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早速2日後にアレクに侯爵家に来て欲しいとマーサにお願いした。いままで、メアリーが私の遊び相手のメインでアレクはオマケくらいに思っていたマーサはびっくりしていたが、にっこり笑って言った。
「メアリーには内緒にしましょうね。焼きもちやいてしまうから。」
えっと…この場合の焼きもちは誰に対して?メアリーってブラコンだったのかしら。
マーサにアレクの好きなお菓子がクッキーと聞いて早速作ることにしたが、なかなか美味しくできなくてお父様に失敗作をたくさん食べさせてしまった。やっと料理長に合格をもらえたので、綺麗に盛り付けて、お茶と一緒に出すように侍女に頼む。
アレクは約束通り2日後に遊びに来てくれた。
「アレク!久しぶりね。元気だった?」
多分この歳の私とアレクは1ヶ月ぶりくらいだが、18歳の私は10年ぶりなので、淑女としては、ダメだけど嬉しくなりいきなり抱きついてしまった。
「キャロライン様。どうかしましたか。ずいぶん甘えん坊さんですね。」
アレクは、いま9歳よね?18歳の私でもドキドキする大人な雰囲気とキラキラ王子様感。年上だから落ち着いていると思っていたけれど、違うわ。アレクは、かっこいい。やっぱり私、見る目あるわ。
抱きついてしまったことを恥ずかしいと思って、おずおずと離れようとすると優しく頭をポンポンされる。
「それで、僕だけ呼んでどうかしましたか?」
「あのね。お父様とお話したの。ずーっとこの家にいたいから、私がこの家にとっても、私にとっても一番いい相手を見つけて来るまで、よそから婚約のお話が来ても受けないでねって。だからいま一番大好きなアレクじゃダメかなぁって。」
瞳うるうるにしてアレクを見上げてみる。
「うっ。かわいすぎる。」
アレクが何かつぶやいていたが小さすぎて聞こえなかった。
「お嬢様。アレクでは侯爵家と家格が合わないのですが。」
普通なら来客時に壁に徹するマーサが自分の息子だからか口を挟む。
「マーサ。私が侯爵家を継ぐためのお婿さんだから、大丈夫よ。
私、アレクのためにクッキー作ったのよ。食べてね。」
身体は6歳、頭の中は6歳と18歳が混在する状態なので、アレクを好きな気持ちを自覚する18歳に自由な6歳が拍車をかけてると自分でも思う。
アレクと隣同士でソファーに座りクッキーを食べながら仲良くおしゃべりをしていると、そこへなぜかお父様がやって来た。どうやら侍女の誰かが私のアレクへのプロポーズを告げたらしい。
「キャル。私は相手を自分で見つけていいとは言ったが、まだ早過ぎないかい?アレクくんも含めてゆっくり探せばいいから。」
「じゃあ、アレクも候補の1人ってことで、ほかにお話があれば会うけれど、私の気持ち優先してね。お父様!」
とりあえずお父様よりアレクの方が大切なので、(もちろん好きな気持ちがあるけど、アレクがいれば破滅エンドに向かわなくて済む)アレクとのお茶会に集中するのだった。