メアリーの失態
皆が空気を読めないメアリーを睨み付けた。
「愛人の子だったなんて!アンジェリーナ様とまた婚約してもらったら?」
そう言いながら私を見て笑うメアリー。
メアリー・ルークスは学園に入学してからずっと何かと私に絡んできた。私に婚約者がいると分かるとすぐにオーウェンに近付いて親密になっていった。彼女に何か気に障った事をした覚えもないし、会話すらしたことも無かったのに何故に彼女はここまで私を敵視するのか理解出来ない。
「貴女に言われる筋合いはないわ、ここからはウィーンズトン家とハミルトン家で話し合いをするので帰って頂けます?」
「なっ!失礼な人ね!私は侯爵様の愛人ではなく正妻になりたいの!」
何言ってるのこの子。
「私が正妻になったらあんたなんか追い出してやるわ!ねぇ侯爵様~私はちゃんとした子を産みますわよ。⋯黒髪じゃない子を」
メアリーはそう言いながら私を見て嘲笑ったのだ。ああ、この子の人生はここで終わったな⋯。
「おい…今何と言った小娘!」
お母様が公爵夫人と双子を部屋から出るように促して、子供達が出ていくとお父様の怒りに満ちた威圧が部屋中にのし掛かる。モール公爵とオーウェンはガタガタと震え冷や汗が止まらない。メアリーはお父様の怒りが理解出来ずにまた墓穴を掘りまくる。
「どうして怒るのですか!?黒髪の娘など恥ずかしい存在ではありませんか!」
「お前のような娘を持つ方が恥ずかしいと思うがな!ルークス家も随分と子の躾を怠ったようだな!」
「そうね、黒髪の事ばかり蔑むけどその考え方はルークス家の考え方かしら?私達は娘を愛しているし自慢の子よ!」
私は嬉しくて自然とお母様の手を握ると、お母様はその手を優しく握り返してくれた。お父様が俺は?俺は?と目で訴えてきたので手を握ると感極まっている。
「貴女はこの不吉な子を産んだ人だから庇うんで…キャッ!」
メアリーが言い終わる前にお母様が思いっきり平手打ちする。お父様も怒りがピークに達している。やばいな⋯。
「私の事を言うのは結構!でも娘をこれ以上侮辱するのは許さないわよ!覚悟しなさいな!」
お母様とお父様の迫力に腰を抜かしてしまうメアリーの頬が腫れ上がっていた。
「モール公爵、この娘を拘束してちょうだいな!」
「はい!勿論です!」
モール公爵がハミルトン家の兵士を呼び、放心状態のメアリーを連行していった。
「ベル、ルークス夫妻を連れてきて頂戴。公爵いいですね?」
「はい、うちの息子も被害者ですので!」
ベルは悪人顔負けの顔で頷くと一瞬で消えた。ベル!貴女は一体何者なの!?
そういえば公爵夫人が言っていた爆弾発言を思い出した。オーウェンが公爵夫人の子ではないって言ってた。じゃああの双子は?気になるけど今はルークス家の事を解決しないといけない。
この気まずい空気の中でルークス夫妻を待つ。モール公爵はこの重苦しい空気に耐えられず顔面蒼白で今にも倒れそうだ。
暫くすると執事がルークス夫妻が到着したと報告にきた。
「と…通せ!」
さぁ、どうなるかな。