4.俺はスケルトン、そしてここは『すっごい娯楽施設 スケルトン』
リルと歩いているとちょくちょく声をかけられ、何があったか聞かれたため。ジュラルドさんですと答えると、皆『ああ』と言って、すぐに納得してくれた。何かある=ジェラルドさんって、どれだけみんなにそう思われているのか。
『ねぇ、スッケーパパ。今日はお外のお風呂入る?』
『露天風呂に入りたいのか? 良いぞ』
『やったぁ。おもちゃも良い?』
『ああ。でもみんなに迷惑がかからないように、少なめにしておけよ』
『おっもちゃ、おもっちゃ♪』
分かってるのか? まぁ入りに行く前に、チェックすれば良いか。俺の骨もあるし。
みんなに大人気のこの施設の露天風呂。リルも露天風呂で遊ぶのが大好きなんだ。よくおもちゃを持って入りに行く。
そんな露天風呂があるこの施設だけど。ここは俺が経営している、その名も『すっごい娯楽施設 スケルトン』という施設だ。
そして施設名に入っているスケルトン。あれは俺のことを表していて。そう、俺は魔物のスケルトンなんだよ。魔物のスケルトンが施設を経営? と思われるかもしれないが。
話しは5年前に遡る。5年前まで俺は、ただのスケルトンとして生きていた。だがある争いに巻き込まれ、その時の魔法攻撃が俺を直撃。
その魔法攻撃に、最初は消えると思っていた俺だったけれど、何故か俺は消えることはなく。それどころか俺は自分の前世を思い出したんだ。
俺が今いる世界は、ライトノベルで読むような、異世界の世界で。でもその前は、地球の日本で、社畜として働いていた。そして働き過ぎによる疲れがピークに達し、フラフラと線路に落ちてしまい、電車に轢かれて……、ということを思い出したんだ。
いやぁ、次の人生が、まさかスケルトンだとは思わなかったよ。人間でもなく獣人でもなく、どんな種族でもなく、骨だけのスケルトンだぞ?
まぁ、でもスケルトンとはいえ、せっかく生まれ変わったのだから。スケルトンが生きていると言えるか分からないけど……。
それでも生まれ変わったからには、今度こそ仕事に追われず、楽しく生きようと考えた俺。早速ある街へとやってきた。
実は俺が巻き込まれた争いは、魔王と勇者が作った街へ、他の国の連中が攻撃しようとしたもので。魔王や勇者達の関係者に、攻撃してきた連中が、返り討ちにあい。その時のお互いの攻撃に、俺は巻き込まれたんだよ。
7年前までは、世界の人々は魔王を魔族を滅ぼそうと、魔族は他の種族を滅ぼそうと。長い長い戦いを続けていた。それはそれは何千年とだ。
しかしそんな長い戦いに、ある変化が生じ。かなり長い間戦っていたため、人々の代表だった勇者や勇者の仲間は代替わりをし、魔王の方も3代目の魔王が誕生したんだけど。
この3代目魔王と勇者が、歴代の魔王と勇者とは違う考えを持っていて。なんと魔王と勇者のこの2人。どちらかがどちらかを滅ぼすのではなく、争うことをやめ、皆が幸せに暮らせる世界を作れば良いのに、という考えだったらしく。
そんなことを考えながらも、仕方なく初めて対峙していたのだが。お互いの理想を知るきっかけになる大きな戦いがあり。その時に2にはお互いの考えを知ることに。
そのためその場で戦うことを中断。その後2人はそれぞれの仲間に自分達の考えを伝え。手を取り合うように伝えた。
最初どちらの仲間も、かなり驚いていたと。それはそうだろう。小説だって魔王と勇者は敵同士って、それが当たり前だからな。俺も驚いたし。
だけどみんな何となく、2人の気持ちを分かっていたみたいで。すぐに仲間達は争うことをやめ、手を取り合おうということで決まったんだ。
が、もちろんそれを許せない人達がいて。まぁ、それぞれ考えは違うからな。全員が全員、魔王と勇者の考えの賛同出来るわけもなく。賛同できない人々の方からも魔族からも、魔王達と勇者達は攻撃を受けることに。
しかし、ここは魔王と勇者と2人の仲間達。面倒な敵対する相手を、ささっとほんの数秒で追い払い。そしてどうせ敵対されるならば、とりあえず自分達と同じ考えを持つ人々がゆっくりと暮らせる場所を作ってしまえと。
危険な魔獣しかおらず、誰も住んでいなかった、大きな街が余裕で6個は入ってしまうような広大な森に結界を張り、本当に街を作ってしまったんだ。
勿論最初は小さな街が1つだったけど。そのうち魔王と勇者、2人の考えに賛同する者達が集まり。俺が記憶を取り戻し、この街へ来た5年前には。森の中心に魔王と勇者が住んでいる大きな街が1つ、周りにそこそこ大きな街が3つできていた。
そして最初は何となくここへきた俺だったけど、まさかここにずっと住むことになるなんて、しかも経営者になるなんて、あの時は考えもしなかった。