第3章の第103話 どうしようもない問題30 答え売り上げ利益4
☆彡
【3時間前倒しの弊害】
【複合的な要因が複雑に絡み合いながら、影響を及ぼし合っていた!?】
――サファイアリーさんは、こう告げる。
「――売り上げ利益……。ここまでくれば、視えていなかったものが、視えてくるはずよ」
「……」
考えさせる思いだ。
「ヨーシキワーカさんが語るには、月見エビバーガーオーロラソース社に入社してから、退職されるまで、10年間、そこに在籍していたらしいわ!」
ヨーシキワーカは、10年間そこにいた。
「当然、目に見えた形にもなって、トラックの入ってくる時間帯が、変動していったものよ!
入社当初は、昼3時でも、
退社する頃には、昼12時で終わっていたらしいわ。
ヒドイ時なんかは、朝11時40分頃に、トラックの荷台から、箱が卸されていた後だったって話よ!」
これには、アヤネさんも。
「フンフン、なるほどなるほどね! つまり、3時間も前倒しされていたって訳ね! その作業の効率化と作為的な問題作りの線で」
「ええ、そうよ。
その他には、どんな影響が考えられるかしら?」
そのサファイアリーさんの説明を聞き、
僕達、あたし達、私達は、思わず、「影響……!?」と呟き、「う~ん……」と考えさせられるものだった。
その時、スバル(僕)の心の内は。
(いつかは、こーゆう事が来るわけか……!?)
――それを見て、アンドロメダ王女様は。
(――フフフ、考えよ考えよスバル。その時、お主がどう心掛けて、どう法体制の組織作りをしていくかじゃ、指示を出すのはお主達なのじゃぞ!?)
――その時、サファイアリーさんは、こう言の葉を呟くのだった。それは笑みを浮かべて。
「フフフッ、それはわかんないわよねー?」
「……」
(そんなのわかる訳がない……)
僕は、心の中で、そう思うんだった。
サファイアリーさんは、こう語る。
「コホンッ! これは、どの企業さんにも言える事だけど、必ずついて周る言葉。
そう、労働体制の意識改革よ」
「労働体制の意識改革!?」
「失敗例は、『3時間も前倒しの弊害』! 成功例は、『報告書の作成記録』を心掛けていく事よ」
「……報告書の作成記録」
「1番の理想体系は、工場・製造業であれば、エキスパート化の『共有資産』にしていく事よ。
そうした分類化や差別化を図りつつ、共有していく事で、次の思わぬ事故を、『未然に防ぐ』事ができるわけよ」
「共有資産……の分類化し差別化したもの、工場・製造業等……」
そう、職業は実に多岐に渡るため、分類化し、差別化を図っていくしかない。
その中でも、このヨーシキワーカの例にあるように、工場・製造業等であれば、大まかにわかっているので、全体の共有資産とすれば、
次の思わぬ事故を、未然に防ぐ事ができる狙いがあるのよ。
もちろん、1人視点での視方なので、限りがある話なんだけどね。
だが、人の数だけ、物事の道理を見ていけば、次の事態への備えが、充分可能なのよ。
「まぁ、人は成功例をただマネるよりも、『ヒヤリハット事例』のように、『失敗から学んでいく方』が、時にいい場合もあるものよ!?
今後にどう活かし、取り組む中で、他の会社様と仲良く共有し、共有資産となれば、
それは、他国から見て、安心と信頼の国と言えるからよ!」
「……他国から見て」
「……安心と信頼の国」
それは、なんだか凄そうな試みだった。
そこへ、クリスティさんが。
「まるで、医療の仁の心得のようね。
過去の失敗をどれだけ積み重ね、亡き患者さんの思いを汲み取り、
次の活かすために、今度どうやって取り組んでいくか……」
これには、サファイアリーさんも。
「フフフ、そうね。まるで、仁の心得ね」
仁。それが医療の根底にあるものだ。
「医術とは、研鑽の歴史に他らないからね。
何の仕事にしても同じだけど、どれだけ長い年月を積み重ねてきたかが、大事になってくるのよ。
それが、仕事におけるプロのプロフェッショナル精神の視方。
あの人の心も、また、同じ、治そうとする意志が、どこかにあるからね。
それは、主目的に助け合うのではなく、他をどう活かしていくかによっても、また、取り組み方が大きく違ってくる。
同じ負の歴史を繰り返さないためには、どうすれば良いのか!?
そう、それは、他者の助け合いの精神なくしては、成し遂げられないからね。
だから、あの人は、集団の力に賭けたのよ」
「フッ、そうね……クリスティ」
「……」
微笑むクリスティさん。満足気だった。
サファイアリーさんは、こう語るのだった。
「月見エビバーガーオーロラソース社の失敗例を学ぶ事によって、他の企業のヒヤリハットをいくらか削ぐことができるからね。
何にしても同じだけど、無駄なものはないって事よ」
「……」
いい顔ね、みんな。あたしは、語り部を続ける。
「『3時間前倒しの弊害』、『複数の要因が考えられてくる』、そうやって、『悪循環を極めていった』わけよ!
まぁ、ザックリとしたものでいえば、
物言わない人を、まるでロボットのように使い倒して、急げ急げで急かしていった訳ね!
常に動きっぱなしの職場環境だからか、早く速く~で、いつも時間に追われるようにして、
仕事の効率化ばかりを急ぎ過ぎたせいで、
例え、新入社員さんの方が入ってきても、そうした作業環境にまったくと言っていいほどついていけず、馴染めず、
目も当てられないような惨事惨状を引き起こし、『自己都合退社』を促していった……!」
これには、アヤネさんが、ミノルさんが、スバル君が、アユミちゃんが。
「自己都合退社……」
「だから、さっきの話で、離職者が相次いだわけか……」
「そんな問題作りをしたからだ」
「あぁ……」
と少女は、その頭を抱えるほどだった。
これには、ほぼみんなも、「あぁ……」と嘆くような思いで、完全に、遅まきながらの失策であった。
それに対して、サファイアリーさんは。
「でも、あたしからすれば、それは過ぎ去った過去である事よ!」
「……過去」
「ええ、敵を知り、自分を知れば、百戦危うからず……。きっと、ここにヒントがあるのよ!」
「……」
スッ……
とサファイアリーさんは、両手を上げるのだった。
「大事なのは、ものの視方の視点で捉える事よ!
1つは、従業員さん。
1つは、会社の視方。
まずは、従業員さんの視方からすれば、
人を大切にしていないと思っていた。
それは、昔からいたベテランの人でさえ、そうした周りの変化には敏感だから、なんとか我がままを言わぬまま、付いて行こうとしたものだけれども……。
ちょっとした周りからのキツイ声もあって、心身共に『ストレス』がかさみ、『逃げ出していっちゃう子』がいたぐらいよ!?
次に、会社側の視方からすれば、
一度、責任を持って雇用している以上は、その人の身も案じなければならない。
危険から遠ざけようとする動きね。
一度でも労災事故が起きれば、その責を負うのは、会社なんだからね。
でも、それだけじゃ稼げないものでしょ!?
だから、仕事の効率化ばかりを急かしていき、雇用している従業員さん達に給与を支払っていた。
その中には、あなた達のお父さんお母さん達もいるから、その下には必ず、未来を担う若手の子供達の将来の人生も預かっているようなものなのよ!?」
「……」
サファイアリーさんは、いい話になるように、まとめてくれるのだった。
「そして、悪い事をしていたのは、あくまでも、その中の人達……。
それは、人の性(さが)である事よ!
あくまでも会社は、名だけの器のようなものであり、問題作りをしていたのは、その中の人達って事よ!?
いいわね? ここだけは何度も言うけど、履き違えちゃいけないわよ!? 少年少女達!」
「……」
それは、僕達、あたし達、未来を担う少年少女達に対する、課題だったんだ。
☆彡
【会社とは何か!?】
「――会社とは、何か!? あなた達に問うわ」
「……!」
「ここまで聞いてみて、会社って恐いなぁ……って少なくとも思ったでしょう!?」
「うん……」
「だよね……」
少年少女達は、少なからずも恐れていたわ。
わかってる、こうなるという事は。だから、あたしはこう言うの。
「十人十色……。人にはいろいろな考え方の違いがある以上、ちょっとした出来事で、意見の合わない衝突が起こる場所でもあるものよ!?
それが、人が集まる場所なの」
「人が集まる場所……」
「教室とかは……?」
それに対して、サファイアリーさんは。
「まだまだ、そんな比じゃないわよ……。
学校の教室は、あなた達世代で言えば、せいぜい15、16人程度でしょう」
「……」
確かに。
スバル君、アユミちゃんが通っていた200年後の世界の学校の教室には、15、16人ぐらいしか生徒さんがいない。
歴史を感じさせるほどだ。
これが、超・少子高齢化社会の波だ。
「月見エビバーガーオーロラソース社は、雇用している従業員数は、200人以上よ!」
「……」
「その中でも、争いが起き難いのは、秘して黙っている人達がいるおかげなのよ!? 上下階級の規律があるからね」
「……」
生々しい……。
「人の意見交換ができる場があっても、極々わずかな所よ?
人のコミュニケーション能力を見ても、どちらかが悪くても、年配の相手だったり、在職の期間の長い年下の相手だったりもする。
中には、自分よりも年下の子について、あれこれ文句を言われたりもするし、意見指示を聞かないといけない時もある。
それが社会の中で、生き抜いていくという事よ!」
「……」
「それが、嫌な場合は、他の人にはない、特別な能力を持ち合わせなければならないけどね……」
「……」
「これができる人が、中々いないのが、悲しい実情なのよ……」
「……」
う~ん……
とこれには、一同、考えさせられる思いだった。
☆彡
【社会で生き抜くための武器を持て】
――そこで、アユミちゃんから、サファイアリーさんに、こうした意見が飛んできたのだった。
「――でもさ、パートから、どうやって上に上がればいいの!?」
「方法は、1つしかないわ!」
「それは?」
「そう、それは、免許であり資格取得よ!」
これには、スバル君もアユミちゃんも。
「免許……」
「資格取得……」
それに対して、サファイアリーさんは。
「月見エビバーガーオーロラソース社みたいなパン工場で働くのならば、『衛生管理者の資格』!
これには受験資格がなくてね。
何も持っていない一般人でも、その受験資格がある事から、その資格試験に臨めるわけよ!
もちろん、ボイラー、危険物、電気、消防、冷凍関係でもね。
他の人にはない、特別な能力を持ちたいのであれば、こーゆう資格試験制度を知り、実地で受けに行けばいいわけよ!」
「で、どうやって取ればいいの?」
そう、そこが大きな課題だ。
今までは、多くの人達が、一般人が、なかなか手が出せないのは、実はこういったところにあるのだ。
「方法は、大きく分けて3つ!
1つは、小中高、大学を通していく中でのカリキュラムの中に、そうした試験試験制度があり、受ける事よ!
これが70%を占めるわね。
1つは、職業訓練校の利用。半年間のユニットプログラムの中に、選考している資格試験制度があり、受ける事ができる!
これが20%を占めるわね。
1つは、スーパーやデパートやドラッグストアなどで置かれている、資格取得雑誌を利用する事。
一括購入買いの価格は、高額だけど……。
自分のペースで勉強できるから、案外とこれで合格している人達もいる。
これが9%を占めるわね」
「んっ!? 残りの1%は!?」
「あぁ、これは完全に、自己学習の範囲ね……。
さっきの資格取得雑誌からの応用で、自分でウェーブグローバルで調べてから、
開催される資格試験の年度・月・日を調べてから、自分で応募し、コンビニなどで、その資格試験を受けるための費用を出す訳よ。
最も安上がりな手段ね。
ヨーシキワーカさんが、丁度これに当たるわ。
月見エビバーガーオーロラソース社在職中に、これをやっていたのよあの人……」
とこれには、アヤネさんも。
「1人で自己学習って……、えっ……それってスゴイんじゃない!?」
「まぁ、何度も落ちてるからね……。あの人、諦めが悪いのよ!? このままじゃ、一生パートだからね……。親孝行にも報いないといけない」
「……」
とこれには、ミノルさんも。
「だが、それは、完全に箱洗いで『使わない』のではないのか!?
つまり、その人は、たった独りで勉強して、それを取ってしまったわけか!?」
「ええ、主に90%は、ヨーシキワーカさんが1人で勉強して取ったようなものよ。
そして、ここには、弟君が間接的に、仕事現場での知識や経験を活かして、勉強を教えてくれたからよ。
これには、お父さんもよ! どちらも工学系を出てたからね!
そして、自分のお金や親から出してもらった分がある訳よ!」
とこれには、ミノルさんも。
「なるほど、だから、その道へ進んだわけか!」
とこれには、アヤネさんも。
「何だ、蛙の子供は、しょせんは蛙だったわけね」
「あははは、まぁ、確かに……。でも、ここで、人には、三通りの道へ勧めるわけよ!」
「三通りの道!?」
「ええ、そうよ、
1つは、そのまま、月見エビバーガーオーロラソース社で、階級を踏むなら、『衛生管理者の資格』ね!
これは、正社員の人達が持っていて、パートの人達が持っていないものよ。
1つは、月見エビバーガーオーロラソース社を辞めて、
どこかの企業に雇ってもらえる場合ね。
何か1つでも多く持っていれば、雇ってもらえる企業もあるものよ。
そして、もう1つは、そうした知識を活かし、作家への道!
あの人が考えたのは、二刀流だからね! 『仕事の趣味の両立』よ!」
「仕事と趣味の両立……!?」
「電気関連でも何でも、事故れば、全身不随に陥る……。表の世界では、当たり前の話よ?
でも、そうした危険な現場でしか学べないような、色々な知見があり、出来事があり、体験談があり、確かな知識と蓄えになっていくとしたら……!?」
「……」
「なんだかいい作品になると思わない!?」
ゾクゾク
と身震い覚えた。いや、武者震いだ。
☆彡
【未来の希望を折る人も、中にはいる】
――そこへ、サファイアリーさんに代わり、声を投げかけてきた人がいた。その人はクリスティさんだった。
「――でもね。これができる人は、とんと少ないものよ?」
「……!」
僕達は、そのクリスティさんに振り向いたんだ。
彼女は、こう語る。
「200人いて、パートは80から90%を占め、正社員さんは10%を占める。
仮に、これが100人だとしましょうか?
パートの人は、80から90人ぐらいになるから、正社員の人は10人ぐらいになる。
おおよそ、8人で1人の優秀な人を、支えている訳よ」
「……」
この時の計算式は、こうなる。
パートは、200×0.8=160と、200×0.9=180。
正社員は、そのまま、200×0.1=20となる。
さらに、200人から100人単位に切り替えた場合、単純計算で、割る2をしていけばいいわけだ。
「でもね。算数ではこうだけど、実社会に出れば、これが通じなくなってくるのよ!?
それが、『職権階級システムのピラミッド』よ。
社長、取締役、部長、課長、係長、主任と呼ばれる人達ね!
月見エビバーガーオーロラソース社を参考にすれば、
本会社の代表の取締役の人がいて、この人が頂点なの! いわゆる株主様ね!
次に工場の責任者である、工場長様。
実は、ここからいくつもの枝分かれしていって、国内に30か所以上もあるからね。グループ会社も含めていけばね。
次に部長、課長、係長、主任、平社員、そしてパートとなっていく訳……だから、さっきの計算式が、まるで役に立たなくなってくる。
それが、大企業の職権階級ってやつよ!
そして、もしもの為の資本金があるものよ」
これには、アユミちゃんも。
「……職権階級」
「……もしもの為の資本金」
と呟くものだったわ。
クリスティ(あたし)は、こう続けるの。
「あの月見エビバーガーオーロラソース社は、国内に30ヵ所以上もあって、雇用している従業員数は、延べ1億人以上だからね。大企業様々なのよ」
「1、1億人~~!?」
デタラメにすごい数字だった。
クリスティさんは、こう語る。
「ええ、そうした人の世の中の威権力には、勝てないって奴よ!
そうした中で、意見交換のぶつかり合いが起こり、逆らうようで、あれば……これよ」
クリスティさんは、自分の首に手刀を宛がうのだった。
これを見た僕達は。
「クビ……か」
「ええ、従業員の整理解雇(リストラ)がこれに当たるわね」
「……」
「リストラは、従業員の整理解雇と呼ばれていて、業績の悪化や赤字経営不振などの理由により、人員割れが起こる事よ。
そうした風の噂を、正社員たちが聞いたら、どうなる?」
これには、アユミ(あたし)達も。
「あっ……」
と呟きを落とし、それに勘づく思いだったわ。
クリスティさん(お姉さん)は、続けてこうも語るの。
「それが原因で、よく上の人達は、自分よりも弱い人達に対して、パワハラを仕掛けてくるわけよ。
そして、そうした煽りを受けて、また別の人が、パワハラを受けていく訳よ。
いわゆる、やらせね」
「やらせ……か」
「人間関係の悪化って知ってる!?」
「……!」
それは、前に行ったアヤネさんの言葉だったわ。
「そうね、前に、アヤネさん、あなたが言った言葉よね!?」
「……」
コクリ
と頷き得るアヤネさん。
「これも、この売り上げ利益に絡んできていた訳よ。
ちょっとできる子がいても、その後輩君が、
例えば、ヨーシキワーカさんみたいなベテランの人に、上から目線で物事を言ったらどうなる!? そうした注意をしてきたら!?
しかも、それが複数人いた場合は!?
自分たちが、そうした仕事をないがしろにされて、バカにされたと思うわよねぇ~!?」
『やってられるか!!』
『こんなところ辞めていってやる!!』
『あんたの相棒、あの人早過ぎっぞ!? この仕事場(これ)に付いていけん!!』
『もっとあなたに教わりたかったです』
『あの人、何て言っているかわかりません!? (通訳をお願いします)』
『どーゆう手と足の使い方をすればいいんですか!?』
『あのヨーシキワーカさん。もっと早くから出てこられませんか!?』
『あんたじゃないとはかどらない……』
「――そうした辞めていった人達の苦情の声が挙がっていたものよ?
そして、その中には、少なからず、他のラインの人からの物言いも含まれていた。
『もう、持ってこないでいいと言われました……』
『ヨーシキワーカさん、菓子パンラインに箱を、今持っていこうとしたんですが……入れなかったので、長い廊下の方に持っていきました……』
『必要ないと言われました……。何で商品の入った箱が、あんな所に置いてあったんですか? 普通邪魔にしかなりませんよね!?』
『あれでよく、深夜の奴等が、箱が足りんとよー言えるのぅ』
『箱を、そのラインの人に、ワザと倒されました……これって、何の嫌がらせですか……!?』
『歩いていたら、後ろの人から押されました。邪魔だって』
『見てわからんとね!? 言われました……どうしたらいいんですか!?』
『ここ、金低くかねぇ……。まだ、別の知り合いが行ってるところがマシとよ!?』
『キッツ、割に合わんぞこんな職場、あんた良くこんなキツイところ続けてられるな!?』
『ここの(洗浄機の水タンク)掃除ぐらいで、500円(3.8米ドル)ぐらい追加でもらってもいいぐらいぞ!?』
「――そうした不満の声が挙がっていたものよ。
だから、ヨーシキワーカさんも、ついに、そうした作業環境についていけず、ついに『逃げるようにして辞めて行った』のよ!
昔の会社のベテラン(人)が語るには……。
『今と昔とで、随分とあの会社は変わってしまった……』
『どうこうを、決して上手くは言えないが……。雰囲気や空気が、何だか息しずらいものになっていって……』
『もう扱い切れんぞここ……ついていけん……』
「――そうした声が挙がっていたの」
そこへ、スバル君が、話しかけてきて。
「息がしずらい……!?」
それに対して、あたしは、こう答えたの。
「……!? ええ、ベテランほど、そーゆう傾向が強いって事よ。
ヨーシキワーカさんも、そうした声を聞いていてね。
自分が辞める事によって、そうした変化に気づかせなかったからよ!?
それを周知の事実のように、周りにわからせるためにもね……!?
まぁ、周りにはそうした『誤解と偏見の目』が、逆に立ち過ぎたんだけど……も!? その『必要性』があったって事よ……!?」
「……」「……」
「……」「……」
「……」「……」「……」
これには、少年も少女も、ミノルさんもアヤネさんも、アンドロメダ王女様もシャルロットさんもLちゃんも、なんだか難しい顔を浮かべていたわ。
そこへ、ミノルさんが。
「その必要性があったから、わかっていて、辞めていったのか?」
「うん……」
と頷き得るクリスティさん。
――そこへ、アンドロメダ王女様が。
「よーく聞いておけよ、スバル」
「!」
「異星人であるお主達が入ってくる以上、そうした現場には、必ずといっていいほど変革が起きるものなのじゃ!」
「変革……!?」
「うむ! エメラルティ、サファイアリー、クリスティ等の娘子の言う通り、昔からいた、その職場の者には、
特にベテランさんには、新しい変革としてか映らぬのじゃよ!」
「……」
「そして、そこには、なんだか付いていけんところがあるのじゃ。
それは、なんだか雰囲気や空気が変わり、息しずらさを感じるものがあるからなのじゃよ!?」
「息のしずらさ……」
「ウムッ! 数人程度の外国人労働者類でも、何だか違和感を覚える事があるぐらいじゃ。
外国人労働者が来た……と。
ここでは、お主たちは、宇宙人としか見られぬのじゃよ」
「……」
「それをわかっていながら、職への斡旋の話を推し進めていくのじゃ……。存外と難しさを覚えるものなのじゃぞ!? こーした話は……!?」
「……」
「そうした環境下に晒されて、今後、どう生き抜いていくかじゃ……!」
「どう生き抜いていくか……」
課題は、山積みだった……。
――とそこへ、女医さながらのクリスティさんの意見が飛び出してきて。
「熟練者(ベテラン)さんが、1人抜け出したぐらいじゃ、動揺は微塵も起きないけど……。
例えば、人体の骨盤を預かるようなヨーシキワーカさんみたいな人がいて、その人が、抜け出した場合はどうなると思う……!?」
「!?」
それは、人体の構造理論に見立てたものだった。
クリスティさんは、続けてこう語る。
「骨盤は、赤血球、白血球、血小板を生成する大事な骨髄が当たるんだから、大変な事になるわよねぇ~!?
きっと、その作業量に誰しもが付いていけず、代わりが効かない人だったのよ……!?
そんな人が辞めたんだから、昔からの顔見知りもある人達、つまり、ベテランさんが次々と辞めていっては、
人体は、機能不全と陥るわけよ……うん!」
自分から言っていて、思わず納得してしまうあたし。
続けて、こうも語る。
「だから例え、その後、ヨーシキワーカさんが1人戻っても……、どうにもできず……終始お手上げだったには、変わりはないわ……!」
「……」
「あたしだって、そう思うしね! だから……! 工場内の周りの人達から、『新生しないとダメ』って事よ!?」
うん
と頷き得るクリスティさんが、そこにいたのだった。
――そして、そこには青ざめた感じのスバル君がいて。
「――……ねぇ、王女様……。もしかして、ホントにベテランさんって、抜いていっちゃうの!?」
「抜けるじゃろうなぁ~」
「……ッッ」
ショックを受ける。
「わかるか? スバル? これが変革なのじゃよ!」
「変革……」
「どこの企業に置いても、雇える人数には、限りがある」
「……」
「そうしたチャンスの話が、降りてくるのじゃよ。是が非でも、そうしたチャンスの話を掴み取るしかない訳なのじゃ」
「……難しい話なんだね。異星人の移住って……」
「外国人の労働者にしても、そうなのじゃよ……息のしづらさを覚えるじゃろうが……こればかりは、何とも言えんところがあるのじゃ……」
「……」
☆彡
【複合的な視点の視方 プリズム視点、スペクトル視点】
【書記官と秘書】
――時に、ミノルさんから、こう告げられるものだった。
「1つ、聞いてもいいかなお嬢さん」
「「「はい」」」
答えたのは、3人同時だった。
これには、ミノルさんも……。
「あっいや……こっちの緑の娘で」
「……」
答える事になるのは、エメラルティさんだった。
「君は、こう言ったね? トラックの運転手さんが、突然、あの会社さんから、契約を切られて、配送トラックが半分まで減ったと?」
「はい……」
「では、次に、青い君」
「!」
「君の説明は、とてもわかりやすかった。どうもありがとう、おかげで良くわかってきたよ。
その3時間の前倒しの影響で、配送トラックが、半分まで激減していたんだね? 売り上げ利益の帳尻合わせのために?」
「はい……」
「なるほどなるほど、これで、1つ合点がいったよ。なぁ、アヤネ」
「ええ、そうね、あなた」
そこからは、微妙な間が流れるのだった。
「………………」
ミノルさんは、顎に手を当てて、考える人になっていた。
「しかし、これではまるで、そう、『ビジネスホテル』みたいなやり口だな……。必要最小限に抑える取り組みの仕方だ。
それじゃあ、いつまでたっても、売り上げ利益なんて、戻ってこないだろう!?」
「確かに、そうよね。でも、何でそうなっていったのかしら?」
?
挙げるは疑問符だった。
――そこで、エメラルティさんから、こんな意見が飛び出してきたのだった。
「――道理を読み解いていくためには、複数の視点で、色々な角度から、それを読み解いていく事が1番だと思う」
「複数の視点……?」
「色々な角度から……?」
「……」
――とこれを見兼ねて、アンドロメダ王女様が。
「――ほぅ! あの娘子、中々いいところを突きよる、関心感心!
複数の視点の視方ときたか! さしずめ……『プリズム視点』と『スペクトル視点』じゃな!」
――その声に、相槌を打つように、シャルロットさんが。
「――……そうですね、王女様!」
とこれには、スバル君も。
「あのぅ……プリズム視点にスペクトル視点って!?」
「何じゃ、聞こえてたおったのか……スバル!?」
「……」
「フッ……まぁ、良い。
実はな、プリズム視点、スペクトル視点というのは、『複合的な視点』を持って、『道理』を見ていく事に繋がってゆくのじゃよ。
これを、プロトニア同士の間のいさかい同士の原因を沈めてゆく事にも、繋がってゆくのじゃよ!?」
「いさかいの原因を……沈めてゆく……!?」
どーゆう理屈なんだ。
王女様は、こうも言うのだった。
「彼等彼女等は、自分の星や、他の星々まで渡り歩いておるのは、知っておるじゃろう?
そこで、ちょっとした出来事や揉め事なので、ちょっとした人事事案が出兼ねないのじゃ!?
まぁ、双方というより、多方面的な意味での意味合いの方が強くてな。
血の気が多いという事じゃ。
血気盛んなのは、今に始まった事ではなくてのぅ」
「揉め事……!?」
「ウムッ! ミッションやクエストの『重複依頼』じゃな!
よくある出来事なのじゃ! これが……!
受注した者が複数人におって、Aの星に集まると仮定しよう。
そこには、同様に、BCDの星々から集まった強者たちがおったのじゃ!
じゃが、依頼案件は1つだけ、その景品をかけて、血で血を洗う痛ましい出来事が起こったのじゃよ」
「……」
「じゃがな……。決着の折り合いもつかず、このまま長引けば、他のファミリアを巻き込んでの、
いさかいの原因から発展して、いずれは、ファミリア同士の抗争になり兼ねないものじゃった……」
「……抗争!? ……それってもう、戦争手前って事!?」
「そこまでは言っておらん。
それに近しい状態という事じゃ。血の気が多いのが1つの原因なのじゃよ」
「……」
「その為の手段があって、その原因を、浮き彫りにしていく事が狙いなのじゃ。
ただし、この場合、『徹底追及してはならない』という『鉄の掟』が定まったじゃよ!」
「徹底追及してはならない……。鉄の掟……」
「うむ、『やり過ぎ』は、『過度も禁物』……という事なのじゃよ。
やられるのは、いつだって、弱い立場の者達なのじゃからな。
ファミリアを悪く言ってしまえばどうなる?」
「……」
「あれは、国よりも重い、星の組織という視方なのじゃぞ?」
「……」
「そこで、舞い込んできた依頼があって、その事件解決の糸口を探っていく事じゃったのじゃよ。
そこからじゃ!
人事部門の解決場所が、新たに設けられていったのはな――」
「……人事部門の解決場所……」
「ウムッ! そうじゃスバル!
そこからじゃ、彼等彼女等が、本格的に動き出していったのはな……。
取り次ぎ回しの電話やメール依頼が、ファミリアを通じて舞い込んできては、
対応と対処に当たるのは、いつも、秘書の役目じゃった。
色々な星々から、案件が飛んできている以上、その複合的な視点の視方に立って、物事を道理を読み解いていくのは、
実に至難の業なのじゃよ!
その時に必要になってくるのが、この『プリズム視点』と『スペクトル視点』の視方なのじゃ!
そうじゃなぁ……これは、わかりやすく言えば、
プリズム視点とは、対象の星の出来事であって。
スペクトル視点とは、星々のプロトニアや秘書達から見た、複合的な視点の視方じゃな!」
これには、スバルの奴も。
「へぇ~……そーゆうのがあったんだぁ」
とそこへ、Lちゃんが。
「でもね、スバル……。それ、口で言うのは簡単でも、意外と難しんだよ~ぉ」
「何で?」
「何でってそれは、ファミリアの数だけ物の視方が違うし、自分の意見を曲げずに、『徹底して洗い出す』まで、『認めようとしない』、『人もいる』ぐらいなんだよぉ!?」
「うわぁ……きっつそう……」
「どこも、似たようなもんで、任務失敗は、自費も絡んでくる事もあるからね……。
ミッションは、まぁ、大丈夫でも……。
クエストなんかは厄介もので、こっちは依頼者が、一般人である可能性が高いから、その額に見合うだけの余分なお金を持っていないんだよ……ぉ。
だから、いつも、そんな時に限って、重複依頼がきたら、どうなるの!?」
「うわぁ……きっつそう……」
「そんな時に、頼りになってくる人がいて、秘書、という存在なんだよ。
そうした豊富な知識と知見のある人達で構成されていて、強力な情報網を持っている人達だからね。
一般的に、男性の方は、『書記官』といって、女性の方は、『秘書』というんだよ。覚えておいたら?」
「書記官と秘書か……ふむぅ……」
と僕は、Lに言われて、今後を考えて、その2人の人材の事を考えるのだった。
それは言われてみれば必要な事で、
例えば、書記官はヒースさんで、秘書はシャルロットさんみたいな人だった。
まぁ、どちらもプロトニアらしいけど。
イメージ的には、語弊はないとみていい。
そんな僕の様子を見詰める人がいて、その人は、クリスティさんだった。
彼女を推しても、なんだか考えさせられるような、節が、あるようだった。
「………………」
さらに、そんな彼女すら見ている人がいて、それは、シャルロットさんだったんだ。
「フフフ」
その人はそんな笑い声をあげ、不敵な笑みを浮かべていた。
考えられる線は、ただ1つ、スバル君の秘書に、クリスティさんを当てる事だった。
彼女ほど、物事の道理をよく見ている人物がいなくて、裏の恐い世界にもいたのだから、そうした知見と知識は、随一、この中でも飛び抜けている貴重な存在なのだ。
そればかりは、エメラルティさんでも、代わりができない、ところでもあるわけだ。
彼女の存在は、今後、大いに役立つ事を、この時から画策していたのだった。
☆彡
【箱洗いは、基本4人体制】
――そんな様子に気づいている人がいて、それは、さっきまでの語り手のサファイアリーさんだったんだ。
「……」
彼女は、こう語る。
「箱洗いの人員はね、全員パートで、基本4人体制だったからよ」
「!」「!」「!」
彼女の声掛けもあって、意識を傾けていくのは、僕、クリスティさん、シャルロットさんの3人だった。
彼女の言葉は、こう続いていた。
「辞める年の1月ぐらいに、新入社員さんが入ってきて、計5人。
辞める年の4月ぐらいに、ヨーシキワーカさんが抜けて、計4人。
数字的にみても、何らおかしくない。
違うのは、せいぜい、『大ベテラン』と『新入社員さん』との『力量による差の違い』だけ!」
呟きを落とすは、ミノルさんにアヤネさん夫婦に加え、アユミちゃん。
「大ベテランと……」
「新入社員さんとの……」
「力量による差の違い……」
それが、わかりやすい例えだ。
彼女は、こう語る。
「この時のポイントになってくるのは、力量の違いを補う人員不足……。そう、ただの人手不足だったせいよ!」
これには、恵ご夫妻を推しても。
「ただの人材不足か……」
「やっぱり、どこもそうなのよねぇ……」
当たり前のものの視方だった。
サファイアリー(彼女)は、続けてこう語る。
「うん! そして、もう1つあって、それが労働時間帯による違いだった!」
これには、アユミちゃんも。
「労働時間帯!?」
「ええ、そうよ!
ヨーシキワーカさんの話では、自分が辞めるまでの間は、夜7時まで受け持っていた。
キーシストマ先輩は、夜5時まで。
新入社員さんは、夜5時上りを確認している。
他2人は、朝組むシフト制なので、ここでは除外と見ていい。
さらに、次のポイントになってくるのは、シフト時間帯の変形性の労働。
ちょうど、これに当たり人物がいて、キーシストマ先輩だったという話だわ。
ただし、これは、前々からであり、そのキーシストマさんの能力を著しく落としていたものだった……。
おそらく、その全力の半分も出せず、おおよそ30%ぐらいの力だったと思うわ。
当然、そんな変形性労働時間になっているものだからか、力は出し切れず、その人の3分の1ぐらいの力しか出せない……のだから、手抜きになってしまう。
この人材不足と変形性労働時間のシフトタイムによって、
みんなは、『知らない』から、周りから騙されていった口であり、
その人、たった1人の人材不足のせいで、600万円から800万円まで、落ち込んだと……みんなは、思い込み、思い違いをしていたようなものなのよ!?
あなた達は、本当に、その人たった1人抜けただけで、そこまで目に見えて、落ち込むと……本気で思う!?」
これには、少年少女を推しても。
「「おもわな~い!!」」
アユミちゃんが、スバル君が。
「おかしいよね~それ?」
「うん!」
そう、口々に言ったものだったわ。これには、サファイアリー(あたし)も。
「うん、そう、おかしいのよ!」
「……」
そう、大事だったのは、人材不足と非正規雇用の労働時間だった。
☆彡
【人材不足を補うための非正規雇用の労働時間帯】
――サファイアリーさんは、続けてこう語る。
「――次のポイントになってくるのは……うん! 人材不足を補うための非正規雇用の労働時間帯(タイムシフト表)ね!」
とこれには、アユミちゃんも。
「人材不足を補うための非正規雇用の労働時間帯(タイムシフト表)!?」
「ちょっとここで、平日の月曜日から金曜日までのものと、休みの日の土曜日から日曜日までのものとに、分けてから、
一から考えた方が良さそうね!」
――とこれには、アンドロメダ王女様も。
「――ほぅ! 平日と休みの日に分けてから考えてみる訳か……」
次いで、シャルロットさんが。
「まぁ、確かに、それならば、物事の道理の視方が、何だかわかってきそうですもんね!?
警察の捜査でもそうですが、容疑者の曜日や時間帯から割り出していき、犯罪捜査の洗い出しにも、使っていますもんね!?
まぁ、少々言葉に語弊を覚えますが……まぁ、何となくわかればいいでしょう。
後は、ボードや、メモ帳に取る事も必要ですね」
「ふむぅ……。今後の何かの参考になるのやもしれるしの……。シャル、メモを取っておけ」
「はい」
――サファイアリーさん、こう語る。
「あの人が、仕事に出ていた曜日は、金曜日、土曜日、日曜日、月曜日、火曜日の5日間だったらしいわ」
で、ここでアヤネさんから。
「――つかぬ事を聞くけれど、じゃあ、その人のお休みの日は?」
「それは、水曜日と木曜日の2日間だったそうよ」
「水曜日と木曜日ね」
つまり、こうなるわけだ。
仕事に出る日は、月曜日、火曜日、金曜日、土曜日、日曜日の5日間働いて。
お休みの日は、水曜日と木曜日の2日間になるわけだ。
やっぱり、非正規雇用だから、なんか違う。
――まずは、金曜日から。
「――まずは、金曜日から当たりましょうか」
「……」
「この日出ていたのは、計4名の人材が、充実していたそうよ。
朝働く人材は、イプシロスイティヤさん、ヴィウノビブリオさん。
イプシロスイティヤさんは、朝6時台に出社し、退社するのは昼2時で。
ヴィウノビブリオさんは、朝7時台に出社し、退社するのは昼3時だったそうよ。
ここで、注意したのは、この2人は、7時間労働であった点よ!」
とこれには、ミノルさんも、アヤネさんも。
「7時間労働か……」
「あら? 正規雇用の一般人とは、やっぱり少し違うのね……。普通はどこも8時間なのに……。
へぇ~……会社との雇用契約上、そうなっていたってわけね!?」
【――一般的に正規雇用の人達は、8時間労働に該当する】
【これは、朝8時出社し、夕方5時上りとなっている。休憩は1時間が目安だ】
【ただし、非正規雇用の場合は、その限りではなく、7時間や6時間労働であったりもするものだ】
【酷いブラック会社においては、4時間労働という雇用契約を、結び付けてくる会社も、時にはあるぐらいだ】
【これは、社会保険を嫌ってのものである】
【社会保険とは、雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金と呼ばれ、会社側と従事者の間で、互いに折半して、老後にかける保険制度の事である】
【大事な制度だ】
【……だが、その法的制度を知っているブラック会社は、意図した狙いがあり、これを外すキライがある】
【そもそも、社会保険の適用制度を受けるためには、1週間で20時間以上働いていることが条件なのである】
【従って、よくこーゆう手が加えられている】
【ブラック会社は、人を雇用する際、4時間労働に定め、4日間働いても、16時間しか働いておらず、この適用受けられない人達も出てくるわけだ】
【その為、老後保険の掛け金を納める事もできず、後々になって後悔し、悲痛な声を上げているぐらいなのだ】
【また、データ等の改ざんにより、タイムカードの不正を執り行う事もできる】
【一説によれば、ハッキングなどのウィルス被害を受ければ、その従業員等の個人情報の流出ばかりか】
【この社会保険を受けるための土台すら、危うくし、年金生活における受給者すらも、破砕(クラッキング)し兼ねないほど危ういものなのだ――】
「次に、出てくるのは、キーシストマ先輩であることよ。
この人は、変形変形性のシフトタイムの人でね。
その日は、朝10時だけど……。
曜日よっては、朝6時だったり、朝8時だったり、朝10時だったり、時には、昼12時だったりした事もあったそうよ。
つまり、一概には言えない人……って事、この人だけ、8時間労働ね」
「……」
先輩のキーシストマさんは、変形変形性のシフトタイムの人だった。
朝6時、朝8時、朝10時、時には昼12だったりした事もあったらしい。
さらに、この人だけ、8時間労働である。
「次に、ヨーシキワーカさんは、ほぼ昼12時スタートして、夜7時に退社していた事から、その時間帯は、6時間だったそうよ。
時には、朝10時スタートしてから、夜7時に退社していて、8時間労働だった時もあったらしいけど……。
残念ながら、その会社には、『不適格な存在』と見て良さそうね……。
簡単にわかりやすく言えば、それは、『通勤距離』による問題だったそうよ。
自宅から会社まで、往復4時間もかかるというデメリットを抱えていたの。
その時は、1時間ぐらいしか、自分の時間のゆとりが持てなくてね。
時には、残業をした日には、睡眠時間の6時間を削ってまで、5時間しか寝ていない日もあったの。
それが、原因で、ちょくちょく高速鉄道の寝過ごしがあっていたらしくてね。
体験談に基ずく、実話らしいわよ!」
――とここで、シャルロットさんが、メモを取っていた。
「――メモメモ」
とここで、ミノルさんが。
「それはいかんだろ!?」
「そうね……何で、許したのかしら!?」
「そんなの簡単よぉ、パート労働者だから! いつでも『雇用契約』を、『あっちから切っちゃう』事ができた訳よ!
あくまで、あの人は下だからね。
つまり、いつでも『使い捨て』ができた……!
本当は、正社員当用の話だったんだけどね……。
面接の時にあって、それができないなら、8時間から6時間労働に下がり、その上で社会保険の適用になった訳よ!
当然、給与だって、正社員からパートの最低賃金まで落ち込んでくるから、雀の涙ほどのものよ?」
「会社側は、社宅を出したりは?」
「パート労働者よ? そんなものはないわ!」
「じゃあ、アパートを借りての住み込みとかは?」
「電気代、水道代、ガス代、食事代の生活費を引いていけば、大赤字よ!! 借金をし兼ねないわ!!
だから、終始折り合いの話がつかず、そうなった経緯があるわけよ!?」
とこれには、ミノルさんも。
「なら、雇用契約上、打ち切りだな!!」
「待って! つまり、通勤距離に、そもそもの無理があったって事は、『何かが生じてくる』わよね!?」
それに対して、サファイアリーさんは、こう切り返してきて。
「ええ、そうよアヤネさん! まさにそこに『焦点』が充てられてくるわけよ!!」
「……!」
「そーゆう人達が取る行動は、いつも、『精神論』や『根性論』からくるものよ!
大概は、外国人労働者に、こーゆう傾向が強く、その会社に雇われている身の上じょう、『人事を尽くそう』としてくれるものよ!
日雇い労働者が、良く働いてくれているものでしょう!?
あーゆう精神論に、近いという事よ!
一般人の多くが、30~50%ぐらいの力に対して、
そーゆう精神論の傾向にある人達は、50~70%ぐらいの力を出してくれている訳よ!
ヨーシキワーカさんも、その例に違わず、2時間分の作業量を埋め合わせするようにして、自発的に動き、
如何にすれば、効率的かを考えていたような人よ!?」
「……」
「うんっ! その時間帯で働く人達のプロフィールは、だいたいこんなものね。
ここには、大きく、その人達1人1人の精神論も、作用し合って、複合的な要因が複雑に絡み合いながら、影響を及ぼし合っていた訳よ!」
――で、シャルロットさんは。
「――うん、だいたいこんなものね」
とあたしは、メモ帳に簡単に書き記したわ。
そこへ、左右から覗き見る人達が出てきて。
「ほぅ……」
「へぇ、こうなっていたのか……」
それは、アンドロメダ王女様にLちゃんだったわ。
それを見てくるだけの人達に対して、あたしは、こう言うの。
「口じゃ、どんなに言ってみても、良くわからないところがありますからね?
これが、原因で、問題に繋がっていって、多くの周りの人から、誤解や勘違いに繋がっていったのでしょう!?
このように、表にすれば、意外と良くわかるものなんですよ!?」
金曜日の内容は、
朝6時、イプシロスイティヤ出社
朝7時、ヴィウノビブリオ出社
朝10時、キーシストマ出社
朝12時、ヨーシキワーカ出社
トラックの積み荷卸、この時点で終了。
昼2時、イプシロスイティヤ上がり
昼3時、ヴィウノビブリオ上がり
夕方7時、キーシストマ、ヨーシキワーカ上がり。
「ふむぅ……。何で、そこまで売り上げ利益が落ち込んでいって、そこまでの騒ぎの原因へ辿っていったかじゃな!?
まぁ、ここまで、聞いていれば、何となく読めてきたわ!」
「……」
アンドロメダ王女様が、そう口を零し、Lちゃんが覗き見ていたわ。
それに対して、シャルロット(あたし)は。
「……Lちゃん。どうすれば、人欺き、惑わし、騙し、責任を負わせ、『盗り立てる』事ができると思いますか!?」
「え……!?」
「あたしならば、こうします!」
パタンッ
とあたしは、書きかけのメモ帳を閉じるのだった。
「……今、『メモ帳の中身』が見えますか?」
「……見えないよ」
「これが、『外から見た人達の視方』なのですよ!?」
「……?」
「で、だからして、今中にいる人達から、『外にいる悪い人達』に、『情報が流れていったら』どうなりますか……!?
その御本人様を通さず、その人の悪い噂話が立ち、責任話の結びつきが付いていったとしたら……!?
それが、問題作りであり、責任を負わせようとする、集団の無理解の声なのです」
「……」
「外の人達は、中の様子なんてわかりませんものね?
悪い事を言いふらす人がいて、その人達伝いに、情報ソースだけが流れていく仕組みなのです。
これには、『騙された親』や、『傀儡の兄弟や姉妹』が絡んできています」
「騙された親や……」
「傀儡の兄弟姉妹……」
「そう、周りから騙すためには、まず、『何も知らない親族』からなんです。
話の上手い人がいてですね。
例えば、『変声器』の類とか……『音声レコーダー』を使ったものだとか……。『特殊詐欺』とはそうしたものなんですよ!?」
「……」
そう、特殊詐欺が絡んできているのだ、この事件には。
シャルロットさんは、こう続ける。
「そして、金包みの示談金の話で、丸く収めようという姑息なやり口です。なにも、『付き合う必要がありません』」
「……」
「そうですね。
たった1人の人材が抜けたぐらいで、
毎月の売り上げ利益が落ちていくものですから、その悪い表面上ものでしか、人は捉えず、わからないものなんですよ!?
そうした声に、上手く惑わされ、『話のウマを合わせていった』……のだとしたら!?」
「まさか……!?」
「はい、人を欺き、惑わし、騙すためには、その『内部情報を伏せ』、『赤字の売り上げ利益』だけの『被害を際立たせる』ことによって、
企業側が、損害を被ったと、言えるものなんですよ!?
代わりに、その人には、責任を持って、支払いに来い、と堂々と言える口なんですよ!?」
これには、アンドロメダ王女様を推しても。
「なるほどなぁ……」
「外からじゃ、『中なんてわからない』んだ……!?」
「この講義は、とてもタメになるものですね!?
そうやって、『本人を除け者』にして、その『周りの人達』から『騙していった』のですよ!? その気を動転させるようにして……。
そうした場をおかしくさせて、
騙しの手口なんて、誰でもそうですが、知ろうだなんて思わないですからね!?」
これには、Lちゃんを推しても。
「……」
(騙しの手口なんて、知ろうだなんて思わない……?)
「フフッ、意表を突くという事です」
――金曜日。
サファイアリーさんは、こう語る。
「――まず、金曜日は、さっきも言ったように、作業員が4名揃っていた状態なので、充実していたらしいわ。
その作業量は、平均値と比べれば、おおよそ1.2倍以上は、進んでいたそうよ」
――土曜日と日曜日の違い。
サファイアリーさんは、こう語る。
「――次に、土曜日と日曜日。
これは、イプシロスイティヤさん、ヴィウノビブリオさんの2人が、お休みの日に当たり。
残りの戦力は、キーシストマ先輩とヨーシキワーカさんの2人だけだった。
一番大きな違いは、日曜日の午後3時ぐらいに執り行う、掃除ぐらいなものね。
この時、掃除にかかる時間は、おおよそ1時間30分ぐらいかかっていたそうよ」
これには、アユミちゃんも、アヤネさんも。
「1、1時間……30分も……!?」
「でたらめに、無駄な時間を過ごしてるじゃないのよ……!? 何でそこなんかに回しちゃったのよ!?」
それに対して、サファイアリーさんは、こう切り返す。
「平日に回してもいいけど……。トラックの運送台数が、少ないのが、たまたま土日だったからよ。
あの人なりの考え方では、日曜日を捨てて、他の曜日を活かした方が、いいと判断したからよ。
これは、『現場の者でしかわからない』ような、ものの視方があるって事よ!?」
「ものの視方……?!」
「後で話すわ」
「……」
ポイントは、ものの視方にありそうだったわ。
「この時の作業量は、金曜日が、1.2倍に対し、土曜日が0.8ぐらいで、日曜日が0.5ぐらいなものだったそうよ!」
――月曜日と火曜日。
サファイアリーさんは、こう語る。
「――次に、月曜日と火曜日ね。
これは、キーシストマ先輩が、お休みの日に当たり。
その代わりに、イプシロスイティヤさん、ヴィウノビブリオさんが出てくる日よ。
さっきも言ったように、この2人は、朝のシフト制で働く2人だから、1人は昼2時に上がり、もう1人は昼3時台に上がっていたわ。
その後は、ヨーシキワーカさんが1人残って、やっていたのよ」
とそこへアヤネさんが。
「つまり、昼3時台から、その人1人だけって事よね!? 夜7時台まで」
「ええ、そうよ。で、だいたい、この時の作業量が、月曜日、火曜日ともに、1.0ぐらいだったらしいわ」
「そこで、平均値が取れるってわけね!?」
「まぁ、順当だな……。平日の月曜日ぐらいから、トラック台数も、平均値だからな」
「そうね」
――水曜日と木曜日。
サファイアリーさんは、こう語る。
「――次に、ヨーシキワーカさんが、お休みの日に当たり。
その代わりに、キーシストマ先輩が出てきて、イプシロスイティヤさん、ヴィウノビブリオさんと3人で行う事になっていくわ。
ただし、ヨーシキワーカさんが、夜7時上りだったのに対し。
キーシストマ先輩は、夕方5時上りだから、当然、作業量は、目に見えた形にもなって、落ち込んでいくわ……。
2時間も違うからね。
だいたいこの時の作業量が、水曜日、木曜日ともに、0.7ぐらいだと言われていて、
ヨーシキワーカさんの作業量の、3分の1ぐらいしか進んでいなかったそうよ!?」
「30%も落ち込んでいる訳か……」
「それが、2日間だから、続いたんだから、合計60%の落ち込みようよね……?」
「ああ」
――まとめ。
サファイアリーさんは、こう語る。
「ちょっとここで、表にしてまとめましょうか! 紙とペンある?」
そこへ、相槌の声を打ったのは、シャルロットさんだったわ。
「ありますよ」
「少し、貸してくれる?」
「いいですよ。どうぞ」
「ありがと」
サラサラ
とサファイアリーさんは、簡易的な表にして、できるだけわかりやすくまとめてくれるのだった。
1つ目は、各自の出勤表だった。
月曜日
出社は、朝6時イプシロスイティヤ、朝7時ヴィウノビブリオ、朝12時ヨーシキワーカ。
上りは、昼2時、昼3時、夜7時。
火曜日
出社は、朝6時イプシロスイティヤ、朝7時ヴィウノビブリオ、朝12時ヨーシキワーカ。
上りは、昼2時、昼3時、夜7時。
水曜日
出社は、朝6時イプシロスイティヤ、朝7時ヴィウノビブリオ、朝8時キーシストマ。
上りは、昼2時、昼3時、夕方5時。
木曜日
出社は、朝6時イプシロスイティヤ、朝7時ヴィウノビブリオ、朝8時キーシストマ。
上りは、昼2時、昼3時、夕方5時。
金曜日
出社は、朝6時イプシロスイティヤ、朝7時ヴィウノビブリオ、朝10時キーシストマ、朝12時ヨーシキワーカ。
上りは、昼2時、昼3時、夜7時、夜7時。
土曜日
出社は、朝8時キーシストマ、朝12時ヨーシキワーカ。
上りは、夕方5時、夜7時。
日曜日、朝8時キーシストマ、朝12時ヨーシキワーカ。
上りは、夕方5時、夜7時。
2つ目は、各曜日の平均値と、その日の従業員数と、人がいる時間帯。掃除の有無。
月曜日は1.0、3人、朝6時から夜7時まで。
火曜日は1.0、3人、朝6時から夜7時まで。
水曜日は0.7、3人、朝6時から夕方5時まで。
木曜日は0.7、3人、朝6時から夕方5時まで。
金曜日は1.2、4人、朝6時から夜7時まで。
土曜日は0.8、2人、朝10時から夜7時まで。
日曜日は0.5、2人、朝10時から夜7時まで。1時間30分の掃除有り。
「――とまぁ、だいたいこんな感じね!」
とこれには、アユミちゃんを推しても。
「えええっ!!? たった2人で、日曜日に回してた訳!? 何でそっちに!?」
「水曜日と木曜日の2日間で、箱が積載量を超過してて、既にオーバーだったからよ! まぁ、溢れかえっていた訳ね!
だから、1日では間に合わず、2日間は要してしまっていた……!」
「金曜日じゃ間に合わなくて、土曜日までかかっていた訳なんだね? フ~ン……それで遅れを取り戻すために……。
それで、日曜日に掃除を……」
しかも、よりによって、2人しかいない時にだ。
「でもさ、月曜日や火曜日には、何で回せなかったの!?」
「その場合は、昼3時から、ヨーシキワーカさんが、たった1人になるからね!
昼3時からスタートした場合、終わる頃には、夕方5時を軽く超過(オーバー)しているわ……。
1時間30分で済む為には、あくまでも、キーシストマ先輩と組んだ時であり、これを個人でした場合、2時間弱は必要だったのよ!
しかも、1人しかいないから、トラブルアクシデントに遭遇した場合、対処し切れないところがあるのよ!?
これは、キーシストマ先輩も同じであり、同じ意見を説いたそうよ。
『自分たち2人で、昼にやるしかないだろ!?』――とね!」
「なるほどねぇ……」
――とここで、ものの視方と言っていたアヤネさんにあたしから。
「――わかるアヤネさん?」
「!」
「これが、ものの視方よ」
「……そうか! 金曜日は、人数的には充実していても、水木の作業量が遅れているから、できなかったんだわ!
それに、月火は、昼3時から1人だから、それができない!
可能だったのは、土日のいずれか……!?」
「……」
「なるほどねぇ……」
とこれには、ものの視方について、アヤネさんも納得して頂いたわ。
とここで、アユミちゃんから。
「じゃあ、ここの月曜日と火曜日の2日間と、水曜日と木曜日の2日間の違いは!?」
「あぁ、それは、ヨーシキワーカさんか、キーシストマ先輩のどちらかが、いる時の単純な違いを示したものね!
夜7時上りと、夕方5時上りの違いよ!」
「1.0か0.7……。何で、ここまでの差が……!?」
そこへ、顔を覗かせてきたのは、シャルロットさんだったわ。
「気になるのですか? アユミちゃん」
「うん……まぁね」
「どうしてですか?」
「どうしてって……う~ん……なんとなく……。1.0と0.8ぐらいなら、まだわかるけど……この足りない0.1ってのが気になってね」
それに対して、サファイアリーさんは、こう答えから言うのだった。
「簡単よぉそんな事は!」
「!?」
「もう、忘れてるんじゃない!?
昼12時には、トラックからすべての積み荷卸が終わった後なんだから、
その朝、働く2人がいる間に、箱上げをどれだけしていたのかが、今後を大きく左右していたからよ!」
「えっ……」
「キーシストマ先輩はね、昼12時で、昼飯を食べに行き。
その間、ヨーシキワーカさんは、ヴィウノビブリオさんに協力してもらう事で、2人で事前に箱上げを済ませていたからよ。
反対に、キーシストマ先輩なんかは、その2人が帰った後ぐらいに、ゆっくりと1人で、箱上げをしていたからよ。
……何でだと思う!?」
「えっ……えーと……!?」
「キーシストマ先輩は、変形変形性のシフトタイムを組まれた人だから、もうそこまでの力が残っていないのよ……。
自分の体調管理も難しいものだから、周りからは、手抜きだって、よく思われてるけど……。
実際には、ここで下手に無理な力を使うと、その後の体調管理が上手くできず、途中でバテちゃうからね?
今後の仕事にも、大きく障ってきちゃう訳よ。
だから、上手く余力を残しつつ、仕事に取り組んでいた訳!
まぁ、これは考え方の違いであり。
周りからすれば、あいつは能力がないじゃないか!? とする比喩的な表現を受けていたらしいわ」
これには、アユミちゃんもスバル君も。
「フ~ン……」
「そうやって、周りから騙されていった訳か……」
納得がいく思いだった。
☆彡
【仕事に対する精神論】
――とここで、アヤネさんから。
「――なるほどねぇ……。つまり、これはパート作業員が絡んでくるのだから、精神論が大きく関わってくるわけね?
もちろん、そこに長年勤めてらっしゃる勤続勤務年数も加味していけば、どうなるか!?」
これには、みんなも、そのアヤネさんに振り向いたものだったわ。
サファイアリー(あたし)は、それを見兼ねて、こう告げるのだった。
「アヤネさん、賢い!」
「フッ……」
「そう、キーシストマ先輩は、勤続年数10年間以上の大ベテランさんで、それにも関わらず、雀の涙ほどのパート賃金だったものよ?
あそこには、パート作業員から、正社員枠へ、上がった人はいないからねぇ……」
パート作業員から正社員当用はない。
比喩的にサファイアリーさんは、そう言ってきたのだった。
「当然、目に見えた形にもなって、仕事に対する、熱意や意欲ややる気がなくなっていき……。
売り上げ利益の生産量が、ガタ落ちしちゃったわけよ……」
「……」
それは、仕事に対する精神論のものの視方だった、熱意や意欲ややる気がなくなっていけばどうなるか。
それは、どんな仕事に置いてもそうだが、仕事に対する熱意ややるきが籠らず、いつしか手抜きにやってしまいがちなのだ。
それが当たり前のものの見方だった。
精神的に、もう疲れていたのだ。
――それを顧みて、アンドロメダ王女様は。
「フムゥ……一番大事な話が飛び出してきおったな!?」
「はい、そうですね、王女様!」
「シャル、お主ならどうする!?」
「そうですねぇ、一番簡単な解決策は、やっぱ賃上げでしょうね!」
「やっぱり、どこもそこか……」
「フフフ」
と笑うシャルロットさん。その心の内では。
(何を当たり前の事を仰っているんだか……!)
そう思ったシャルロット(あたし)は、そのまま、サファイアリーさんに振るものだった。
「サファイアリーさん」
「はい、何かしら?」
「あなたなりの解決策は、どうしますか!?」
「簡単よそんなのは!」
「……」
(簡単、ウソでしょ……!?)
これには、シャルロット(あたし)も、心ここにあらずで、引く思いだったわ。
その人は、こう言ったの。
「その変形性労働時間のシフトってやつが、最大の原因なんだから、取っ払ってしまえばいいのよ!
彼はね、1週間の間で、変形、変形させられていたのよ!
一般企業の多くは、その変形性労働時間のシフトは、
1週間の間は、ずっとそのままで、
2、3週間目から、その時間帯に変更しているものよ! で、常に一定してキープしていてね。
ヨーシキワーカさんの話を伺えば、
作業当番表に、常に一定の感じで、変形変形のシフトタイムが、組まれてあったそうよ!
当然、目に見えた形になって、一緒に作業に当たっていたのだから、気疲れを起こしていたぐらいでね……。
しかも、あれでいて、ずっと常に動きっぱなしの職場環境だからか、体はできても。頭の成長には繋がらないそうよ!?
一週間前ぐらいに言った言葉でも、もう来週には、忘れていたぐらいだしね……!?
どんなにがんばって、よく注意してみても、結局は治らなかったんだって!?」
とこれには、シャルロットさんも。
「アハハハ! 何ですかそれ~! 受ける~。健忘症もいいところじゃないですかぁ!」
「で、ヨーシキワーカさんの読みでは、年齢からくるものと、ただの睡眠不足だそうで、
不健康な状態で働いていたせいだからか……物覚えが悪いそうよ?
だから、さっきの案が、気持ち半分いいって事!」
「へぇ~、それは何だか、そっちの方が良さそうですね?」
「でしょう!?」
「はい、そう思います!」
それは、シャルロットさんから、了承の言葉を頂けたものだったわ。
採用されたのは、この一言。
一般企業の多くは、その変形性労働時間帯のシフトは、
1週間の間は、ずっとそのままで、2、3週間目から、その時間帯に変更している。
常に一定のキープ水準。
「そして、もう1つ!」
「まだ、何か……!?」
「ええ、重要になってくるのは、通勤距離の問題よ!」
「通勤距離……ですか!?」
「うん! もしも、ここで仮に、新入社員さんの方が、キーシストマ先輩よりも、
会社からの通勤距離が近いようであれば、早い時間帯で上がるようなシフトタイムにした方がいいわ。
で、キーシストマ先輩の方が、会社からの通勤距離が遠いようであれば、遅い時間帯で上がるようなシフトタイムにしたほうがいい」
「ホゥホゥ、何の意図があって狙いが!?」
「そんなの簡単よ! 大ベテランさんを、後半に据える事で、突然のトラブルや、機械の故障による工務への取り次ぎ回しが、容易に行えるからね!
フツーに考えて、大ベテランさんであれば、そうした状況下に強く、その人に安心して、一任してもらえるからね!
後は、簡易的な機械の動作運転状況を確認したり、
薬剤のチェック管理表を取ったり、
ゴミ出しをしたりと、実に多岐に渡るけれど……。
会社としては、安心してその場を任せられるのは、やっぱりその人を置いてしか、いないって訳よ!
それが勤続勤務年数であり、経験であり、周りからの厚い信頼なのよ!?」
「確かに! あたしとしましても、その人に安心して、一任しちゃいそうですね。
責任者ではないでしょうが、場を任せられるのは、やっぱり、そーゆう人しかいませんものね!」
これには、みんなも、「うん!」と強く頷いたものだったわ。
☆彡
【間と運が悪く、新入社員さんが入ってきた年と、課長が辞めた年と、父の定年退職が重なっていた為、目に見えた感じで慌ただしかった】
――サファイアリーさんは、こう語る。
「――その年は、さっきのエリュトロンコリフォグラミーさんの話とは、また違った話でね。
エリュトロンコリフォグラミーさんの話が傷害事件なら、
こっちは、人事部門預かりの急の異動とあの人の退職願の両方が、作用し合っていたのよ」
これには、ミノルさんもアヤネさんも。
「人事部門の預かり?」
「急の異動?」
「ええ、その課長さんは、箱洗い、食パン、スナックサンド、ドーナツ、菓子パン、パンケーキラインと実に多忙を極めていてね。
よくヨーシキワーカさんに、声を掛けていた人だし。
人材不足の時、わざわざ人員不足を補うために、自ら箱洗いに着て、手伝っていたような課長さんなのよ?
その人が、さっきのシフト管理表を預かっていた人でね。
次の人事部門を担う人は、その人から説明を間接的に聞いていただけで、深くは知ろうとはしなかったからよ」
「……」
「そんな状態で、そのシフト管理表から、ヨーシキワーカさんが抜けたらどうなる!?
その次の担い手は、すぐに対応して、穴埋めをできたのかしら?」
「あっ……」
「そーゆう事か……」
「まぁ、その人は何も悪くないわ。だって、他のラインの人の正社員から役職が上がっていき、新しく課長さんに就任した人だからね。
見るべき視点が、また違ってね。
自分がいたところを良くしようとするのが、『人の性』ってことよ!?
反対に、箱洗いには過剰になって、追いやっていた訳よ。
あそこは、左遷降格処分を受けたら、自発的に辞めていくように促していく、造られた場所だからね。
だから、経営上、そうなっていて、何も責任はない理由(わけ)。
その人には、何の罪もないわ。
ここだけは、間違っちゃいけないわよ!?
どこかの会社さんの課長連中も、実はこうなっているからね。履き違えるな……って事!」
「……」
「……」
それは、端的に聞くと、異動した課長さんも、新しく就任した課長さんも、人事を尽くしていたという事だ。
つまり、何の非も落ち度も責任もないという訳だ。
これは、何にも間違っていない。
続いて、サファイアリーさんは、上げた手を指を折りながら、わかりやすく説明を促していく。
「次に、1つ! 新入社員さんが入ってきた時期は、1月の頃で!
次に、2つ! 異動した課長さんも、新しく就任した課長さんも、2月時期よ!
そして、3つ! ヨーシキワーカさんが、お父さんの定年退職の時期が迫っていた為、退職願を出したのが2月で、退職届を出したのが同月の2月だった訳!
そして、4! 超・長期の有給休暇を取ったのが、3月からだったって話よ。
この期間は、わずか、たったの1ヶ月間……!
……もうわかるでしょ!? その新しく就任した課長さんには、何の責任も落ち度もない訳が!?」
これには、スバル君も、アユミちゃんも、ミノルさんも、アヤネさんも。
「た……確かに……」
「た……たったの1ヶ月間じゃ、それは無理だよねぇ……」
「あぁ、私にもできない……」
「しかも、常に動きっぱなしの職場環境なら、いったい、どのタイミングで、声を掛けをしてもいいのかもわかんないわね……。これは無理だわ」
それに対して、サファイアリーさんはこう続ける。
「加えて、課長に新しく就任した人には、始めの1ヶ月間は、極めて慌ただしいもので、
支部から本社に届ける報告書作りや、就任祝いの席での出来事や、前課長への暖かな送り出しを込めた送別会の開き、催しをしていかなければならない。
それも、ただの引継ぎでの人事部門の話だけではなく、正社員から役員の昇格を含めた人達への案内手続きを負わなければならない事や。
新しい人事部門の設立し、全体像を取り纏め、把握していかなければならない」
「……」
「どんなに優秀な人でも、最短でも丸3ヵ月間は優に必要とする出来事なのよ!? 普通の会社の人ならば、だいたいが6ヵ月は必要ね。
加えて、月見エビバーガーオーロラソース社の場合、国内のグループ企業を含めると、30社以上はあるから、
その応対もしていかなければならないから、
極めて難しく、ヨーシキワーカがさんが辞めた頃には、まだ途中経過だったと思うわ!
つまり、理論上不可能よ!!」
「……」
サファイアリーさんは、言外に不可能だと言い切ったのだった。
これを聞いた僕達、あたし達、私達も、当然ながら無理だと思ったんだ。しかも、残り1ヶ月間じゃ最初から元から無理な話です。
【その年のヨーシキワーカの心情、オリンピックが開かれる年だったが、延期されるのだった】
――その時、話しかけてきたのは、意外な事にアンドロメダ王女様からだった。
「ふむ……しかし、1つ疑問に思ったのじゃが……。その者は、なぜ、そーゆう出来事が会っていたとわかっていながら、退職届を出したのじゃ!?」
とそこへ、シャルロットさんは、通訳を行うのだった。
「あの質問です。サファイアリーさん」
「はい、何でしょうか!?」
アンドロメダ王女に代わって、サファイアリーさんに問いかけてきたのは、シャルロットさんだった。
「その人は多分、先に退職願いを出していたはずです。
その後、異動する前の課長や、別の人達を通して、その人が異動になる事を知っていたはずです。
なぜ、そのタイミングで、退職願いから、退職届へ、入っていった流れなんですか!?」
「!?」
これには、さしものアンドロメダ王女様も、お顔ビックリだった。
シャルロットさんは、心が読めるので、それをそれとなく聞き出す必要があったのだ。
それに対して、サファイアリーさんは、こう答えるのだった。
「タイミングよ!」
「タイミング……」
「ええ、何でも、就職活動の黄金期とも言われていてね。世界中が湧く年だったの。それだけ凄い、熱狂ぶりなのよ!
オリンピックが開催される年というのは……」
「……」
「でも、延期になっちゃってね……」
「……延期……!?」
「ええ、それだけは、完全に予定外だったそうよ……。
当然、オリンピックが開催されれば、世界経済の金の動きがいい具合に乗ってくるから、就職活動もし易い傾向に当たる訳よ!
これが、最高潮のピークに達するのが8月ぐらいで、
それが終わってから緩やかに落ち着いていく傾向がある、これが10月ぐらいね。
一般企業側としては、求人案内の動きをするのは、9月からスタートして、11月には応募締め切り見込みだったそうよ!?」
「なるほど、ピークが8月で落ち着いてくるのが10月ぐらい。
企業側の誘致は、9月スタートして11月ぐらいに応募締切ですか……」
「でも、それは、一般的な就職活動に限った人の話!」
「!?」
「その時、彼は、職業訓練校にまだいて、12月卒業見込みだった人だから、雇用の門戸は、いくらかはまだ開かれていたそうよ。
一般的に、免許だけ持っている人よりも。
職業訓練校修了で、特別技能を学んでいて、免許も有した人材を取り入れた方が、時に、いい場合があるからね。
しかも、オリンピックが開催された年であれば、
当然面接官達もそれを見ていて、予めビデオを取っておけば、次に活きてくる。
そして、その時の面接官次第であるけれど、野球とかサッカーとか、他の競技種目を出せば、意見交換が弾み、
その場の流れで、印象に残りやすく、内定合格がもらいやすい傾向に当たる訳よ!?
彼が望んでいたのは、まさにこの形だったそうよ!」
「……」
随分、先まで見通していたみたいね。……けど、現実は、そうはならなかった訳なんですね……。
「だから、周りからも言われていたそうよ。
気が変わらないうちに、一度こうだと決めたら、最後まで、突っ走した方がいいと。
あの人の場合、どこかに甘さがあるからね……。一度、黄金期を逃したら、その次は4年後よ?」
とこれには、スバル君も。
「4年後!?」
そこへ、ミノルさんが、声を掛けてきて。
「ああ、そう言えばスバル君は、まだ、小学生だから知らないんだっけ?」
「……」
「オリンピックという競技はね、4年に1回の周期で開かれているんだ。
それだけ、凄い熱狂ぶりだったんだぞあれは!?
……そうか……! だから、その年にミシマさんや、謎の組織の動きが水面下で……あのカジノ話に繋がっていったんだな!?」
そこへ、サファイアリーさんが。
「ミノルさん、ご明察!」
「……!」
「そうよ、だから、オリンピックが延期してしまった以上は、『来年まで持ち越し』になっていたの……! これが、ミシマさんに関わった年ね!」
これには、ミノルさんも、スバル君も。
「要は、そーゆう訳なんだ」
「へぇ~、そうだったんだぁ」
と納得してくれたわ。
「で、一度、ここで去年の月見エビバーガーオーロラソース社時代に戻り、
その機を逃せば、次は4年後だった。
だから、あの人は気が焦っていたわけよ。一度、雇用契約書を取り交わしたら、また、来年度までもつれ込む可能性があったからね……!
自分の意思を、今回ばかりは、最優先したわけよ」
これには、シャルロットさんも。
「なるほど……そうだったんですね……」
そして、サファイアリーさんは、続けてこうも語る。
「だから、その年は、どこの企業も好景気を期待していて、まさかの不景気となってしまったの……。
あの例の伝染病騒ぎの裏でね。その反動は、凄まじいものでね……。
どこの企業さんも、海外の出資屋さんも、来るべく景気経を望み、高止まりの勢いだと思ってたんだけど……。
なぜか、大きく、下落の一途を辿ちゃってね……。
当然、その風当たりは、凄惨なもので、どこも不況な経済利益の嵐だったの。
とにかく悪過ぎて、会社の売り上げ利益の落ち込みようも凄まじく影響し合っていて、
そんな間の悪いタイミングで辞めたもんだから、ヨーシキワーカさんに対する風当たりは、とにかく酷かったものよ!?」
「……」
そして、その年に辞めた訳だ。あの人は……。
TO BE CONTINUD……