252 合流
砂漠の地平線、向かって右側から、まとまった人の群れが、ここ鉱山の村へやって来るのが見える。
また、ラクダもいれば、馬もいるようだ。
「うん。あれだな」
ケントが立ち上がった。
「ちょっとケントさんさっきの……!」
「大丈夫だ。お前もそのうち分かる」
ラクトを制止し、ケントは皆に言った。
「よし、みんな、降りるぜ」
茶屋を出て、鉱山を降り、村の玄関口あたりまで、ケント達は出てきた。
やがて、三層目の茶屋から見ていた者達が、鉱山の村へと到着した。
「……多くね?」
「多いっすね」
目の前の光景を見て、ケントとリートがつぶやいた。
ざっと見渡しただけで、50人はいるようだ。
かつて岩石の村に交易に行った際、村の壁門を護っていた護衛達だ。皆、統一された濃い茶色の、麻生地の服に、頭には、日避け用のベージュの布を被り、肩からその布が垂れている。
また、ラクダ達が十数頭いて、おそらく今回の納品するものであろう品が、大切に布に巻かれたものを背負っているのもいる。
そして、立派な黒茶色の馬が2匹、周りをベージュの布で囲った馬車を引いていた。
と、人混みから一人出て来て、頭に被っていた布を取り外した。
「やあ、ケント商隊の皆さん!」
「おぉ、シュミットさんじゃないか!」
相変わらずの柔らかい物腰、人のよい笑顔を浮かべた丸メガネの金髪男、シュミットはケント達との再会を喜んだ。
また、初対面のリートにも、シュミットは笑顔で挨拶した。
「このたびは、どうぞ、よろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそっす」
「完成したんですね、十の生命の扉の彫刻」
マナトの言葉に、シュミットは笑顔で答えた。
「ええ。なんとか間に合わせました。もう、時間なくて。さすがに死ぬかと思いましたよ、あはは!」
……セルフブラックってヤツかな?
少し立ち話した後、ケントはシュミットに聞いた。
「ところで、今回、ずいぶんとしっかりした、ガチガチ護衛ですなぁ」
「いやぁ、驚かせてしまって、申し訳ございません」
シュミットは少し声を小さくして、ケントやキャラバンの村のメンバーにだけ、聞こえるように言った。
「依頼書にも書かせてもらいましたが……なにせ、サーシャさまが直々にメロ共和国に赴くって、おっしゃられて、それで、こんなことになってしまったんですよ。いや、ホント、今までこんなこと、なかったんですよ……」
と、もう一人出てきた。子供くらいに背が低く、黒い帽子を被り、薄い緑のマント姿。
帽子で顔を隠したまま、マナトの前に立った。
「ニナさん、お久しぶりです!」
「えっ!ちょっと!せっかくビックリさせようと思ったのに!」
「いや、すぐに分かりましたよ」
サーシャの家の庭を整備している、庭師のニナも同行していた。
「でも、意外でした。まさか、ニナさんも一緒だなんて」
「えへへ、ボクはメイドさんと一緒に、お姉さまのお世話役だよ。お姉さまは、あの馬車の中だよ」
「なるほど」