184 鉱山の村にて/青結晶ラピス
鉱山の村に到着したケント商隊を、前に来たとき関わりのあった顔見知りの村人逹が出迎えた。
「あっ!どのキャラバンかと思ったら、お前逹か!」
「あはは!なんだ、また来たのか!」
「この村が恋しくなったか?」
近寄ってきたみんなの、親しげな歓迎の声が、所々から聞こえてくる。
「お前らこそ、俺たちに会いたくて、仕方なかっただろ?」
ケントも冗談まじりにみんなに返事した。お互い、笑い合う。
「なんていうか、ご近所って感覚だな」
「フフっ、そうだね」
ラクトとミトが、楽しそうに顔を見合わせた。
鉱山の村とキャラバンの村は、お互い距離も近く、頻繁に交易していて、兄弟村といっていいほど、村単位で仲がよかった。
村人逹と共に、ラクダ舎へと向かう。道中、ケントは周りを見渡した。
「そんで、交易担当のおやっさんはどうした?」
ケントが近くにいた村人に聞いた。
「あぁ、いまおそらく、今回の運搬するブツを持ってきてるはず……あっ、ほら、あそこ」
村人が指差すほうを見ると、交易担当の壮年が、数人と共に、木箱を持ってくるのが見えた。
「この前来たばかりなのに、いやぁ、また来させてしまったねぇ……」
交易担当は商隊の近くまでやって来ると、少し申し訳なさそうに、ケント、また3人を見回しながら言った。
「別に構わないですよ。その木箱が、今回の?」
「ああ。これが、今回、岩石の村に運搬してほしいものだ」
交易担当が、木箱を開けた。
ケントだけでなく、ミト、ラクト、そしてマナトも覗き込んだ。
「おぉ……」
日に反射した青い光が、覗き込んだ皆の顔をキラキラ青く照らした。
木箱の中、白い綿で敷き詰められた中央に、深めの青色と藍色のグラデーションが美しく輝く、十二面体の結晶が入っていた。
「青結晶ラピスという。他の木箱も、こいつだ」
……か、完全に、ガチの宝石だ!
前の世界も含め、マナトは生まれてこのかた、本物の宝石というものに触れたことすらない。
目の前にある高貴な空気感に、マナトはただただ圧倒された。
「すごい、光ってる……」
「す、すげえ綺麗だなぁ!」
ラピスを見たミトもラクトも、感動している。
「ああ。見ての通り、宝石としてもかなり価値が高い。この村で採れる稀少結晶なんだ」
「なるほどね。これは、危ないなぁ」
ラピスを見たケントが、察した様子でつぶやいた。
「そう。お察しの通り……」
交易担当も、ケントにうなずきつつ、言葉を次いだ。
「鉱山の村で採れる鉱石や結晶を狙って、この近辺では盗賊がはびこっていることが多い。ラクダを手に入れたことで、この村も、ちょっとした交易はしているが、我々はキャラバンとしての訓練を受けてないし、こういった稀少な宝石の類いに関しては、任せたいんだ。宝石を運搬している時は、ほぼ間違いなく、盗賊が襲ってくるからな」