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 微笑むアルバートを眩しそうに見て、シェリーが言う。

「ええ、アルバート。私もあなたのことを愛しているわ」

「でも僕は……君を母親にはしてやれないんだ」

「知ってるわ」

「知ってたの? でも……それでも良いの?」

「もちろんよ。あなたと私の子供に会いたいという気持ちはあったけれど、それが全てでは無いでしょう? いればいた人生だったのだろうし、居なければいない人生よ。どちらも私の人生でしょう?」

「そうだね。でも僕はもう君のいない人生は考えられないな。君がいなくなるならこのまま目覚めるを止めたいくらいさ」

「義兄様や叔父様が困るわよ?」

「困らせればいいよ。僕は君さえよければそれでいい」

「あらあら、王様失格ね」

「ははは! ねえシェリー、このままここでずっと二人だけで暮らさない?」

 シェリーがふと笑った。
 爽やかな風がアルバートの銀髪を揺らす。
 顔にかかったその髪を指先で弄びながら、シェリーがもう一度アルバートに口づけた。

「本当にそれでいいの?」

「ダメかな……」

「ダメでしょう? あなたは国王としてゴールディを立て直さなくちゃ」

「君がいないと無理だし嫌だ」

「もちろんあなたの横にずっと居るわ」

「一緒のベッドで毎日眠ってくれる?」

「もちろんよ」

「夜会や視察は全部兄上と叔父上に任せよう」

「それも良いわね。あなたは頭脳労働だけ担えば良いんじゃない?」

「君の負担が増えるね」

「即位はするんでしょう? 表舞台は国王代理のサミュエル殿下に任せましょう。私は王妃として出席しなくてはいけないものだけ出るわ。後はずっとあなたと一緒にいる」

「では執務室は一緒にしようか」

「そうね。大きな部屋にして休憩するためのベッドも置きましょうね。今までのような簡易ベッドではなく、きちんと眠れるようなベッドが良いわ」

「うん、そうしよう。僕は足と一緒になんとかという器官も切除しているから、疲れやすいし体調を崩しやすいんだって医者が言ってたよ」

「同意してくれて良かったわ。ねえ? こうやっている時間も、きっと仕事がたまっているでしょう? そろそろ戻る?」

「もうちょっとだけこのまま」

「どこかで区切りをつけないと、本当に戻れなくなっちゃうわよ?」

「まだ大丈夫だよ。必ず戻るから。ここなら君と僕はただの男と女だ。戻ると王と王妃だろ? もう少しこのまま……ね? お願いだよ」

「いいわ。あと一日はこうしていましょうか」

「うん、戻ったら一番に何をする?」

「そうね……アルバートは?」

「僕は……君にプロポーズしたい」

「もう夫婦になってるのに?」

「そうだよ。だって僕は君にプロポーズしてないよ?」

「そういえばそうね」

「だから現実に戻ったら、一番に君に愛を告げるよ」

「うん、楽しみにしてる」

 二人は笑い合って何度も軽いキスを楽しんだ。
 二人の頭上でカラカラと木の実が揺れる音がする。
 まるで二人のことを囃し立てるかのようなその音を、シェリーは死ぬまで忘れないと思った。

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