255 戦闘①/ロアスパインリザード
――ドドドドド……!!
一行の進行方向の右側の地平線から、砂煙が見え始めたと思うと、足音とともにその群れは一気にこちらに近づいてきた。
「巨大な、トゲトカゲ!?」
「ロアスパインリザードだ!」
ケントが大声でマナトに言った。
薄茶色と濃い茶色のまだら模様の円錐形の鱗は、まるでトゲのように反り返っていて、頭から胴体、四肢、胴体以上の長さの尻尾までを覆い、触れるものを蜂の巣にしてしまいそうなほどに鋭い。
爬虫類独特の、広い顎から口の先端にかけて細くなっている平ための顔、その両目の細い瞳は、確実にキャラバンと護衛一行を捉えていた。
鋭い鉤爪のついた四肢で地面を蹴り、ラクダの倍の体躯にも関わらず、ものすごいスピードで迫る。
そして、ロアスパインリザードの群れは、キャラバンと護衛の周りを囲うように回り込んだ。
「速い!あっという間に囲まれちまった……!」
「くっ!」
「さ、サーシャさまを守れ!!」
護衛達が武器を持ち、馬車とラクダを囲うように包囲しつつ、それぞれが外側を向いて、敵の攻撃に備えている。
――シュ~!
ロアスパインリザードは時折、独特の音とともに細長い舌を出して、ゆっくりと周囲を歩いている。
「いち、に、さん……10頭くらいかな」
「だな」
ミトがぐるっと一回転しながら言い、ラクトもうなずいた。2人とも、ダガーを構えている。
ケントとリートは、それぞれ向かい合わせになって、攻撃に備えている。
「ま、マナトさん……」
「マナトお兄ちゃん……」
マナトの近くにいたシュミットとニナが、不安そうな顔をした。
「盗賊だけじゃないんですね……。岩石の村周辺の岩石砂漠は、盗賊は多いものの、大型の獰猛種は、あまりいないから……」
「そうだったんですね。まあ、出会うときは、出会ってしまいますね」
「マナトお兄ちゃん、大丈夫……?」
「ええ、大丈夫です」
マナトは2人に、優しく声をかけた。
「ミト、マナトは、ラクダとシュミット、ニナを守れ!」
ケントが言った。
「はい!」
――ブンッ!
と、ロアスパインリザードの一体が、尻尾を振った。
「!?」
なにかがものすごいスピードで、ケント商隊のラクダ目掛けて飛んで来る。
――カキンッ!
近くにいたミトが動いた。ダガーでそのなにかを弾きとばす。
――ザク。
砂に、ロアスパインリザート全身についている鋭く反り返った鱗が刺さった。
「自分の鱗を飛ばすことができるのか……!」
「そうみたいだね」
その尻尾を振って、自らの鱗を飛ばしてきたロアスパインリザートが動いた。
その1体に呼応し、他に2体、周囲を回る軌道から外れて襲いかかってきた。
「来る!」