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三十一話 捕まったお友達

 


 喧しい喧騒が外から聞こえる。何かを言い争う声が、耳に届く。この金切り声はきっとメーラだ。理解して、眉を寄せて、そのやかましさに上体を起こせば、今まで隣にいたはずの存在がいないことに気がついた。

「はにゃ……メニーさん?」

 どこに行ったんだろう、と思いながらベッドを抜け出しそれを降りる。昨日は楽しかったなぁ、と、ぼんやり考えながら寝着のまま部屋を出てぺたぺた歩けば、なにやら屋敷の出入口に人集りが。お客かなぁ、なんて思いつつ素通りしようとした時、メーラの甲高い、悲痛な声が耳に届いた。

「メニーはパティのお友達なのよねッ!!!!」

「……はにゃ?」

 ボク?、と振り返る視界の先、よく見ればレヴェイユ陣に拘束されるメニーの姿がある。軽く舌を向き、それでも笑みを浮かべ続ける彼に、パティは目を見開いて駆け出した。
「メニーさん!」とその名を呼べば、メニーも、それからその場にいるレヴェイユ陣やメーラ、ビビやオルラッドも振り返る。

「パティ……」

 どこか焦ったような顔で、メーラがパティを呼んだ。それに反応するよりも先に、パティは「な、な、何事ですかぁ!?」と驚いたような声を上げる。

「ど、どど、どうしてメニーさんが捕まっておられる? な、なにかのサプライズ〜、的なやつですかね?」

「……」

 沈黙する皆。焦るパティが、オロオロしながらその場にいる者を見回し、やがて視線をビビへ。「び、ビビの旦那……」と呼べば、それに、ビビは大きく舌を打ち鳴らしてこう告げる。

「コイツ、ご主人様を襲ったんです」

「は、はへ? 襲った……?」

「ええ、そうですとも。コイツは今朝方ご主人様の仕事部屋まで行き、そしてご主人様を襲った。その場にいたアルベルトにより襲撃は抑えられたのでまあ、ご主人様に怪我はないんですけど……」

「ちょっ、まっ、待ってくださいよう、旦那! め、メニーさんが、主様を襲う? そ、そんなことあるはずないじゃないですかっ! だってメニーさんは、その……と、とっても良い方ですし!!!」

「……」

「あああ、あのっ、なにかの勘違いだとおもうんですよねっ! でなければその、気の迷い、とか?」

「気の迷いで主を殺されたら目も当てられませんがね」

「い、イーズ様……」

「……連行を」

 イーズの指示に敬礼したレヴェイユの人間が、何も言わないメニーを連れて歩いていく。慌てて止めようとしたパティを逆に止め、イーズは彼にこう告げた。

「明日、明朝8時。メニーの死刑が執り行われます」

「し、死刑って……」

「……伝えたいことがあるなら伝えに行きなさい。誰も、その行動を咎めはしません」

 絶望に顔を染めるパティを一瞥し、イーズは去る。残されたパティは、ぐるぐると頭を回して考えた。考えて、考えて、やがて真っ青な顔になった彼に、声をかけられる者は誰もいない。
 静かな沈黙の中、ふらりとよろけたパティはそのまま外へ。宛もなく、さ迷うように、街に出た。

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