第3章の第106話 どうしようもない問題33 答えモーター
☆彡
【ポイント4、モーター】
――次の語り手は、エメラルティさん。
「次は何といっても、この問題が始まったそもそもの原因であるモーターね!」
これには、シャルロットさんを推しても。
「モーターですか……機会に備わっているやつですねぇ」
「ええ、ヨーシキワーカさんが、ミシマさんの所に3日間だけ試用期間で行き、そして、フルスさんの所の電気保安管理事務所に行った時から、すべての端を発するわね」
「超・重要ってやつですね!」
「……」
エメラルティ(あたし)は、コクリ、と頷き得る。
「――そのヨーシキワーカさん曰く、自分が在職中に、そのモーターは計2回、入れ替わっていたという話よ!
ここで、誤認しないようにするためには、それは、『乾燥機』の『モーター』から語っていく事ね!」
そこへ、声を投じてきたのは、シャルロットさん。
「乾燥機のモーターからですか!? 何のために!?」
「実は、モーターは『複数台』あって、ヨーシキワーカさんが知る限りでは、
初めの方のアンスタッカー下に1台あって、
流し台のベルトコンベアの下に2台あって、
クルリと反転して、そのまま洗浄機の中へ入って行くところの上に1台あって、
洗浄機下に2台あって、
問題の乾燥機上に大型のモーターが1台取り付けられていて、
最後の出の方のアンスタッカー下に1台取り付けられてあったのよ!
合計8台のモーターを使用していることになってきちゃうわね!」
モーターのある場所
・流し台のアンスタッカーの下部
・ベストコンベアの下部2つ
・クルリと反転して、そのまま洗浄機の中へ流れていくところの上に1台
・洗浄機の下部2つ
・乾燥機の上部に取り付けられた大型のモーター
・最後の出の方のアンスタッカーの下部
とこれには、さすがにシャルロットさんも。
「あぁ……あぁ……それは、何だか、勘違いが起きそうですねぇ!?」
(いや、これ、絶対起きかねませんよ!? 人に聞いただけなんでしょうし……)
そう、人に聞いただけでは、そもそも無理がある話だったのだ。
ほんの少し言っただけで、余計な誤解やトラブルを招くこともあるからだ。彼女は、それを良くわかっていた。
(しかも、ミシマさんは、他業種……。
ちょっと勘がいいぐらいで、他に挙がっていた話と、無理やり話をこじつけてきて、結び付けてきたとすれば……、
あぁ、そーゆう事か……!?)
それが、確信めいていたものだった。
とこれには、エメラルティさんも。
「でしょう!? ミシマさんの話もあるし、まずは、先に、乾燥機に取り付けられたモーターから、進めていきましょうか!」
「はい、わかりましたわ」
【乾燥機のモーター】
――エメラルティさんは、こう語る。
「モーターの交換は、ヨーシキワーカが、在職中の時、計2回行われたそうよ!」
「計2回ですか!?」
「ええ、そうよ! まず初めに、長所と短所から、話していきましょうか!?」
「ホッホゥ! 長所と短所ですか……!」
とこれには、シャルロットさんも、その心の内で。
(なるほどなるほど、そう来ましたかぁ)
「1代目のモーター!
その利点は、ローラーベルトの回転速度が平均的で、
途中で、箱が何かに引っかかっても、機械がそれを途中で、異常だと検知し、止まるレベルだったらしいわ。
さらに、耳栓がいるほどのものではなかったというわ」
「……」
重要なのは、機械が稼働中の時、流れる箱がどこかに引っかかても、機械がそれを途中で、異常だと検知し、止まるレベルだった。
しかも、耳栓は必要ない。
「2代目のモーター!
その利点は、ローラベルトの回転速度が速く、作業効率重視だった事。
その代わり欠点は、途中で、箱が何かの拍子に引っかかっても、機械がそれを異常だと検知し、止まるまでの間に、ずいぶんと開きがあった……。
しかも、その数週間後に、工務の方が騒音計を持ち出して測ったら、それは以前と比べてうるさいもので、騒音管理区分に属するものだった。
それ故に、箱洗いの廊下に『騒音管理区分の立て札』が立てられるほどだったわ。
しかも加えて、耳栓の必要性が迫られるほどで……。
会社から支給される場合もあるけれど、基本は安物で、効果の期待は望めす、薄いものだった……。
だから、自分は、近くのナフコで、耳栓を購入していたそうよ!」
「……」
それが、長所と短所の件よ。
「次に大事になってくるのは、経緯(いきさつ)と経緯(けいい)……」
「経緯(いきさつ)と……経緯(けいい)……」
「一代目のモーターは、月見エビバーガーオーロラソース社の創立記からあったものと思しく、『その機械とセット』ものだった!
その会社は、おおよそ30年前に建てられたものらしく、
その機械に合わせた正規品であり、その平均寿命は、15年から20年ほど。
つまり、そのモーターは、平均的な耐久年数を超えて、稼働していたことに他ならないわ!
それに対して、二打目のモーターは、その途中から、搬入されたもので、安く叩かられたものだったそうよ!
その証拠に、取り付けられた日の始まりの音から、うるさいものだった……!
その一代目と比べてね!」
「……」
大事なのは、一代目と二代目との差別化。
一代目のモーターは、会社の創立記からあったらしく、乾燥機とのセットものだった。会社の設立年は、おおよそ30年前。
二打目のモーターは、途中から搬入されたもので、安く叩かられた商品。しかも、取り付けられた初日からうるさいものだった――」
★彡
【『月見エビバーガ―オーロラソース社』Tsukimi Shrimp Burger Aorora Sauce Company(ツキミ シュリンプ バーガー オーロラ ソース カンパニー)』】
【2代目の乾燥機のモーターが取り付けられた日】
【それは1代目のモーターと比べて、初めからうるさいもので、馬力があってパワーアップしていた】
『以前(まえ)と比べてパワーアップしたぞ!!』
『ああ、だか、なんか口やかましくないか!?』
『……そんなもん大した問題じゃないだろ!? 何もここにいて働くわけじゃなし、動けばいいんだからな!?』
『まぁ、それもそうだな。何かあれば動けばいいんだし……こっちは』
『それもそうだな!』
その工務2人の会話を、ヨーシキワーカが聴いていたのだった。
『……』
――で、しばらくして。
そこは、乾燥機から流れてきた箱が、出の方のアンスタッカーに向かう流し台だった。
『やっぱり、ここの流れるスピードもアップしとるな!』
『あぁ、モーターのパワーが、以前と比べてパワーアップしとるのだろう!』
『これからは、これで、一働きして、稼いでもらわんといかんからな!
こっちの方がこんなに金を出し合って、あそこの会社さんからのあの申し出をあんなに断ってまで、費用を『安く買い叩いた』んだからな!
あそこの会社さんの外注の取り付け工事を、夜間まで夜通しぶっ通し行わせて、ようやく取り付け工事が完了して、できたんだからな!』
★彡
【違法改造されたモーター】
【魔の問題の取り組みは、その会社の誰かが、その責を負うようにして、以前から巧妙に仕掛けられて周って、ハメられていた!?】
――それは、箱洗いにきた工務の方の言葉だった。
『――あぁ、あそこのあのモーターと乾燥機なんだがな。
モーター(あれ)を取り付ける際、ちょうどその部分に納まる感じで、取り付ける訳なんだ。
こう、あのモーターの下に『細長い管みたいなものがあってな。
丁度そこに、納まる感じにもなっているんだ!』
『へぇ~』
『で、なぜ!? その乾燥機の中が熱く温められるかと言えば、
それは、その細長い管を通して、あそこのモーターの中から直接、熱交換されているわけなんだ』
『……フ~ン』
『……『こんな事を考えられる』だなんて、さすがの『向こうの奴等』も、その『できのいい頭で捻ってきた』もんだなぁ!?
こんな事を考えられるだなんて、『普通にどんなに考えても信じられん』事ぞ……!?』
ハァ……
とその内情を知る工務の方は、そうやって嘆息す。
それは、摩訶不思議なやり取りだった。
『……?』
『お前もおかしいと気づけよ、さすがに……!?』
(周りから、ハメられているんだぞ……!?)
☆彡
【以前からでっち上げられていた犯人探しゲーム】
【それは、その悪い企みに気づいてみても、その真犯人と思しき首謀者に辿れなくなっている。とんだ時限式の爆弾だった!?】
――過去から現在に戻り、エメラルティさんは、こう語る。
「――この時、誰もが、モーターの話はしても、
乾燥機の上部に小さな穴が空いていて、モーターの下部に『細長い管』がついていた事までは、詳しく言及してなかったそうよ?
つまり、以前からあったものなのかは、判然としないってことよ」
そこへ、アヤネさんが。
「じゃあ、質問だけど1つ、よろしいかしら?」
「どうぞ」
「その時、金属粉が落ちていたら、以前にはなかったものなんだから……。それは証拠として言えるんじゃないのかしら?」
「残念ながら、長い時と時間の経過によって、判然としないのよ」
「え……」
「あったと言えば、あったと言えるしね。でも、手元にいない以上は、証拠にはならないでしょ?」
「それもそうね……」
そこには、悔しがるアヤネさんの姿があったのだった。
そこへ、子供さながらの意見が飛び出してきて、それは、スバル君のだものだったわ。
「乾燥機……乾燥機……。あっ、それは前と比べて、どうだったの!? 熱かったのそれ!?」
「明らかに熱かったそうよ! だいたい初日目ぐらいからね!
熱も明らかに上がっていて、昔と違って、臭いも違ったそうよ!」
とこれには、スバル君も、内心確信を掴んでいるようで、
ミノルさんから、こうした声が挙がるものだった。
「完全に当たりだな……それは……!」
「そうね……」
同意の核心を得るものだった。
1つは、熱は上がり、もう1つは、臭いが違っていた事だった。
そこへ、アユミちゃんなりの呟きが漏れてきて。
「ちょっと待ってよ……」
そこには、考える人になるアユミちゃんの姿があったわ。
少女は、こう呟いていくのよ。
「普通、モーターの下部にはそんなものは、そもそもついてなくて。
それがついていたって事は、乾燥機の上部に穴が空いていて、そこにちょうど納まる感じで、
モーターの下部に細長い管みたいなものがついていたって事は……!?」
ンンンッ?
と疑問を抱く事になる、少女アユミちゃんお姿があったのだった。
そこへ、アヤネさんが。
「どうしたの? アユミちゃん?」
「いや、ここんところが何だか妙に引っかかいて……? 細長い管……空洞、中空ってことは、心臓部まで、達してたって事!?」
ハッ
とこれには、一同、勘ずく思いだった。
それに対して、エメラルティさんは、こう切り返すのだった。
「そうよ! アユミちゃん!」
「……!」
あたしは、声を掛けらた事で、そのお姉さんに振り返るの。
お姉さんは、こう言ったわ。
「そのモーターの製造会社等に問い合わせてみれば、わかる事だけど……。
普通、一般販売されている、どのモーターにも、そのモーターの下部に細長い管なんてものは、『そもそも必要がない』ものよ!」
これには、アユミちゃんを推しても。
「必要がない……!?」
それに対して、エメラルティさんは、こう答える。
「ええ、そうよアユミちゃん!
その細長い管があるという事は、それは詰まるところ、直接、その『モーターの心臓部に繋がっていた』……という事よ!
そんな状態で、モーターを駆動させたら……、……どうなる!?」
「……」
「モーターの『心臓部』が、『ほぼほぼむき出しの状態』なんだから、それは、激しい振動の中で、ドンドンと小さな部品が剥落していって、
そのモーターの『劣化原因』を『早めている』ことに他ならないのよッ!! つまり――」
これには、アユミちゃんが、アヤネさんが。
「意図的に誰かが、作為的に、仕掛けて周っていた……!?」
「でも、いったいどこの誰が!? そんな悪い企てを!?」
だが、こればかりは、エメラルティさんを推しても、その首を振るうばかりで……。
「……それだけはわかんないわ……」
「……え……!?」
「だって――
『……こんな事を考えられるだなんて、さすがの向こうの奴等も、そのできのいい頭で、捻ってきたもんだなぁ。
こんな事を考えられるだなんて、普通にどんなに考えても信じられん事ぞ……!?』
ハァ……
とその内情を知る工務の方は、そうやって嘆息す。
それは、摩訶不思議なやり取りだった。
『……?』
『お前もおかしいと気づけよ、さすがに……!?』
「――と表現を残している以上、
月見エビバーガーオーロラソース社と、外注を請け負った電気工事会社と、モーターの製造会社と、卸売業者はグルで。
普通にどう考えてみても、おかしくてあり得ない話でしょ!?」
「まさか……!?」
「そう、上からの圧力よ!」
「上からの……圧力……」
「考えられる線は、職業訓練校の先生達、ちょうど、工務とは設備管理員に似たものだからね!
そこから、持ち込まれた線があるわ」
とこれには、アユミちゃんも、スバル君も。
「あっそっかぁ」
「だからかぁ」
「うん」
さらにそこへ、ミノルさんが、アヤネさんが入ってきて。
「タメになるな、ホント」
「フフッ、そうね」
それに対して、エメラルティさんは、こうも言わしめるものだった。
「で、その職業訓練校は、半官半民組織であって、横の繋がりがあったって事!
考えられる線は、職業安定所の中の、『一部の悪い人達』が絡んでいた線ね。
ちょっと電話相談を受けて、その間違った話に鵜呑みに騙されて、他の民間組織にも、取り次いでいけば……どうなるか!?
他の所からも、似たような声を聴くし、そうなんだなぁと思い込み、相槌の声を打つようにして、周りの人達伝いに介して回っていけばどうなるか……!?」
「……」
「それが、多数決の意に買った話になり、あぁ、これは、そうした問題作りなんだなぁ……と思い込み、そうした物を取りつけて、忘れていく。
で、気がついた頃になれば、機械が壊れていて、犯人探しゲームが、行われていた……」
「……」
「……わかる!? それを企てた人達がいて、真に悪いのは、そいつ等って事よ!!
そいつ等はね、知り合いの設備管理、電気工事会社に勤めている人達に、連絡を取り次ぎ周っていって、
その下で働く人たちの誰かを、その責任を負わせようとした、キライがあるのよ!!
これが、『真犯人に辿れなくなっている』、『犯人探しゲーム』であり、とんだ『時限式の爆弾』だったって訳よ!!」
「……」
畏怖と恐怖、戦慄を覚え、ただただ震撼す。
訪れるは、静寂の間。
「………………」
そうした静寂を打ち破ってきたのは、恵ミノルさんだった。
「しっかし――月見エビバーガーオーロラソース社と言えば、結構名の知れ渡ったパン会社の大企業じゃないか……!
まさか、そんな悪い企てをしていて、
その中で働く人たちが、何も気づかなかっただなんて……。
どうなっているんだ!? そこの会社さんは!? そこで働く社員さん達は、社員教育を何もしていなかったのですか!?」
とんだ意見が飛び出されたものだった。
これに対して、エメラルティさんは。
「していないわね!!
上の企みを知っていても、黙っていれば、自分たちは大丈夫であって、
そうした責任を負う事になるのは、何も知らない、その下で働いている、その人達だったからね!? いいようにしてその口を噤んでいったわけよ」
これには、ミノルさんも、アヤネさんも、アンドロメダ王女様も、シャルロットさんも。
「……」
「……」
「……」
「……」
ただただ、その口を噤むばかりだ。
そして、王女様がシャルロットさんへ。
「……どう思う? シャル……」
「どう思うか……ですか?」
「ああ、考えられる線じゃろ?」
「……確かに……。あり得ない話じゃありませんね……。これは……そうした『備え』と『準備期間』が要りますね……」
「ウムッ、今日は誠にいい話じゃ……!」
そう、これはそうした危険を踏まえた備えだった。
☆彡
【乾燥機のモータの変】
――とここで、姉のクリスティさんが、先にミノルさんとアヤネさんの2人に、アイコンタクトを送っていた。
「……」
「……!」
それに気がついた2人は、コクッ……と小さく頷き得るものだった。
エメラルティさんの語り部は、こうも続いていた。
「つまり、その当時から、時限式の爆弾が2つあって、1つは『領収書』、1つは『モーター』だったわけよ!
誰かを通じて、意図的に、小細工された線があるわね!?」
「……」
「でもね、それが問題作りなら、その会社の機械が壊れたら、『いったい誰のせい』なのかしら!? ねぇ~!?」
「……」
その真犯人は、今もまだ不明である。
おそらくは、複数人の考えの下、下された問題作りなのだろう。
エメラルティさんは、こう語る。
「ハッキリ言って、一番迷惑を被るのは、誰かと言えば、そう、その会社を立ち上げた法人株主の信用を汚したものだった訳よ!
つまり、身内内の犯行によって、闇子を伝って、問題を持ち込まれた線ね。
この場合は、工務の方に対しての、問題作りであり。
問題を持ち込んだのは、製造事務所の人達と、総務課の人達関連性が、最も濃くて、疑わしいわけよ!」
「……」
「さらに、問題には、もう1つの負の側面があって、それが、過剰なスピードアップだったという話よ!」
「過剰なスピードアップ……」
「ええ、そうよ。
一代目のモーターと比べて、二打目のモーターの方が、『馬力が高い』ものだから、
以前と比べて、作業効率が大幅に上がって、パワーアップしていたからね!
でも、同時に、弊害が出てくるものよ!?」
これには、アユミちゃんも。
「弊害……!?」
「ええ、そうした『スピードアップ』! 作業効率に間に合わせるように、常に動きっぱなしの状態が、『加速化』していったそうだわ……!
当然、仕事に追われるようになり、『何か大事なものを失っていった』……と語っていたわ。
それは、『人にモノを教える』事とかね。
詳しくは教えることはできず、大雑把にものを言って教えていたってわけよ。
きっと、思うところが色々とあったのでしょうね……!?」
「……」
それは本人にしか、そこで働く従業員でしか、わからない事だった。
あの人は、ものを教えている。
「スピードアップの弊害は、
ベテランさんであれば、そうした作業効率に間に合うけど……。
新入社員さんは、そうした作業効率には、とても間に合わなくなってくるものよ!?
当然、目に見えた形にもなって、従業員さん達の離職が、相次ぐものなの。
それを知っていての、犯行だったわけよ!」
スピードアップの作業効率が増せば、当然、目に見えた形になって、常に時間に追われるようにして、忙しくなっていく。
そこへ、アヤネさんが。
「……時間に追われていた訳ね……」
それに対して、エメラルティさんは。
「ええ、そうよ……。……ッッ」
そこには、悔しむ姿のエメラルティさんがいて、こうも述べるものだった。
「あの会社さんはね、社員教育を、そもそも何もしていないのよ!! 日夜毎日づけで、常に動きっぱなしの所だからね!
そこを、上手く上手く突いていったわけよ!?」
――とここで、ようやく、クリスティさんが、反悪者に徹していた。
「――そもそも、作業効率優先の会社さんだからね!
何も言わずに、黙って働く人が優秀な人材なんだと、思い込んでいるような会社さんなのよあそこは!
だから、そうなっても仕方がなかったわけ!」
これには、思わず呆けるミノルさんに、ちょっとした関心を覚えるアヤネさん。
「へぇ……!?」
「まぁ、そうなの!?」
それは、とても、ワザとらしいものだった。
チラッ、とまだ年端もいかない少年少女達にも、注意喚起を促せる。
「……」
「……」
それは、アイコンタクトだった。
次いで、エメラルティさんは、こう語る。
「実はそうなのよぉ~! そーゆう『社員教育を怠っていた』からこそ、そうした『未然の事故を防ぐこともできなかった』……!
それを知ってさえいれば、まだ、『他の誰かさん』が、『不幸な目』に会わなかった……のかもしれないわ!
必要不可欠な社員教育を行ってさえいれば、まだ、どうにかなっていて、未然に防げたのかもしれない……わね~ぇ!?」
チラチラ、とアイコンタクトを送るエメラルティさん。
これにはミノルさんを推しても、一時的に呆けてしまい。
「………………」
こうした感想の意を零すものだった。
「あぁ……」
(そーゆう事か……!)
その道理を買う。続いてこう語る。
「あんな大企業にも、そんな思わぬ『落とし穴』が……!? 『そんな行政のカラクリ』が『その裏にあっていた』だなんてな……」
これには、妻のアヤネさんを推しても。
「ええ……そうよね……!? 間違って、周りから、『騙されていた口』だった訳ね!?」
そうした感想の意を零すものだったわ。
それは、意外な事実が判明されたものだったのかもしれないわね。
そのミノルさんとアヤネさんの言葉を聴き、あたし、エメラルティは、コクッ……、と静かに頷き得るの。
姉の、クリスティ姉さんは、「フッ……」と笑うものだったわ。
――そして、クリスティ(姉さん)は、こう答えていくの。
「――さっきの話に説明を補足するとね」
「……!」
説明の補足、いったい何なんだろうか。
クリスティさんは、こう語りかけてくるものだった。
「フツーモーターの寿命は、15年から20年ほどと言われていて、
これは、定期的なメンテナンスを怠ると、その平均寿命が短くなるものなのよ!?
だから、どこも、覆いかぶさるような蓋で囲み、その内部で冷却機能を持たせてあるものなの!
つまり、さっきのエメラルティの説明を聞けば、逆説になっていた訳ね!」
そこへ、スバル君が。
「冷却機能!?」
それに対して、クリスティさんは。
「うんそうよスバル君! 細長い管を設けるって事は、そこを度外視していた事に他ならないのよ!」
そこへ、アユミちゃんが。
「えっ、どーゆう事!?」
「モーターの下部に、小さな穴が空いていて、細長い管を伝って、モーターからの熱と乾燥機の熱が、入り混じって、対流現象が起きていたの。
すぐ近くには、流し場の洗浄機械があって、濡れた箱が、ドンドンと送られてくるからどうなると思う!?」
「……」
クリスティ(あたし)は、両手を上げて、問答を問いかけることを意識したものだわ。
それは、かって、ヨーシキワーカさんが、ファウンフォレストやった事だったわ。
「湿気があるから、その細い管を伝って、モーター内部が腐食するでしょうか!? それともしないでしょうか!?」
「……」
もちろん、あたしは、ヨーシキワーカさんと同じようにして、自分から答えを言ったものだわ。
「腐食します。
湿気があるから、そのコイルのモーターに水気がつき、やがて腐食していくものよ。
それは、他の部品まで及び、ボルト、ネジ、ワッシャー、六角ナットなどの剥落にも繋がっていっちゃうのよ」
――とそこへ、妹のエメラルティが。
「――さっきまで聞いていれば、そのモーターの劣化の原因として考えられるのは、
振動が過大、コイルの断線、エナメル質の絶縁不良による層間短絡(レヤーショート)、電力過負荷、冷却不足、整流子の荒損、ホルダーバネ圧の不良などが考えられるのよ!」
とそこへ、アヤネさんが。
「どーゆうモーターなんですか!? それ―ーッ!?」
それに対して、エメラルティさんは、こう答えるものだったわ。
「『ゴム製のブラシの付いたモーター』よ!」
「古ッ!? 『ブラシレスモーター』ですらないんですか!?」
「違うわね」
「えええええ……!?」
これには、大層アヤネさんと言えど、驚愕を禁じ得なかった……。ブラシのついたモーターって、何とも古過ぎる……ッッ。
――さらに、そこに、出遅れたサファイアリーさんも加わって。
「――でも、変なのよね~ぇ!? 普通、モーターの下部に細長い管なんてある~!?
普通、どこの工場も、出荷する時は、穴なんて開いていないものよ!?」
「た、確かに……」
「フッ……。乾燥機の上部に穴が空いていて、そこにちょうど収まる感じで、取り付けるって、それは幾らなんでもおかし過ぎない――ッ!?」
とこれには、少年少女達も。
「おかしい――ッ!?」
「おかしいよね!?」
「ねえ!?」
それに対して、サファイアリーさんが。
「うん、今の感じ、忘れないでね!」
次いで、語るは、エメラルティさん。
「あははは、クリスティ、あんたでも、実際、その現場に立ち会えば、案外と気づかないものよ? 気づいた頃には、既にやられた後なんだからね?」
「うっ……」
「ヨーシキワーカさんが、その工務の方に、ちょっと聞いただけで、全然気づかなかったんだからね。
まぁ、表向き上の目的が、
箱に水がついているから、その箱の中に入れる商品に、水が付着することを嫌って、そーゆう風にした流れがあるんだけどね!」
「……」
「でも、当然、モーターが壊れ出していくから、その乾燥機等に繋がられた配管等を通じて、
他の施設にも、影響を及ぼしていくものよ!?
まぁ、その当時は、どうあがいてみても、誰もが気づかなかった出来事だったらしいわ。
でも、今にして思っても変なのよねぇ!?」
「変ッ!?」
「ええ、普通、小細工しても、2週間ぐらいで、壊れるものなのかしら――」
★彡
【2週間目で、壊れ出していく乾燥機の二代目のモーター】
【それは取り付けられたから、2週間後の事で、異常な音を立てて、白い煙を上げ、焼けつくような異臭を漂わせるものだった】
――箱洗いのオレンジ色のシートシャッターが開き、ヨーシキワーカが入ってきた。
だが、それは、普段とは様相が違ったものだった。
ゴォオオオオオ
『あれ?』
ヨーシキワーカ(俺)は、その音が気になり、そこへ歩み寄ってみる。
それは、昨日と比べて、異常な音だった。
段々と歩み寄る内に。
『……』
(白い煙……それにこの臭いは……!?)
それは立ち昇る白い煙と、機械が焼けついたような酷い臭いだった。
(……こんなの初めてだ……)
段々と、その現場に歩み寄っていくヨーシキワーカ(俺)。
その現場に辿り着くと、ゴォオオオオオ、とモーターが異常騒音を起こしていたんだ。
この時は、まだ程度(レベル)だった。
『……』
(震えてる……)
機械が、ビリビリと震えていた。
『………………』
(どうする? 機械を止めるべきか? それとも……機械を動かしたまま、工務を呼びに行くか?)
ヨーシキワーカ(俺)は、そうした判断材料に悩みつつも、
焦巡し、その足が向かう先は、まず、この機械を動かしている端末の操作だった。
……だが。
『……ッ』
それは、工務の言葉だった。
――何でお前等は、そこで機械を止めたとや!?
その機械を動かしていないと、こっちとしてもわからんことが、中にはあるとぞ!?
――お前達は、ホント、現場保存も知らんとや!?
ハァ……。その機械を動かしていないとな、こっちとしても、そうした事すら確かめられない事もあるとぞ!?
(やっぱりダメだ……!! 触ちゃいけないッ!! 物事の再現性を得ないと、証拠にはならない!!)
ヨーシキワーカ(俺)は、その乾燥機近くの機械のボタンを触ろうとも思ったんだけど、先刻の工務の方の言葉を想い出し、それを止めたんだ。
今にしても思う。
これが一番、正しい選択だったことを。
――そして、ヨーシキワーカ(俺)が、工務の方に、それを報告しに行って、箱洗いに連れてくると。
『よく、あれに気がついたもんだなぁ!?』
『……』
フッ
と笑ってしまう俺がいたんだ。
☆彡
【箱洗いの廊下に、騒音管理区分の立て札】
【120デジベル以上で、聴覚障害が出てくる】
――過去から現在に返り、エメラルティさんは、こう語る。
「――その時、ヨーシキワーカさんは、その工務の方から、お褒めの言葉を頂いていたらしいわ!
この時、ポイントになってくるのは、異常騒音・白い煙・焼けつくような金属異臭がしてたって事よ! 2週間目でね!」
これには、Lちゃんも、シャルロットさんも、アンドロメダ王女様も。
「2週間で!?」
「あぁ、それは完全に、そのモーターがイカれてましたね」
「不良品を捕まされたわけか……不正ルートの違法改造モーターでは、そうなるじゃろうなぁ」
「ですね……」
それに対して、エメラルティさんは、こう切り返すのだった。
「で、後日、その工務の方ではないんだけども、騒音計を持ち出してきては、その後の音を拾ったそうよ!
でも、ここで仕損じていてね……。
一度、機械の運転を止めていて、次に動かしたときは、それほど酷い音を記録できてなかったそうよ……!」
とここで、シャルロットさんが。
「あぁ、そこで、一度、失敗してたんですね……」
「ええ……なんでも、あの機械の運転は、途中で止めないといけなかったそうよ!? その工務の方も……。
『何で止めたとや!?』
――ぅて怒鳴ってたけど、箱が引っかかってしまい、作業が途中で、停止しないと、いけなかったらしいわ。
異常を検知しても、すぐに止まる訳でもなく、一定の間があったらしいわからね。
あの場で、誰かが、機械を停止しなければ、他にも影響していた可能性もあるものよ!?」
「影響!? すぐに止まらないのですか!?」
「ええ、センサーが異常を検知して、止まるまでの間に、積み重なっていくからね。
それは、センサー間までの距離感や。
積載量による重さ制限みたいなものも、絡んでくるのよ。
実際の現場では、そう言ったものがありふれているの。
だから、途中で止めたのよ、あの人達は、これには、その工務の方も、渋々納得していたわ……」
これには、シャルロットさんを推しても。
「なるほどねぇ……」
と了承の意を返していたわ。
「そして、それから数日後の事、
――箱洗いの廊下前に、『騒音管理区分』の立て札が立てられたそうよ!」
「騒音管理区分……」
「騒音計で測ったら、92デジベル異常が、騒音管理区分だからね。
その時は、おおよそ100デジベル前後あって、
ヨーシキワーカさんが、辞めていくころは、おおよそ120デジベルから130デジベルほどあったと思うわ。
とこれには、シャルロットさんも。
「120デジベル以上!? ヒェエエエエエ、耳に損傷を与えるほどのレベルですよ! 聴覚障害ものじゃないですか!?」
「そこにいる人達は、耳栓をしていたらしいけどね。よく、そんな所にいて、賢明になってまで、働いてくれていたそうだけどね」
「いい人達じゃないですか!?」
「フフッ、まぁね。で、次に掃除の話ね――」
★彡
【乾燥機の中の水掃除】
――その機械の中に、手とホースを入れて、水を出してから掃除していた。その時だった。
(……あれ? 何か今、銀色に光るものがあったような……!?)
それは、以前にはなかったものだった……。
掃除を続け、その乾燥機の中の出口から入り口に掛けて、逆に水掃除をしてから、
その黄色いトレイを取り出し、その中身を見やる。
「……」
(これって、小さいけどボルト、ワッシャー、六角ナットじゃないのか……!?
でもいったい……どこから……!?
まさか、機械の中に、どこからか落ちてきた……!? でも、いったいどこから………………!?)
答えは、乾燥機の中にあった。
その天井部には、小さな穴が開けられていたんだ。
以前から、あったものなのかどうかは、定かではない……。
もしかしたら、2代目のモーターを取り付ける際に、新たに設けられたものかもしれない……。
ひょっとして、違法改造モーターなのかもしれない……。
☆彡
――過去から現在に返り、エメラルティさんは、こう語る。
「――ヨーシキワーカさんの読みでは、不正改造された、『違法改造モーター』の可能性があるらしいわ」
とこれには、シャルロットさんも。
「違法改造モーターですか!?」
「ええ、そうよ。さらに、その翌週――」
★彡
【『月見エビバーガ―オーロラソース社』Tsukimi Shrimp Burger Aorora Sauce Company(ツキミ シュリンプ バーガー オーロラ ソース カンパニー)』】
【(続)乾燥機の中の水掃除】
――その機械の中に、手とホースを入れて、水を出してから掃除していた。その時だった。
(……あれ? 何か今、銀色に光るものがあったような……。……もしかして……!?)
それは、先週あった事だった。
ヨーシキワーカ(俺)は掃除を続け、その乾燥機の中の出口から入り口に掛けて、逆に水掃除をしてから、
その黄色いトレイを取り出し、その中身を見やる。
「……」
(また……。でもこれって、普通のネジに、ワッシャーに、六角ナットじゃないか……!?
あれ!? これは……!?)
ヨーシキワーカが掴み取ったのは、黒く焼け焦げ、変色してしまった何かの部品だった。
答えだけを先に言えば、それはゴム製のブラシだったんだ。
だが、その時ばかりは、いや、月見エビバーガーオーロラソース社在職中は、その名前すら知らなかった。
それを知る事になるのは、あくまでミシマさんに関わってからだった。
☆彡
――過去から現在に返り、エメラルティさんは、こう語る。
「――その時は、ヨーシキワーカさんも、その名前を知らなかったけど、モーターの滑り止めに使われるブラシだったそうよ」
そこへ、アヤネさんが。
「ブラシですか!?」
「ええ、それは、機械の停止の時に、力を発揮するものなんだけど、
ヨーシキワーカさんの読みでは、常時の状態でも、加圧ぎみだったそうよ」
「ああ、常にブレーキ―を……。だから、たった2週間程度で、ダメになったのですね!?」
「ええ、そうよ」
もっと、早く気づけば、良かったかのかもしれないわね。
でも、そうした知識と知見がない以上、誰がどう見ても、無理なのかもしれないわね。
エメラルティさん(あたし)は、こう語り継ぐ。
「そして、工務の方に報告に行くと。一度目は、素直に受け取ったそうよ。
その焼け焦げたブラシを除いてね」
「……」
(それが、一番の敗因なのかもしれないわね。その時、その人は、こう思ったものでしょう。ただのゴミなのかもしれないと!?)
あたしは、そのまま、こう語り継ぐの。
「でもね、それが何十回も続くと……。
さすがに、あの工務の方も、段々嫌気が差していって、そんな機械の部品あそこに捨てとけ、って啖呵を切っていくものよ!』
★彡
【最初は、その機械の部品を素直に受け取る工務】
――それは、ヨーシキワーカが、その小さな機械の部品を持って、工務室に訪れた話だった。
その小さな機械の部品とは、小さなボルト、ネジ、ワッシャー、六角ナットだったという。
『あの済みません』
『んっ!?』
『あのこれ……』
『……』
その工務の方が見たのは、ボルト、ネジ、ワッシャー、六角ナットだった。
『……この部品はどこから……!?』
『えっと……箱洗いを掃除していたら、これが出てきました……』
『これはどこの部品だ……!?』
『……さあ……』
ここで、ヨーシキワーカは、些細なミスを犯していた。
それは、確かに箱洗いを掃除していて、その乾燥機の中から出たものだった。
その証拠に、黄色いトレーの上にあったものだ。
これだけは、間違いない。
この時、ヨーシキワーカは、乾燥機の中……であることだけは、特定していた。
だが……一度、この工務の方から、これはどこの部品だ? という意見を出されてしまい、
その当事者としては、その原因の特定されたポイントを聞いてきた、先入観を持ってしまい、さあ、わかんない、となってしまったのだった……。
これは、誰でもそうだが、
第一発見者でも、その場所がわかっただけであって、その原因の特定の箇所までは、限定できないものだ。
こればかりは、過失とは言えず、どうしようもない事だった。
唯一救える望みがあるとすれば、それは、さらに言えば、この時、工務の方が尋ねるだけではなく、一緒に箱洗いに付いていって、
その部品が、どこで発見されたものなのかわかれば、まだ救える望みがあったのだった。
乾燥機の中で発見されたもの、という場所だけが。
『……わかった。じゃあ、そこの机の上に置いといてくれ……』
『はい、わかりました……』
その小さな機械の部品である、小さなボルト、ネジ、ワッシャー、六角ナットを、その机の上に置いたのだった。
この時、ヨーシキワーカのミスは、実はもう1つあった。
それは、ゴム製のブラシだ。
だが、箱洗いの作業員に、それを強く望んでもそもそも無理がある。
なぜなら、それは電気分野であって、その中でも、モーターの中に収められたものだったからだ。
彼には、その知識すらない。
ブラシとはいわゆる、滑り止め役割を果たし、ブレーキみたいなものだ。
機械の運転停止の時に、この役割を最大限に果たす。
……だが、ここで妙だ。
そもそも、たった2週間程度で、そのブラシが、既に焼け焦げた状態で、かつ擦り減っていた状態で、欠けていたものが発見されていたからだ。
たったの、たったの2週間程度でだ。
つまり、不良品を掴まされた訳である。
その時、工務の方はそれを見て、こう言ったものだった。
『どうせあの中の、どこかの部品なんだろうな……!? 結構長い事使われているし……』
『……』
これが後に、この会社にとって、命取りとなっていくのだった――
★彡
【だが、その工務の方も、段々とその小さな部品に嫌気が差してきて、そんなもんどこかに棄てろ、と唾棄するものだった】
――それは、ヨーシキワーカが、その小さな機械の部品を持って、工務室に訪れた話だった。
その小さな機械の部品とは、小さなボルト、ネジ、ワッシャー、六角ナットだったという。
『あの済みません』
『……ハァ……またか……』
『はい……』
いったいここには、いったい幾度、足かげく通った事だろうか……。
もう、2度や3度じゃなく、数回に及んでいた。
もうこれには、工務の方も、さすがに嫌気が差していた。
ムスッ
とこう何度も同じやり取りを繰り返されていては、さすがの工務の方も、不機嫌なものだった。
『もうここには持ってこんでいいぞ! そんなもんどこかに棄てとけ!
もうここにはそんなもん持って込んでいいぞ! そんな部品ぐらい、ここにはいくらでもあるんだからな!』
『……』
ヨーシキワーカ(俺)は、この工務の方だけではなく、他の工務の方にも同様に届け出していたものだった。
だが、相手からすれば、さすがに嫌気が差してくるものであって、それは、もう受け取りたくはないものだった……。
泣く泣くその日の俺は。
――箱洗いから見て、ほぼ直線状の位置にあるゴミ捨て場。
『………………』
俺は、どうする事もできずにいて、その小さな機械の部品を、そのゴミ捨て場に棄てたのだった。
小さなボルト、ネジ、ワッシャー、六角ナットを。
それは、機械の部品とも言えるものだった。
☆彡
【話し手、聞き手にとっての、言わばヒューマンエラーの1つ】
【機械の部品は捨てとけが、誤った形で伝わり、時に思わぬ誤解を招くこともある!? それが、ミシマさんに繋がる話】
【その機械の部品でも、正確に言えば、ネジ、ボルト、ワッシャー、六角ナット、焼け焦げたブラシを含む場合もあるものだった】
――過去から現在に返り、エメラルティさんは、こう語る。
「これが、後のミシマさんに伝わり、『あそこの機械の部品を捨てた』が、『誤った形』で受け取ってしまったわけよ!
ミシマさんに取っては、機械の部品という形で受け取ってね。
実際は、小さなボルト、ネジ、ワッシャー、六角ナットという機械の部品だったのよ。
これは、話し手、聞き手にとっての、言わばヒューマンエラーの1つね!」
これには、シャルロットさんを推しても。
「ああ、なるほどぉ~! 実はそうだったんですね! 簡単簡単!」
とここで、アヤネさんが、ミノルさんが。
「それは、あるあるね!」
「それは、そうなってもおかしくないぞ!?」
そして、ミノルさんは、こうも言うのだった。
「……だが、なぜ!? そのミシマさんという人は、そこで、その人に尋ね返さなかったんだい!?」
それに対して、エメラルティさんは、こう切り返すのだった。
「それがねぇ。月見エビバーガーオーロラソース社からの連絡が回っていて、
あの会社の機械が壊れてうるさい、という前評判が立っていたからよ!
で、それを聞きつけた多くの人達がいて、その1人がミシマさんだったの。
で、そうした先入観を持ってしまい、ああ、こいつがまさか、あの時、噂に挙がっていた、その犯人なんだな……と誤認したからよ!
よくあるある話でしょ?」
「「「「「あるある」」」」」
一同、そう思わずにいらなかった。
もの悲しい、笑えない真実である。
実際、どこの現場でも、そうしたもので、こーゆう出来事がつきものなのだ。
これには、ミノルさんを推しても。
「なるほど……そーゆう経緯と経緯があったんですね!」
「ええ、実はそうなのよぉ!」
「……」
この時、ミノルさんはこう思うのだった。
(あぁ、これは、ミシマ・カレンさんって言う人、とんだ早とちりの早合点の早忘れをしたのだな……。きちんとした『確認を怠ってしまった』と……)
とんだ阿呆である……。
エメラルティさん(彼女)は、こう続ける。
「しかも、ミシマさんは、その後、大っぴらにもう人前に言ってしまった後だからか……。
周りに余計な誤解と混乱を招いてしまった後の祭りなのよ?」
イメージしたのは、花火師のミシマさん。
それは、適当に、爆弾花火に火をつけていって、点火ファイアー。
天高く舞い上がっていき、大空で花火を咲かすかと思いきや、
へ?
それがそのまま、地面で盛大に花火を咲かせたものだった。
ミシマファイアフラワー。
これには、シャルロットさんも、アンドロメダ王女様も、Lちゃんも。
「アハッ! まぁ、確かにそうなるでしょうね!」
「アハハハ! 何じゃあそりゃあ!!」
「受けるーっ! ミシマファイアフラワー!!」
と合唱したものだった。もう大笑いである。
エメラルティさんは、こう告げる。
「つまり、そのモーターとミシマさんとは、そもそも何も関係がないということよ! 取り付けられてから、2週間後に、壊れ出したんだしね!」
ここで、サファイアリーさん、クリスティさんが。
「要はそーゆう事よ!」
「そうそう!」
と美人三姉妹が、物事の道理を、わかりやすく説明してくれるのだった。
★彡
【『月見エビバーガ―オーロラソース社、去年の9月】
【モーターの取り換えを願うも、2年前に取り替えられたばかりで、拒否される】
【予算会議案は、地方のお偉方が、一度本社に集まり、そこで会議をし決まるもの、その是非により、その会社の予算は回されて、充てられる】
――それは、ヨーシキワーカが、工務室に訪れた時の話だった。
『あの済みません。……今、いいですか!?』
デスクワークしていた工務の人は、自分に声を掛けられた事で、そちらへ向くのだった。
『……何だいったい? 今、忙しいんだが……手短に言ってくれよ? 今、記録の帳簿を取っていて忙しいんだからな!』
『……』
その工務の人は、ホログラム映像出力装置つきマウスを操作しつつ、エアディスプレイ画面見ながら、仮想キーボードを叩いていた。
そして、記録の帳簿を取るためのノートを、交互に見やりながらやっていたんだ。
忙しいみたいだった。
それを認めた俺は。
(手短にか、ならしょうがない……)
と相手に合わせることにしたんだ。
『あの、今、箱洗いの方でうるさくって、モーターを修理(なお)してください』
と手身近に言ったものだ。
これに対して工務の方は。
『ハァ……またか……! 前にもそーゆう事があっていたよな!?
あの後、音が静かになったんだろ!?
また、あの音がうるさくなったのか……!? さてはお前等が壊したんじゃないだろうな!?』
『いえ、そんな事は……』
この日、ヨーシキワーカ(俺)は、工務の方に疑われたんだ。
このやり取りを見る限り、俺がミシマさんに関わる前から、工務たち(この人達)はブラシ(それ)を知っていて、取り付けていた事になる。
それでも、やっぱりダメだったんだ……。
ブラシでは、一時しのぎにしか過ぎない……。
根本的な原因を解決しなければならなかったんだ……。
『……』
『……』
『……まぁ、いい、お前等が帰った後、それをやってやる。……それで充分だろ?』
『……ッ、はい……』
『フンッ、わかったら向こうへ行け。仕事にならん……』
『……ッ』
『……何だぁ? まだあるのか?』
『……』
コクリ
『……何だいったい?』
『……あの、あのモーターを新しく取り替える事ってできませんか?』
『ハァ……何言ってんだ?』
『?』
『あれは、ついこないだばかりに、取り付けられたばかりだろうが?』
『えっ……』
(こないだって……。もうずいぶん前のような気がするけど……!?)
その工務の方は、近くに置いてあった黒いノート(デスクダイアリー)を手に取り、
そのページを、適当にパラパラ、と調べてこう言ったんだ。
『――あった、ついこないだ当り、やっぱり取り替えられた後じゃないか!?
ここにも、『2年前』に取り替えられた、と記載書きがあるんだぞ!?
それにそんなお金、いったいどこの誰が出すんだ!?』
『……』
『言っちゃなんだが、ついこないだも、予算会議案が開かれて、別の所に新しく設備導入費が当てられたばかりなんだぞ!?
それに、そんなに頻繁に何度も、上からの予算会議案などが開かれて、うちの工場の方に降りてくるような話でもないんだぞ!?』
『えっ……』
『何だそんな事も知らないのか!? ハァ……。
いいか!? 本社があって、そこからいくつもの系列店舗みたいなものがこの会社には会って、
それは遠くの方の工場にも広がっていっているんだ』
『……』
『だから、毎度のことのように、その予算会議案がお上の方で開かれていて、そこでそうした承諾の話があり、
決まった地方の方へ、そのお金が回されているんだ。
だから、いつ、ここへ回されてくるのかは、ここにいる俺等でもよくわからないところがあるんだ。
……わかったな!? ……わかったら、今後は、そんな口は慎むように……』
『うっ……でも……うるさくて……』
『何だ……? まだ、何か……あんのか……?』
『いっ……いえ……』
『フンッ、お前等は、一生そこで這いつくばっていればいいんだ……』
『………………』
(惨めだ……)
その時、ヨーシキワーカ(俺)は、そう思ったんだ。
☆彡
【乾燥機のモーターは、2年前に取り付けられたもの】
――エメラルティさんは、こう語る。
「――2年前、確かに工務の方は、そう言ったわ。
でも、ヨーシキワーカさんの記憶が正しければ、もっと『前だった』はずよ!
おそらくは、示し合わせたものである可能性もある訳。
ノートを取り出して、ちょっと見てから、発言までの間に、インターバルが短かったからね」
「……」
「まぁ、何の証拠もないから、どうしようもない話よ?」
そこへ、サファイアリーさんが。
「まぁ、警察並みの捜査網を使わない限りは、不可能でしょうね」
その声に、相槌の声を打つように、エメラルティさんが。
「ええ、土台無理な話ね。
その工務の方の言い分を、まともに聞いていけば、
それは、ヨーシキワーカさんが、まだ退職する前の去年の時期に当たるから、辞めていった年で、数えれば、3年前ぐらいに当たるものだそうよ」
「2年前、3年前……」
時系列参照用。
0123456789
XABCDEFGHI
22BX……ヨーシキワーカの退職した年
22AI……現在の話はここ。
22AG……工務の方の言い分を聞けば、二代目のモーターが取り付けられた年。
22AF……確証もない取り付けられた年(あくまで予想)。
エメラルティさんは、こう語る。
「この9月の時期ぐらいにして、人の噂が立ち始めた訳よ――」
★彡
【『月見エビバーガ―オーロラソース社、去年の9月】
【商品課】
ゴォオオオオオ
――それは、箱洗いの壁伝いに隣接する、商品課からの苦情から始まるものだった。
『ちょっとちょっとーヨーシキワーカさん!!』
『んっ!?』
『この音いったい何なんですかーッ!? この壁の向こうからここまで(振動が)届いてきているぐらいなんですよ!!
いったいあの向こうで何があったんですかーッ!?』
『あぁ……』
(この音な)
ゴォオオオオオ
ビリビリ
と壁伝いで、妙なぐらいに振動を起こしていたのだった。
その比較的若い彼の座る机(デスク)も小刻みに震えているほどで、ボールペンなどの筆記用具が、転がり出してきているぐらいだった。
『ここ、2、3週間までの間に、何だかとんでもないぐらい酷くなってきていませんか――ッ!?』
向こうの方に見える商品を作るラインの人からも、苦情の声が挙がってきてたんですよ!』
『……』
(まぁ、だろうなぁ……。上の更衣室の人も、それとなく言ってたし……)
『いったい誰が犯人なんですかーッ!?』
『……は?』
(何言ってんの……お前……!?)
『まぁ、自分はヨーシキワーカさんじゃないと初めからわかってますけどね!』
『……』
『で、誰なんですか!? いつもあなたはあそこにいて、良くあの4人の中の動きを、あの中の方でいつも見ていましたよね!?
いったい誰が犯人なんですか!? それをこっそり、教えてくださいよ……!?』
(お前、箱洗い(仲間)をバカにしているのか……!? そんな奴、いなかったぞ!! 以前には1人いたが……。
今の連中の中にはいない。意図した動きで、壊した奴は1人だっていない。
それが、工務の方に報告している、俺だから言えるんだ)
俺は、踵を返して、そいつに背を向けるんだ。
『あっなんで!? そっちへ行って逃げるんですか!?』
(逃げる……ッ!? ……ッ、勝手に犯人探しでもしてろ!!)
俺は、そのまま背を向けて、その場を後にするのだった。
★彡
【『月見エビバーガ―オーロラソース社』、去年の12月】
【旧世代の携帯端末が、雨の日、バイクに乗っていて、走らせている時に壊れた。それもより、連絡がつかなくなる】
――それは、ヨーシキワーカの旧世代の携帯端末が壊れたものだった。
その原因は、あの雨の日、バイクに乗っていて、その携帯端末がビシャ濡れになって、壊れたものだった。
リュックの中も、びしょ濡れだったものだで、ノートも筆記用具等も。
その携帯端末は、父に買ってもらったもので、昔の会社(ここ)に入所した時には、まだ持っていなかったものなんだ。
だいぶたった後ぐらいに、父に買ってもらって、持たせてくれたんだ。
何かあった時の為の連絡手段として。
そして、それは、あくまで、『私用』ものであって、それを通じて、昔の会社と繋がっていた連絡のやりとりが、完全に途絶えたのだった……。
それを話した人がいて、ドーナツライン近くのオレンジ色のシートシャッター前にいた、品質管理の女だったんだ。
品質管理の女性は、わかっている限りで、4人ぐらいいて、その中の1人にこう進言した事がある。
『あっそうだ! ちょっと相談に乗ってもらっていい』
『はいっ何ですか!? 珍しいですねあなたから何て!?』
ヨーシキワーカは、口下手である。
ここでは、寡黙で通っていたらしい。
まぁ、あんなところにいて、いつも常に動きっぱなしで、人とも関わり合いが少ない以上、寡黙として見られてもなんらおかしくはない。
『ちょっと前に、山の上をバイクで走らせている時、雨が降ってきて、それで携帯端末が壊れちゃったんだ』
『ハァ……それでどうしろと?』
『治し方わかんない?』
『………………』
『困ったなぁ……分解したまではいいんだけど……。携帯端末の治し方について、詳しい人知らない!?』
(自分で治せないかなぁ……?)
私は、この時ばかりは、自分で治す気でいたんだ。部品さえ、どこにあるのかわかれば、治せると思ったからだ。
だが、そんな事は知らないし、そんな事を何も聞いていない、品質管理の女性は。
『そんなの知りません!! ってあなたそれ、1人で分解しちゃったんですか!?』
『うん、ホームセンターで特殊なドライバーを買ってきてね』
『ハァ~~……ホントに何て言ってよいのやら……』
『???』
ヒドイ幻滅ものだった……。
『もうあっちへ行ってください!!』
『困ったなぁ……う~ん……半導体に詳しい奴、いたかなぁ……!?』
その後、私は、打つ手がなく、泣く泣く新しい腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)に乗り換えるのだった。
いわゆる機種変更である。
――そして、その彼女は、こう思うものだった。
(――んっ!? まさか……あそこの機械を、興味本位で障った人って……!? ヨーシキワーカさんなんじゃ……!?)
ゴォオオオオオ
……だが、それはとんだ早合点だった。
そもそも、箱洗いの中には、工具は置いていない。
そもそも、工具を置いてあるのは、工務室だけだ。
それに、工場の中に私物を持ち込むことは、禁止されている。
まぁ、ヨーシキワーカは、雨合羽(レインコート)は、持ち込んではいたが……断じて、工具だけは持ち込んでいない。
そもそも、不審な行動を取れば、悪目立ち、不振がり、誰かに見つかってしまい、すぐにわかるものだ。
故に、とんだ早とちりになるのだった。
☆彡
――過去から現在に返り、エメラルティさんが、こう語る。
「――これが、携帯端末から腕時計型携帯端末の機種変更にまつわる大事な話でね。
この時点までは、電話番号は変わってなかったの。
で、電話番号が変わる事になったのは、ミシマさんに関わった年であり、1月下旬頃の話だったそうよ。
でも、その時に、電話局の女性の方、ナガフチさんからこう言われた事があったそうよ。
『あの学校の学び舎の中で、あんなに問題を誰よりも早く、ズバズバと何でも答えていたんだから、その頭がいいぐらいなんでしょ!?』
『だったら1人で、それぐらいの事はできるわよね!?』
――って言われた事が会ってね。
どうやら、ミシマさんに、まだ関わる前から、職業訓練校を通じて、どうしようもない問題の『伏線造り』が会っていたようなのよ!?」
「伏線造り……?」
「ええ、そうよ……。ヨシュディアエがね」
『それは、ここ職安のあたしに報せるだけじゃなく、前にヨーシキワーカ君が行っていた、あの職業訓練校の先生達の方にも』
『それを伝える、『義務的な手続き(?)』みたいなものがあるのよ!?』
――で、ヨーシキワーカさんが、その職業訓練校に再び顔を出して、
そこにいた就職支援室の人達や、ドクターイリヤマにも、
その新しく変わった電話番号を教えていた事が、会っていたらしいわ!
それこそが、問題作りの伏線でね」
とこれには、アヤネさんも。
「なるほど、それでハメられた訳ね!?」
「ええ、おかしいのは、ヨーシキワーカさんがなるように仕向ける、手口だったのよ!?
周りからすれば……。
『あれ!? 何であいつ!? 電話番号が変わってるんだ!?』
『これは、なんか怪しいぞ!?』
――と変な目で見られていってね……。
だから、イリヤマ達に取っては、実の都合がいい事で、自分の手筈通りに、上手く物事が進んでいったのよ。
それが、どうしようもない問題で、周りからのスゴイ騒ぎが起こっていたの。
あの街の方で、『おかしな噂』が飛び交っていたのは、実はそうした経緯が会っていた訳!
だから、ヨーシキワーカさんに、直通の電話が掛からなかったのは、実はそうした経緯があっていた訳!
周りは、当然知らないからね……。
それを知っているのは、イリヤマ、ライセン、ヨシュディアエ、ミシマさん達ぐらいだからね。
そうやって、ハメ殺しを受けていた訳」
「……」
「だから、何度も面接も落ちるし、周りが知らなかったから、就職難に陥らせる、悪い手口だった訳よ!?」
これには、スバル君も。
「そんな事が会っていたのか……」
(あの人の身に……)
僕は、あの人を心配するばかりだ。
そこへ、ミノルさんから。
「じゃあ、どうしたらいいんだ!?」
それに対して、エメラルティさんは、こう切り返してきて。
「少なくとも、就職してから、新しい機種変更や電話番号も、変えていくしかないわ。ウィルス感染しているからね……。
ヨーシキワーカさんは、少なくとも、就職するしかなく。
長い航海中の船にいるようなものよ? だからどこかの岸に、上陸して、船の整備をするしかない訳。
今後のそうした踏まえとしては、1年が過ぎた時点で、その腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)もホログラム映像出力装置付きマウスも、
ウィルス感染しているから、身に覚えがある被害者たちは、ものを買い換えた方がいいわ。
もう、それぐらいの事しか言えないからね……」
「……」
★彡
【『月見エビバーガ―オーロラソース社』、辞める年の1月】
――それは、同僚の1人からの進言だった。
『――ヨーシキワーカさん、何だって突然、こんなすごいぐらいの音になったんですかねぇ!?』
【ヴィウノビブリオ・ボックスウォシィング】
それは、箱洗い作業員の1人だった。
ヨーシキワーカ(俺)の後輩にあたる人だ。
『わからん……』
『えっ、ヨーシキワーカさんでもですか……!?』
『うん、後でもう一度、工務の所へ行ってみる』
が、結果はすべて空振りに終わる。
――その工務室にて。
『――あのモーターは、前に取り付けたばかりじゃないか!! 買い換えるのにも、バカにもならんのだぞ!?』
『でも、結構うるさくて!』
『たった2年ぐらい前に取り付けたばかりじゃないか!?
次に上からの設備維持費が降りてくるまで、なんとかしてそのまま持ち堪えるまで待ってろ! それまで耳栓でもして、我慢でもしとけ!』
『……ッ』
ふざけてるッ。
――箱洗いに戻り。
『やっぱりダメだったんですか?』
『ああ』
『ちょっとはヨーシキワーカさんに期待はしてたんですけどねぇ……』
『……ッ』
(済まん)
ヨーシキワーカ(俺)は、心の中で謝るしかなかった。
『……』
何か、何か、言う事はないかな……。
『あっ! そうだ! 体に何か変調はきたしてないか!?』
『変調?』
『あぁ、ちょっと前ぐらいにトイレ休憩して、(ウェーブグローバルからの情報を)そのときにチラッと見たんだけど。
なんでも、耳から入った音が脳にも伝わって、揺さぶって、体の中に色々な変調をきたす事があるらしいんだ。
吐き気・目眩・動悸、息苦しさ、耳がキィーンってなったりの難聴を起こしたりな!
時には具合が悪くなって、平衡感覚を失う事もある。中にはそれで、意識を失って倒れた人もいるらしい』
『えっ!? ホントですかそれ!?』
『うん……だから、仕事は休み休みしてくれ。俺達は、『この体が資本』なんだからな!
倒れてしまって、何もできなくなれば、それこそ本末転倒ものだからな……!
今後、何の仕事にも就くにしても、この体が資本なんだからな!』
『……』
『まぁ、それとなく気をつけておいてくれ』
『どう気をつけろと……!? いつもあの中で、イプシロスイティヤさんが、今も働いているのに……!?』
ゴォオオオオオ
とんでもないぐらいの騒音と地鳴りにも似た振動が凄まじいものだった。
何でだか信じられないぐらいなまでに……。
今もあの中で、イプシロスイティヤさんが働いていたんだ。
☆彡
――エメラルティさんは、こう語る。
「――自分たちは、この体が資本なんだからな。これは、かのヨーシキワーカさんのお父さんの言葉よ」
これには、まだ若いスバル君も。
「体を壊す……!?」
「うん、基本、『体が資本』だからね!
どんな仕事に就くにしても、その身体が壊れてしまえば、仕事ができなくなってしまうからよ!?
ヨーシキワーカさんも、実際に体験していて、
辞めていった後輩に対して、こうした助言を残しているの。
『自分たちは、この体が資本だから、あまり無理しないようにな? 体が壊れてしまえば、まともに動けなくなってしまえば、最後はポイッだからな!?』
――あたしも、そう思うわ」
――これには、アンドロメダ王女様も。
「ほぅ、良くわかっておるな……関心感心! 体壊れてしまえば、職への斡旋への話もなくなるからな!」
とこれには、シャルロットさんも、ものを申してきて。
「ですが王女……。それでは、仕事になりませんよ?」
「自分にできる範囲で、取り組めばよかろう?
全力は出さずとも良くて、30%から50%ぐらいの力で、やれば十分なはずじゃ!
必要な時に、必要な力を出しさえすればな!?
ずっと緊張しっぱなしでは、いざ、本番になった時、全力を出し切れぬものじゃぞ!?」
「そ、それもそうですね……」
「じゃろ? 体が資本なのじゃ! そればかりは、大事にせなばならぬよ!」
「仰る通りです」
そんなアンドロメダ王女様とシャルロットさんの会話があったのだった。
で、エメラルティさんが、こうも言ってきて。
「これも、そのお父さんの言葉でね。
『仕事をする以上、体が資本だからな! その身体が壊れてしまえば、今後は何もできなくなるんだぞ!?
次の就職探しだって難しくなり、どこの会社のもんも、お前を雇うのは、なんだか難しくなってくるからな……!?
日雇いのアルバイトさんだって、何だか難しいからな……!?』
――ってね」
「……」
「それぐらい、そのモーターの騒音は酷かった事よ! そして、この時を境に、いったい誰がモーターを壊したのかが、噂になっていたのよ!?」
「モーターを壊した!?」
「ええ、そうよ! この時、ちょうど、間が悪く、辞めていった人物がいて、その人が、ヨーシキワーカさんだった訳よ!」
「なっ!?」
「そう! まさに今、スバル君! あなたの反応と同じ!!」
「……ッ!?」
(まさか……!?)
「そう、それが、あの人が、職業訓練校に入ってから、件のどうしようもない問題に通じて行ったわけよ!
で、誰が犯人なのか!?
その職業訓練校内で、注目の視点を1人で浴びていた訳よ!」
「……」
それが、件のカジノの話である。
「そして、カジノの話で、犯人の名指しがあった……! 犯人は、ヨーシキワーカ氏であると!!」
これには、スバル君も。
「……ッッ」
(全然、違うじゃないか……!!)
そこへ、Lちゃんが。
「じゃあ、いったい、誰が、犯人なんだよ!?」
僕は、そのLの言葉を受けて。
「そうだ! 誰が犯人なの!?」
それに対して、エメラルティさんは。
「一番のポイントになってくるのは、そう、テセウスの船に戻る事よ!
そう、以前からの取り組みにおける! 複数の企みによるものだった! つまり、犯人は複数犯!」
これには、Lちゃんも、スバル君も。
「テセウスの船……」
「以前からの取り組みにおける、複数の企み……!?」
コクリ
と頷き得るエメラルティさん。
「……」
【――始まりにして、ゴールの言葉だった】
【エメラルティさん(彼女)の言葉を受けて、未来のスバルとLの動機を知る――】
「――そう、企てた人達がいて、指示者がいて、
問題を受けた人がいて、その時、たまたまモーターの老朽化が着ていて、そこから電話伝いで知り合いに片っ端から取り次いで周っていった」
これには、スバル君も、Lちゃんも
「……」
(まるで、流れ作業だ……!?)
(信頼できる……!?)
驚いたものだったわ。
あたしは、こう続けるの。
「そして、酒の飲み会での場や電話伝いで、受注していった人達が『複数人』いて、
それが、卸売業者さんと、電気工事会社さんが2つ以上で、問題を受けて意見指示をする人が会社の身内内にいた。
つまり、グルだった訳よ」
「グルッ!?」
「そうよ! しかも、それが、上からの『威権指示』だった!」
「上からの『威権指示』……!?」
「うん、普通に考えてみて!? 職に対するプロフェッショナル精神が、『それを許す』と思う!?」
「……」
「上からの命令で、『仕方なくやった』……! 最終的にここに行き着いちゃう訳よ!
で、この上からの『威権指示』とは、職業訓練校と横の繋がりがある職安も通じていて、一部の悪い人間の金策目的が潜んでいた訳よ!」
「なっ!?」
「職業訓練校は、60校以上もアメリカ国内に設立した際、借金もたんまりこさえていて、それを回収しなくちゃならないからよ!
また、多くの巨大企業も、同じであって、アメリカ国内に数多くの系列店舗を立てた際、借金をしてこさえているから、それも併せて回収しないといけない!
わかる!?
これが上からの『威権指示』! 上からの圧力のものいいよ!」
これには、スバル君もLちゃんも。
「とっ……とんでもねぇ……!!」
「うわぁ……マジィ……!?」
「ちょうど、月見エビバーガーオーロラソース社も、この巨大企業に当てはまってね!
何も知らない人相手に、そうしていた訳。
わかる!? この後ついて回ってくるのが、責任問題の取り付け回しよ!
いわゆる、問題をこっちからでっち上げて、そいつに罪を着せてから、ふんだくってくるわけよ!」
これには、スバル君も、後見えないけどLちゃんも、何も言えなかったわ。
「……」
「……」
そこへ、元悪女クリスティさんが。
「当然、こーゆう素晴らしい問題作りは、いい金になるものだから、金の亡者達は、人知れず上の役職の人達に取り次いで周っていた訳よ」
「! すばらしい……問題作り……」
「ええ、そうよ。それが彼等彼女等の『隠語の言葉』よ」
「『隠語』……」
「エクセレントとも言うわね。それともグッジョブ!? まぁ、何だって、いいんだけど……。要はそうした『隠語』が広がっていた訳」
「……」
「クスッ。当然、横の繋がりあって、会社伝いや、企業間や、病院伝いや、公的機関に至るまで、グルだったわけよ!?」
「なっ!?」
「まぁ、『ほんの一部の悪い人達に限った話』……なんだけどね。
そうやって、少しずつ、試していきながら、上の役職の階段を上がっていく訳よ!?
後は、酒の飲み会の場や、電話伝いで取り次いで周り、
金一封包んだりして、クレジットカードやデジタル決済マネーを使うなどして、上手くみんなで、口を噤んでいったわけよ!?」
「……」
筋書きが通る。
「そして、その陰に隠れて、国の使用用途不明の闇金やら裏金疑惑が挙がり、企業献金や、組織を通じての上納金として収められていく。
その使用用途不明の不正支出は、国の防衛費や軍事資金に転用されているのよ!?
新技術の開発部門や軍や医療の多角的目的でね。
これは、アメリカや日本国内だけじゃなく、
世界中に蔓延しているのよ? もうね!?」
これには、僕が、あたしが、私達が、口を閉ざすほどだった。
「……」
「……」
「……」
クリスティさんは、こう語り継ぐ。
「わかる? これが『特殊集団詐欺事件』の裏に潜んだ政治的な外交圧力問題に対する行政の取り組み方!
警察の捜査で取り締まろうにも、取り締まれず、上からの圧力で、
検挙しようにも、証拠が掴めず、いつも逃がしてたのは、実はここにあった訳!
『特殊詐欺』とは良く言ったものね!?
全員がグルだったんだからね!?
当然、その警察官の中にも、闇子が潜んでいて、裏で手引きしている訳よコレが!?
証拠の揉み消しと改ざんと焼き増しでね。
TV報道の『扇動』もそう。
詐欺事件で、誤って捕まった証人も、上手くは言い出せず、口にはできず、
TVを通して、一般公開された時には、もう、犯人なっていた訳。
で、最悪の場合、人殺し……と。
そうなってくれば、ホントにどうしようもない問題よ!?
要は、周りから、そうなるようにして、唆されて、欺かられて、取り次いで周り、そいつの気をおかしくさせるようにして、
でっち上げるように、仕向けて周った訳よ。!
まぁ、対処方法は、ただ1つ!
動くなよ!!
偽電話詐欺に出るなよ!!
騒ぎに便乗するなよ!!
で、あれば、それ以上は、決して悪化しないからね……。無視を決め込めって事よ。
ヨーシキワーカさんは、そうやって、最悪を免れたわけよ!」
「……」
あの人は、それで、危機的状況を免れたわけだ。
――さて、そこで、エメラルティさんが、こう語り出してきて。
「――さて、次は、なぜ、そう転んでいったのか!?」
そこへ、アヤネさんが。
「さっき、話にチラッと出てきた出てきた卸売業者さんと、電気工事会社2つ以上の件ね?」
「うん。……でもね。残念ながら、ヨーシキワーカさんは、その現場には、居合わせていないそうよ?」
これには、みんなも、アヤネさんも、
「……」
「居合わせていない!?」
と驚き得たものだったわ。
それに対して、あたしは、「うん……」と答えるだけだったわ。
それを見兼ねて、アヤネさんが、「それは、確証が得られないわね……」と言い。
ミノルさんを推しても、「見ていない以上、証拠にはならないぞ!?」とするものだったわ。
それに対して、エメラルティ(あたし)は。
「だけどね……。確証はなくても、過去にそうした実地体験に基ずく現場を見ていれば、予測と仮説が立てられるものよ!?」
とこれには、アヤネさんも、渋々、承諾するように。
「……わかったわ。それでも構わないから、話してくれる?」
「ええ、もちろん! あれは品質管理の奥様方が、ボイラーマンさんに詰め寄った時の話だったそうよ――」
TO BE CONTINUD……