(だいたい、何年後ぐらいだっけ!?)
(えーと……。ミシマさんに関わった年が今だから、0年目として、
小説公開年で1年目、
領収書が見つかった年で、2年目だから、だいたいそれぐらいじゃない!?)
(早くて、2年か……。キッツいだろうなぁ……御兄さんも!?)
(僕達は、協力してあげるだけで、答えまでは、教えられないからね……。自分の力でやり遂げないとね……)
(……)
これには、トヨボシを推しても、嘆息するしかなかったという。
未来人とは、そーゆう掟もの規則があるのである。ズルはなしである。
(まぁ、人の生き死にが関わった場合は、『特例法に基づき別』なんだけどね……。歴史的重要人物だとかね……)
(あの御兄さんが、その特例法に当たるかどうかなんだけどね……)
――歴史的重要人物の場合、その特例法に基づき、延命措置、という特別枠が控除されているのである。
それは、アサヒさんからの問い掛けだった。
『それは、どう言ったものなんですか!?』
それに対して、クリューソスさんは。
『あぁ、何でも聞き込んだ限りでは、肉体労働や深夜労働もそうなんですけど……。
なぜか、1週間ぐらい働いただけで、突然になって、止めていく人達もいるらしいのですよあそこ……!?』
『えっ!? 1週間で!?』
『はい、1週間から2週間の間で、です』
『ええっ……!?』
これには、アサヒさんを推しても、驚嘆の思いだったわ。
クリューソスさんは、こう語る。
『あぁ、辞めていったのは、適切ではありません……』
そこへイチハ様が。
『どーゆう事や!?』
『熱です』
『熱!?』
『はい、37度から38度以上の高熱を出して、寝込むようになっていったんです。
その深夜の内に、トイレの中に駆け込み、嘔吐、吐しゃ物を吐き出したらしくて、一時期、呼吸困難になったらしいです。
で、翌日、急になって、寝込むようになり。
全身の筋肉がこわばり、節々の痛みを訴えるようになっていったんです。
舌の味も、だいたい、その時ぐらいになって、薄く感じたそうですよ』
『病気か!?』
『可能性はあるかと……!?』
『場所は!?』
『箱洗いだけじゃなく、食パン、スナックサンド、ドーナツ、菓子パン、パンケーキラインとどうやら幅広いらしいですよ。
原因の特定は、困難を極める……かと!?』
『謎の病の流行年は!?』
『さあ!? 30年以上前から、ずーっと続いていて、時折、急になって、突然して発症するケースらしいですよ』
『アカンわぁ……それ……激ムズや……。
どこから、手を付けて行って良いのかすら、ようわからん……』
『ホホッ、ですね!』
その原因は、答えを先に言えば、パンのイースト菌酵母によるものの原因であった。
完全な盲点である。
★彡
【職業訓練校、9月】
【(続)消防免許の取り消し】
【第一種消防設備(スプリンクラー)、その配管のネジ切り中、消防免許の取り消し、運命の巡り会わせ、後戻り不可能地点】
――イリヤマ先生は、こう呟きを落とす。
『――俺の所に入ってきた情報によると、また、ウェーブグローバルの口コミなどを見ていくと、信じられないものが浮き彫りになっていく……!』
『ウェーブグローバルの『口コミ』……ですか!?』
『あぁ、それは自分で調べてくれ……!』
フゥ……
これにはドクターライセン(僕)も、嘆息し得る思いだ……。
(どちらにしろ、こっちが知るには、ウェーブグローバルの口コミしかないようだ……。
きっと悪い情報(もの)が、そこに書かれているのだろう。
どうせ、また、『2チャンネル』とか、『5チャンネル』とかの、サイトだろうな……。
あそこには、表には書かれていないような、匿名希望ものの、裏の入り口のネット掲示板として、有名どころだからな……。
月見エビバーガーオーロラソース社のものも、そこに書かれていただろうし……。
後で、調べてみようかなぁ!? ……とそうだ!)
ライセン先生は、ある事を思いついたんだ。
『……確かヨーシキワーカさんは、どこかのパン会社に勤めてたんでしたよね……!?』
『あぁ、間違いない!』
イリヤマ先生も、それを認めるところだ。いったい、どこのパン会社なのだろうか……。
後で人の噂話や、ウェーブグローバルの口コミ等で調べてみるか……。
フムゥ……
と考え加減のドクターライセン。気になるその会社の所在地等は、一切不明である。
威力営業妨害に成り兼ねないからだ。
だから、名前だけは控えさせていただく。っつーか変える。
『……! 周りには黙ってろよ……!?』
『……』
とりあえず俺は、こいつに釘を差しておく。
これにはライセン先生(僕)も、嘆息してしまう。
『こんな悪い事周りに知れたら……。それこそ僕達はホントに、『懲戒免職処分』ものですからね……!?
きっと、タダじゃ済まされませんよ~ォ!?』
『……』
それがわかっているからこそ、イリヤマ先生は、こいつに、こうして釘を差してきたんだ。
だから、周りには絶対に言えないのだ、絶対に周りに漏れしてはいけない……ッ。
『何だ良くわかっているじゃないか……?』
『……ッ』
その話を聞いて、ドクターライセン(僕)は、嘆息する思いだ。
(何を当たり前のことを言っているんだか……この人は……!? そんなの僕だって、今の地位は惜しいんだから……ッッ!?)
そう思う僕が、心の中にいたんだ。
次にイリヤマ先生の口が開き、こう告げてきたんだ。
『……聞いた話じゃ、今、あの子が抜けた会社で、今、大変な事が起こっているとぞ……!?』
『大変な事ォ……!?』
『あぁ、わかっている限りでは、会社の負債金が1000万円(75,758米ドル)だそうだ!!』
1ドルは132円であるからして、
75,758ドルは1000万円に等しい。
正しくは、75,757.57米ドルである。
円とドルの簡単な計算方法は、10000000÷132=75,757.57となる。
ちなみに、月単位で、200万円の損失額だとして、
ヨーシキワーカは、3月中に、退職願届から、退職届を出しており、
さらに、ほぼすべての有給休暇を使って、長期の休みを取っていたのだった。
月見エビバーガーオーロラソース社を辞める、その日まで。
つまり、4月から数えた方が早く。
4月で200万円。
5月で400万円。
6月で600万円。
7月で800万円。
8月で1000万円。
9月で1200万円。だから、この8月中の報せが、舞い込んできてたものであっていた。
だが、この事を知らないドクターライセンは、ただただ、驚愕するばかりであったとか。
『1000万円(75,758米ドル)――ッ!!!? え――っ!? なぜッッ!?』
『わからん!! とにかく下の連中の方で何かがあったらしく、
現場が混乱して、どう動いていいのかわからず、上手く以前のように働いていないだそうだ……!?』
『……』
『これは俺の勘だが……。今あそこにいるあいつが、どう考えてみても怪しい……!?』
『……』
俺は、僕は、今あそこにいるヨーシキワーカさんのそうした配管切りの様子を見ていたんだ。
そして、イリヤマ先生は、その視線を切り、僕の方を見てきて、こう言ってきたんだ。
『……お前も、『前』に、聞いただろ!?
『ヨーシキワーカ君をどうにかして、こっちの方に呼び戻してください』
――と! 何を甘えた事を!! きっとあいつが、中で何か悪さをしたに決まってる!!』
『……確かに……!? 僕が同じなら、何かしたかもしれませんね……!?』
『絶対にネズミの尻尾を掴んでやる……!!』
そして、人知れず、何も知らないまま、ヨーシキワーカたちは、配管を切り、それらを組み合わせ、加工していったのだった。
★彡
【カジノ】
――クリューソスさんは、こう語るものだった。
『――とゆう事があっていたそうです』
それに対して、トヨボシが。
『それは、9月の時点で、1000万円(75,758米ドル)の赤字利益だったのか!?』
『はい』
『なるほどなぁ……。じゃあ、200万円で割っていけば?』
『200万円で!?』
『ああ、きっとこうなる!!
4月で200万円。5月で400万円。6月で600万円。7月で800万円。8月で1000万円。
で、その9月の時、その8月の頃の赤字の売り上げ利益の損失額が、飛び込んできてたんだろ!?』
これには、イチハ様も、『ヒーフーミーヨ―ゴー……』と指折り数えていて。
『あーーッ!? 確かにあっとる―ッ!?』
『答えを先に言えば、ただの人材不足のせいだ!!』
これには、一同、驚愕ものだった。
そのトヨボシさんの心の内は。
(10年間勤めていた大ベテランさんの人員補充の抜け穴は、意外とどこも手痛いものだからな……。
新人社員さん程度じゃ、誰も埋め合わせが利かなかったんだろう……)
詰まるところ、ただの人手不足のせいだった。
『一応、断っておくが……。
3月ぐらいから、その人は、長期の有給休暇を取っていて、
月見エビバーガーオーロラソース社を辞める4月まで取っていたらしい。
本来、有給休暇とは、労働基準法で言えば……。
『一定期間勤続した労働者に対して、付与される『有給休暇』の事であり』
『心身の疲労を回復し、ゆとりある『社会生活保障』するために目的とされている法的制度である』
『有給休暇は、労働基準法によって定められた制度であり』
『どの企業であっても、その要件を満たす、労働者に対しては、付与する事が義務付けられているのである』
――違うか?』
『ホホッ、確かに……』
『つまり、有給休暇期間中は、休みをもらっていて、私用のための目的として利用してよく、お金ももらえる美味しい制度って事だ!』
『……』
『つまり、あの人は、借金を負っていない!!』
これには、クリューソスさんも。
『……』
イチハ様も、アサヒさんも、サクヤさんも、驚き得るものだった。
『……』『……』『……』
トヨボシさんは、こう言わしめる。
『後、これは、俺の勘だが……。その消防資格試験を受けた当日、彼は、その有給休暇を使っていたのではないのか!?』
『当たっていますね……』
『それを落としたら、非情にマズくないか? 法的裁量に基づいていけば、返ってやられるのは、どこだ!?』
『ホホッ、月見エビバーガーオーロラソース社をですわね?』
『そうだな。しかも、職業訓練校時代は、普通に休みの日で、落とされていたんだから……!?』
『ホホッ、返ってやられていきますわね……』
『だ、そうだ……!?』
これには、イチハ様、アサヒさん、サクヤさんが、ポカ~~ンとしていたのだった。
だが、Lだけは別で。
(このバカ、助けるにしても、今じゃなくてもいいだろ!?)
(あれ!? 俺って、非情にマズイ事やっちまった……!?
……まぁ、本人にさえ、後で取り次いでいった流れで、伝わればそれぐらいで、別にいいだろう!?)
【――これは、後日談だが……。その後、親戚の姉を通して】
【あそこの会社の中身は、ただ、単純な理由として、人材不足のせいだった……とかで噂が立っていたのだった】
【そして――】
(これだけは、その御兄さんの手を借りないと、勝てそうにないからなァ……。
仲間のチームワークだけは、守って、その御兄さんと協力していかないと負けるからなぁ……)
(あっ、そーゆう事ね……)
それは、以心伝心により、トヨボシとLの心が、通じ合っていたものだった。
あの例の組織に打ち勝つためには、そのヨーシキワーカの手助けが必要なのであった。
TO BE CONTINUD……