どんどんイケメンになっていきます//// リコ視点
あたしはリコ・フリーレ。
ヴァリエ侯爵家のメイドです。
今年で18歳になります。
アルフォンス様の専属メイドで——
最近、アルフォンス様は別人のごとく変わりました。
食事の時に「あーん」をしなくなったのです。
以前なら、毎日の食事の時にあたしに「あーん」することを強要していました。
——貴族は自分で飯を食わない。
という謎の理論で、毎回、ご飯を食べさせるように要求するのです。
もう15歳だというのに……
でも、最近は普通に食事を取るのです。
それどころか、あたしに一緒に食事を取るようにまでおっしゃります。
貴族と平民の身分差は絶対。
普通、貴族は平民と食事を取らないはず。
この国の貴族は平民相手にイキり散らすのが「デフォルト」なのに、アルフォンス様は対等に接してくれるのです……
他にも大きな変化があって。
——ボクちんは野菜は食べないもん!
と、おっしゃって、野菜があると泣き出すアルファンス様でしたが、
野菜も残さず食べます。
そのせいか、最近はどんどん痩せてきています。
魔法の鍛錬も、熱心にされています。
毎日、毎日、夜遅くまで水玉を浮かせています。
お屋敷の庭で、倒れるまで頑張っています。
魔力操作はとてもお疲れになるらしく、
汗だくだくで、庭で倒れています。
浮かせられる水玉は毎日増えていき、今では同時に二十個も浮かせられます。
家庭教師のロゼリア先生も、驚くほどの成長ぶりです。
「アルフォンス様は、きっと才能があるのよね……」
あたしは平民で魔法を使えません。
だけど、アルフォンス様に才能があるのはわかります。
今まではきっと「本気を出していなかっただけ」なのでしょう。
夜は、魔法の本に齧りついています。
お夜食にも手をつけないほどの集中ぶりです。
ロゼリア先生曰く、かなり高度な魔法理論まで理解されているとのこと。
「この手紙はどうしたらいいか……」
最近、あたしの元にラブレターが届くようになりました。
あたしへのラブレターではなく、アルフォンス様へのラブレターです。
貴族のご令嬢から、アルフォンス様へラブレターを渡してほしいと。
お庭でアルフォンス様を見かけて、「一目惚れ」されたとのこと。
アルフォンス様への熱烈に愛しているようで。
「でも、アルフォンス様にはまだ早いですよね……」
あたしはラブレターを隠しておくことにしました。
うん。これは、専属メイドの務めです。
アルフォンス様を悪い虫からお守りしないと。