第6話 あの娘にリベンジ
今日の
休み時間の度にまだ提出していないクラスメイトに話しかけていく。クラス全員の名前を覚えていない
まだ教室内は人間関係がぎこちないので学級委員に話しかけられて無下にするような者はいない。永は立候補で学級委員になったので「やる気あります」という雰囲気を全面に出してクラスの覇権をとろうとしている。
高校では最後まで本性がバレないといいと蕾生は思うが、多分無理だとも思っている。よくやるなあと感心しながら永を眺める一日が終わろうとしていた。
「ブツは揃ったぜ」
全員分のプリントの束を蕾生の目の前でビラビラとさせながら、少し低めの声で永は自慢げに言った。
「そうか、ご苦労さん」
「──ノリが悪いな!」
悪いもなにもどう乗ってやればいいのか、アニメもドラマもあまり見ない蕾生はよくわからない。
「まあいいや、漫才がしたいわけじゃないし。昨日の打ち合わせ覚えてる?」
永の問いかけに、蕾生は昨日帰り道で話したことを思い出しながら口にする。
「ええと、まずそれ持って話しかける、お前がポケットから
口で言うのは簡単だが、そんなにトントン拍子に行くことがあるだろうか。蕾生は改めて不安になった。
「大丈夫も何も、下手な小細工せずに真っ向勝負だって言ったのライくんでしょ」
「まあ、そうだけど」
「僕の調べでは、
その性格を利用して土下座でもするんだろうか、と蕾生は想像して、見たいような見たくないような複雑な気分になったが、永は鼻息荒くとてもやる気になっているので、なんだかんだをひっくるめて二言だけ言う。
「わかった。がんばれ」
「そこは頑張ろうでしょ!」
永は蕾生の腕を掴んで教室を出た。
壁を一枚隔てただけなのに、隣のクラスは別世界のような違和感がある。二人は入口付近で控えめに中をうかがった。
「いるかな?」
「──あ」
銀騎星弥を見つけたのは蕾生の方だった。するとその視線に気づいたのか彼女の方も蕾生を見定めて席を立ち、こちらへ向かってくる。
「
早足で息を弾ませながらやってきた彼女の雰囲気には悪い印象など微塵も感じられなかった。人当たりの良さは完璧だと蕾生は思った。
「ごめんね、遅くなって」
「ううん、全然。ありがとう」
にっこり笑った笑顔には見返りを求めない純粋さがあり、その対象に安心感も与える。永調べの「好感度ぶっちぎり」というのも頷ける。
「じゃあ、これよろしく……」
永は紙の束を彼女に渡そうとしつつ、その一番下に潜ませていた用紙を床に落とした。
「あ、ちょっとまって、一枚落ち──?」
「あ、ごめん、違うのが混ざってた!」
いささかわざとらしい声音で言う永は、その落ちた用紙を拾わない。
「これ、うちの研究所のパンフレットだね」
代わりに銀騎星弥がそれを拾い、正体に気づく。少し声の調子が落ちた。
「そうそうそう! この前、見学会に僕達行ったんだ」
獲物がかかった、というような弾んだ声で永は想定通りの台詞を言った。