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巨乳女騎士を添えて~生意気ロボの逆襲もあるよっ!

 
挿絵



〔……出航、デキマセン〕

 ホログラムが発したその言葉に、乳山は反射的に言い返す。

「なっ! 嘘だろ!? 何故だッ!」
〔ピー、甲板オヨビ室内ニ多数破損箇所アリ…。〕
「そんなもの、多少傷がつこうが航海には関係がないだろう!? 急いでるんだ、とりあえず出航してくれ!」
〔………。〕

 その通りだ、船室がいくら傷つこうがこの魔力炉さえ無事なら、走ることは出来る、そもそもは、そういう構造だ。
 術式によって風を発生させ、軽量化の魔法、いや、最新の物なら重力反転魔法なんかが組み込まれているかもしれない。
 この船体やマスト、船全体の骨組みが、魔法を式に組み込んだ魔力炉から送られる魔術を効率よく循環するための装置に過ぎない。
 性能は落ちても、機能しなくなるなんてことは無いはずだ。なんたって、船が全損しても魔力炉だけは港に帰ってきた、なんて話もあるくらいだ、まあ、人間に詳しいと自称する悪魔が、魔王城でまことしやかに、うそぶいていた茶飲み話なので、どれほど信用していいかは眉唾物だが、つまりは、そういうことだ。

「おい、ロボ、悪いがホントに急いでんだ、動かせるのは分かってる、今すぐ出せ」
〔…………嫌デス〕

 今コイツなんて言った?
 できないとかじゃなく嫌だと? こんな魔法と魔術で出来た魔力炉ごときに感情があるのか定かではないが、いま、はっきりと目の前のコイツは、感情で物を言っている。

〔修復、修繕、補修ヲ要求シマス。最新技術デ作ラレタ精密ナマシンノタメ、直サナイト出航シマセン、……損傷個所サラニ追加ヲ確認〕
「理由になってねーんだよ、つーか、<出航しない>つったかお前、やっぱり、オメーの気分なんじゃねーか! 魔術と魔法で作られた魔導兵器のくせに生意気だぞッ! いいからさっさと出せ!!このポンコツが!!」

〔ピー…………………粛清ッ。〕

「痛っっった!!!!」

 ――粛清された。
 こいつッ! 生意気にも、俺に電気流してきやがった!!
 イライラしたからって、暴力に訴えかけてきやがった! なんて奴だ!!
 俺は魔力炉をほぼ反射的に蹴り上げると、一瞬、魔法陣が波打つように揺れるとまた何事もなかったかのように元の姿に戻る。
 そんな無駄なやり取りをしていると、天井から、つまり、自分たちよりも上の階から足音と話し声が聞こえ、すぐそこまで敵が迫ってくるのを感じる。
 やばい、もうほんとにそこまで来てやがる。

「チッ、いいか、よく聞けよポンコツ。俺はいつでもお前を外にいる敵のど真ん中に転送出来るんだぞ? 壊されたくなかったら、さっさと出航させろ」
〔ピー、ソンナコトハ出来マセン。何故ナラ、アナタタチガ島カラ出ル方法ハ、私シヲ使ウシカナイカラデス、トイウカ、私ヲココカラ引キハガセバ、アナタタチガ脱出スル前ニ、コノ船ハ落チルデショウ〕

 クソオオオ! このポンコツ! 妙なところに頭を働かせやがって!
 ドンドンと、自分たちの頭上から床を蹴る音が聞こえ、そろそろここに来るための階段が見つかってもおかしくない。
 俺が、そんなことを考えていると、乳山がずいっと前に出る。

「なあ、頼む、私たちは何としてもここから脱出しなければならないんだ。敵につかまれば本当に殺されてしまう」
〔ピー……。〕
「修理なら必ず後でする、約束だ、だから頼む」
〔ピー、ワカリマシタ〕

 あ!? こいつ俺が頼んだ時は聞く耳を持たなかったくせに、乳山の泣き落としには反応すんのか!? だがまあ、とにかくこれで一安心。

「そ、そうか、ありがt」
〔タダシ、謝罪ヲ要求シマス。私ヘノ暴力ナド――〕

 ほらな! やっぱり嫌いだ! コイツ!!

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