251 鉱山の村にて
やがて、鉱山の村に、ケント商隊は到着した。
「おう、お前らか」
村に入り、歩いていると、作業着姿の村人の一人がケントに声をかけてきた。
「なんか、交易の予定でもあったか?」
「いや、違うんだ。岩石の村の者達と、ここで落ち合うことになってるんだ。少し、邪魔させてもらうぜ」
「あぁ、なるほどね」
「そっちは、これから採掘作業か?」
「そうだ。これから、鉱山に入って、時間まで掘り進めるぜ。じゃあな」
作業着姿の村人は、鉱山のほうへと歩いていった。
「やあ」
「うぃっす」
他の村人達も、もはや村人同士が道ですれ違うくらいの感覚で、話しかけてくる。
「岩石の村のヤツらって、来てないか?」
すれ違う村人に、ケントは声をかけた。
「いや、来てないよ」
村人は答えた。
「お相手さん、まだ到着してないみたいっすね」
リートが、周りを見渡しながら、ケントに言った。
「そうっすね。テキトーに、茶屋にでも入って、時間つぶすかな~」
鉱山の村は、平坦な道が少なく、村を少し奥に行けばすぐ、鉱山がそびえ立つ。そして、鉱山の斜面に沿うかたちで張り巡らされた木の通路の上に、さまざまな建物が建っていた。
ラクダ達を一旦、ラクダ舎にあずけ、ケント達は木の通路を歩き、階段で、上へ。
三層目にある、鉱山での作業者がよく休憩している茶屋で腰を下ろした。
「砂漠がよく見える!」
ミトが、目の前に広がる、遥か地平線を眺めながら言った。
三層目は、地上からそこそこ高い位置にあり、果てしなく続いている砂漠が、よく見える。
「これなら、シュミットさん達が来ても、すぐ気づきますね」
「だな。それにしても、メロ共和国か~」
ケントが、ミトとラクト、マナトを見て、ニヤニヤしながら言った。
「おい、お前ら、再会の言葉はかんがえたのかよ?」
「そうですよね~、アクス王国以来ですもんね。楽しみですね~」
ミトが笑顔で応えた。
「あぁ。メロに知り合い、いるんすか?」
「そうなんですよ、アクス王国での交易の時に、村の最寄りのサライで知り合って、共行することになって……」
ミトがリートに、当時の説明を始めた。
その横で、ケントがラクトにニヤついた顔で言った。
「おい、ラクト。もうすぐだぞ」
「えっ!な、なにがっすかね?」
「お前が、一番楽しみにしてんだろ」
「えっ!?そそ、そんなこと、ないっすよ!」
「がはは!」
ラクトの反応が面白かったのか、ケントは楽しそうに笑った。
「あっ、そういえば……」
リートに説明していたミトが、ケントのほうに振り向いて、言った。
「いま、思い出したんですけど、西のサライで夜、ケントさんとフィオナさんて、デートしてたんですか?」
「そ、そうですよ!ケントさんこそ!」
ミトの発言に、ラクトも便乗する。
……さすが、ミト。ぶっ込むなぁ。
時が経ってたとはいえ、ミトの図太さに、マナトはほとほと関心した。
「フッ……俺と、フィオナの関係か?」
ケントは顎にいい感じに生えた無精ひげをさすりながら、言った。
「お前らには、まだ、早いんだよ……」
……えっ、マジで?
「えっ!?それってどういう……!?」
ラクトが興奮した顔つきで、ケントに言いかけた、その時だった。
「あっ、来たっすよ~」
リートが砂漠を指差した。