183 鉱山の村への道中にて
鉱山の村はキャラバンの村からそこそこ近く、朝早くキャラバンの村を出発すれば、夕方前には到着するほどの距離だった。
ケント、ミト、ラクト、マナトの4人、そして、10頭ほどのラクダ達が、鉱山の村へ向け、砂の上を進んでいた。
ラクトとミトは、隊の後方で、一緒に歩いていたが、ラクトが両手で、とある紙を広げてミトに見せていた。
「へぇ!生態ピラミッドっていうんだ」
ミトは興味津々で、その紙を覗き込んでいた。
「ああ、そうなんだよ。マナトに教えてもらったんだ」
「へぇ~」
ラクトは少し前に、マナトの家で生態ピラミッドを見て、後日、自分で作り込んでいた。
広げた紙は、以前マナトが書いた紙に、さらに様々な種類の生物を反映させた生態ピラミッドが書き込まれたものだった。
「そんでさ、この前戦ったデザートランスコーピオンなんだけど、強さ的に、ここらへんかなって」
「ええと……人間の一つ下?上じゃない?」
ミトが、ラクトの書いたピラミッドに疑問を呈した。
「えっ?上か?」
「だって、人間より、強くない?」
「えっ?いや、人間より弱いだろ?」
「いや、僕らは訓練してるから勝てるけど、本来は人間より強いでしょ?」
「え~と、んっ?」
「いやいや、えっ?」
「んっ?」
「えっ?」
ミトとラクトの頭の上には、たくさんのハテナマークが飛び交っている様子だった。
隊の先頭では、ケントとマナトが並行して歩いていた。
「マジか!湖の村ってのが、新しく出てきたのか!」
「そうなんですよ」
湖の村のことを、マナトはケントに話していた。
「面白いじゃねえか。俺も今度、機会があったら行ってみてえなぁ」
「とても美しい景観の村でしたよ。あと、湖で釣れた魚が美味しかったです」
「なるほどな」
ちなみに、ジャンがジンであるということは、伏せていた。
知られている人が増えれば増えるほど、正体が発覚するリスクがある。リートも同じ意見で、お互い、他言無用と決め合ったのだ。
「ちなみにケントさんは、どんな村に行ってたんですか?」
「俺か?俺は大木の村っていうところと、テム小国ってところに行ってた。どちらも、ラクダの交易でな」
「大木の村に、テム小国、ですか」
……どちらも、まだ行ったこと、ないなぁ。
まだまだ行ったことのない国や村はたくさんあるんだと、マナトは思った。
「そうだ。ジェラードさんとも、交易したんだろ?」
「あっ、そうですね」
「あの人、やっぱり、脱いでたか?」
「はい。それ、有名なんですね」
「ははは!いや~、見たかったな、あの人の肉体美」
……ケントさんも、意外と肉体愛好家なほうか。
ケントも、ジェラードほどではないが、なかなかな肉体をしている。いわゆるセミマッチョだ。
「俺、武器なしの体術は、ジェラードさんに教えてもらったからなぁ……あっ、話してたら、もう、見えて来たぜ」
鉱山の村の特徴である、背の高い鉱山が地平線の先に見えてきた。