11話 科学のチカラと異世界到着
「
ヒデヨシが背中にオーラを集中させていく。
ちなみにヒデヨシの日本語訳はデウスによるもので、デウスいわく『原作に忠実なのが1番』とのこと。なので口調やセリフに改変や翻訳の遊びは入っていないとのこと。
『……あっ、ヒデヨシ! 全員くるぞ!』
ヒデヨシのパワーチャージ中を狙ってか、操られたプルマルの集団が一斉に押し寄せてきた。
ただ、ミツメオオカミ=ラードロが後ろで待機しているところを見るとこの行動はあくまで様子見。ヒデヨシにダメージを与えるよりも、ヒデヨシがどんな動きや強さか測るのが目的なのだろう。ミツメオオカミ=ラードロにとってプルマルはただの
「
背中の模様が発光して浮かび上がると、オーラの翼に変化してヒデヨシを浮かび上がらせた。
──ギュォオオオ!!
そして、不規則な動きで襲いかかるプルマルのアンテナを、ヒデヨシは正確に、しかも瞬く間に切り裂いてしまう。
「──
他の敵を全て片付けたヒデヨシは、ミツメオオカミ=ラードロをロックオン。
「グルルルルル……! グオオオオ!!!」
ミツメオオカミ=ラードロは雄叫びを上げ、胸の赤い宝石から禍々しい邪気を解き放つ。ヒデヨシのことを危険だと判断し、次の一撃で即刻排除する作戦に変更したようだ。
『次に全てを賭けるみたいだぜ! 油断するなよヒデ…………っていねぇ!?』
デウスがヒデヨシに声をかけようとするが、とうのヒデヨシはすでにその場におらず。
「
「グルル…………グルァ!?」
口から邪気のブレスを吐こうとしたミツメオオカミ=ラードロだったが、チャージ中にヒデヨシはふところに入り込んでしまう。
「
ヒデヨシは前足から放たれた閃光が赤い宝石に触れると、ミツメオオカミ=ラードロは石にでもなったかのようにその場で行動停止。
次の瞬間、内側から光があふれ出してミツメオオカミ=ラードロの禍々しい身体は破裂するように崩壊した。
「わお────んっ!」
そして崩壊した身体の中から、つぶらな瞳の2頭身オオカミが元気よく飛び出した。本来の姿のミツメオオカミだ。
ミツメオオカミは牙こそ鋭いが、一般家庭でも飼われてたりするくらいポピュラーで弱いモンスターである。ちなみに弱気で臆病なので番犬としてはあまり期待できない。
『す、すげえ! 信じてなかったわけじゃねえが、こんなにアッサリ邪神軍の手下を浄化しちまうなんて! しかも無傷! メーシャのママさんとパパさん天才か!? 天才か!! 』
戦いを見ていたデウスはハイテンションで大盛り上がり。もし身体があったら小踊りしているところだろう。
「ちうっ!?」
デウスが騒いでる間にヒデヨシは新たなスキルを手に入れていた。詳しくはまだ分からないが、"ブレス攻撃"ができるようになったようだ。
もしかすると、倒した邪神軍の性質によってナノマシンがそれに応じたアップデートをするのかもしれない。
『……いやぁ、いろは家でマジで良かった。てか俺様って恵まれすぎじゃね? メーシャのチカラへの才能はもちろん、パパさんとママさんの技術力、それを活かすヒデヨシの適応力……。最高の布陣すぎるぜ 。もう祝杯あげちまうか!?』
「──それは流石に気が早いんじゃない? そういうのは最後にとっとこうよ」
デウスがゴキゲンでぺちゃくちゃ喋っていると、たしなめつつも嬉しそうな声が近付いてきた。
「
『……メーシャ!? おお、無事だったか!?』
「とうちゃ〜く! おまたせだしーっ!」
待ちに待ったメーシャの登場だ。
「ヒデヨシ大丈夫? 危ない目にはあわなかった? デウスは上機嫌だけど何かイイことでもあった?」
「
メーシャの姿を見てヒデヨシは嬉しくなったのか飛び跳ねながらメーシャに駆け寄った。
『ヒデヨシってばメーシャのいない間に大活躍でな、めちゃくちゃカッコよかったんだぜ! って、メーシャはなんで遅れたんだ?』
「ああ、それはね──」
メーシャはヒデヨシを肩に乗せると、転移ゲート内で起きた事や謎の声、その声が話してくれたことを説明した。
● ● ●
『──なるほど。現段階では完全に信用できるかは判断できねーが…………まあ、少なくとも同じ敵を持つもの同士で協力関係を結びたいってのはスジが通ってるか。あのオーラも邪悪な雰囲気はなかったし、俺様としても仲間が増えるのはありがたい』
「良かった。もし敵だったら悲しいもんね。それで、宝珠とかドラゴン=ラードロってのは?」
『まず宝珠はふたつあってな。……魔法を使うのに必要な魔力や、生きるのに必要な生命力、そしてそれらの源である
「マナっていうのを原料にして魔力とか作られてんのね。んで、そのマナって宝珠からだけしか生み出せないの?」
『いや、マナは世界中にあって、基本的には星が生み出してることが多いな。地球もマナは生み出してたな。魔力に変換はされてないみたいだけど』
「ふーん……。じゃあ、変換さえできれば地球でも魔法が使えるのか」
『そうだ。メーシャみたいな特殊な状況でなくともな。…………それで、ふたつめは"地の宝珠"だ。これはエネルギーやチカラを制御したり、存在の定着、安定化ができる。
つまり、天の宝珠があればある程度のチカラを使うことができて、地の宝珠があれば俺様は身体を取り戻せるってわけだな。
ちなみに、どっちも強いチカラを持ってるが、ふたつが合わさればより強大で、龍神ウロボロス本来のチカラを引き出すことができるんだ』
「えっ、ちょっとまって! じゃあ、その宝珠を持ってるドラゴン=ラードロってマジヤバの強さになるんじゃね?!」
神社や龍脈などでエネルギーを増やしたとは言え、メーシャのチカラは『宝珠を抜かれたウロボロスの
『……正直、マジヤバの強さなのは確かだろうな。でも大丈夫だと思う』
「ちう?」
メーシャの肩の上で話を聞いていたヒデヨシが首をかしげる。
『チカラの適合率で言えば、メーシャは俺様自身に匹敵すると言っても過言じゃねえ。どこぞの馬の骨……ドラゴンだからトカゲの骨か?
まあ、そのトカゲが俺様のチカラを制御しきれるはずがねえんだよ。どっちの宝珠を持っていたとしても大幅に出力が下がってるのは間違いない。
だから、メーシャがしっかりチカラの使い方を学んでいけば、いくら元がスナック菓子の残りカスみてーな少ないチカラでも勝てないことは無いはずだ』
デウス……ウロボロスが邪神軍と戦って勝てなかったのはあくまで邪神ゴッパだけだった。ゆえに、それに匹敵する才能のメーシャであれば幹部クラス相手にも渡り合えるポテンシャルがあるということだ。
「……そっか。じゃあ、努力不足で負けたなんてことにならないよう頑張んないとだね!」
『おっ、やる気充分だな! そんなメーシャに朗報だ。……この国の名前は"アレッサンドリーテ"。邪神軍幹部の一体、ドラゴン=ラードロの根城がある国だ……!!』
「ここが……!?」
緑が生い茂る豊かな平原、魔法のトラップがひしめく古代遺跡、多くの生物やモンスターがひそむ霊峰、結界に守られた城塞都市、そして天然の岩壁に囲まれた古城。そう、ここがアレッサンドリーテ。 メーシャたちがこれから冒険する大地だ。