巨乳女騎士を添えて~船、空を飛ぶよっ!
バビルが急いで事態の収拾を計ろうと駆けつけ、諭すが、誰一人として聞く耳を持たない。
「ちょっ、ちょっと、みんなー! おちっ、落ち着いてェ! キャッ、んもう! 悪い子なんだから! ヂュゾゾゾゾゾゾー…。」
『きっしょ……。』
「誰っ! 今、私のことキモイって言った人は!」
『今時、おねえキャラとかハヤんねーだよ』
「誰なのっ!! 私はキャラとかでやってないのよ!」
『大体、部下にセクハラとかマジでヤベ―なお前、キツ過ぎだわ、体臭もくせーし、つか、そのカッコも何? オメー今年で四一だろ? よく職場でそんなヒラッヒラッのフリルなんて着れるな、全国の女児泣かせる気か、この…イカ臭(ぐさ)四十路デブジジイ』
「んんんん…。ムキー!!」
「ぎゃあああ! 誰か! バビルさん止めろおおお!」
「なんでこんな怒ってんだ! おい止まんねーぞ!」
「死ぬー! バビルさんに引かれて死ぬ!」
俺の首を転移し、四方八方から悪口を浴びせかけると、バビルは怒りに任せ、部下を吹き飛ばしながら検査のため置かれていた樽や木箱を破壊し、ついでにその辺りにある大岩なんかも、腕を叩きつけ破壊していく。
もう完全に収拾不可能だ。
見ろ! この馬鹿どものカオスを! ゲーヘッヘッヘ!! だが、こんなもんじゃない、もっとすごいものお見舞いしてやる!
ますます、笑い転げる俺に乳山は呆れたように声をかける。
「おい、笑ってないでさっさと行くぞ」
「ヒー…ヒー…、ああ、そういえば、お前には作戦を伝えておく」
「……そんなものあったのか」
失礼な、俺がただ遊びで、こんなことをしたわけじゃない。かく乱だ。ホントだぜ? 俺はやりたくなかったんだが仕方なく、それ以外に意図はないぜ…。
俺たちは大騒動になっている現場を抜けると、船を止めてある波止場まで来る。
波止場といっても、 コンクリートで固めてあるわけでも、船の発着場があるわけでもない、ただの岸壁、この場合、断崖と言った方がいいか、そんな岩まる出しのところに、ボラードを無理やり差し込み停泊させており、船が止まっている、ということが波止場の様相をギリギリ保たせている。そんな波止場に停泊している船の横まで来る。
見れば見るほど立派な船が何艘も止まっており、――これを今から壊すと考えると胸が痛くなった。
「乳山見えるか?」
「ああ、ホントにあの一番大きな船で逃げるんだな?」
「ちょっと、ダーリンの作戦に不満があるの!? これまでだってそれで助かってきたようなものじゃない!」
「ホントに、助かったのが奇跡のように思える…。」
「どういう意味よそれッ!!」
ルウが乳山の周りをビュンビュン飛びながら抗議するなか、俺は転移の指輪に意識を集中させ、極彩色の靄を放つそれを確認すると、船の船体に触れ。
――揉めている魔物たちの上に転送した。
◇ ◇ ◇
悲鳴や、絶叫、叫喚。
今や波止場だけではなく、魔王城の方や、魔王島のあちこちからそんな声が聞こえ、声はもちろん、絵面もまさに、地獄絵図といった感じだった。
「な、なんてことするんだ!!」
「なんてことって、なんだよ」
俺は、転移の指輪を使い波止場に止めてあった、大艦隊を次々と上空へ転移させ、魔王島を阿鼻叫喚の地獄絵図へと変えていった。
転移の指輪の効果は万能で、魔王島の敷地内なら何処でも好きなところに転移できるという代物で、その大きさ、質量に関わらず、ノーリスクで効果を使うことができる。さすが、魔王自作のマジックアイテム。
アイテムオタクとしては一度使ってみたかったんだよなあ、これ。
「あ、あれ、魔王様の部屋に落ちたんじゃねーか? ざまーねーなー、ハハッ」
「いや、作戦ってこれのことだったのか!? ちょっ、おいっ! あそこ、あそこ見ろ! 燃えている。魔王城近くの森が燃えているぞ!?」
「ゲーヘッヘッヘ! 良いから手動かせ! かく乱は十分できたからな、出航だぜェ」
「しゅっぱつ、しんこー♡」
現在俺たちは波止場に止めてあった一隻、ひと際大型で豪華な帆船を拝借し、出航の準備を整えているところだった。