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神退治とは何だろう

 「モゼさん、おはようございます」
 
 テントの外からパレードの声が聞こえてきて目を覚ます。もう朝になってたか
 パレードより先に起きたことない気がする。パレードは早起きの達人だ
 今日は朝から歩きだ。今日中にはダマリアのアルーラに着きたい


 「おはよう」

 「早速、出発しましょう」

 「うん」

 こんな遠いのなら|空間転移《ワープ》が使えたらいいのだが、|空間転移《ワープ》は使用者が望んだ場所へ瞬時に移動出来る魔法
 しかし、アルーラに行きたいと望んでも俺がアルーラを全く知らないため、全然違う場所に|空間転移《ワープ》してしまう
 

 「行く前に解除」

 「準備出来ましたか?」

 「ばっちりだよ。行こうか」

 出発する前に昨日の魔法を解いておく
 魔力の減りは少なくてもジリジリと削られていくので無駄な消費をしてしまう
 テントを片付け(俺の場合は収納魔法でしまうだけ)出発の準備を整える。テント地を立ちアルーラへ向かう





 ――――――


 「|雷撃《トラネール》」

 魔物であるゴブリンが数体前に現れたので雷魔法で殲滅する。ゴブリン数体なら簡単に倒せる
 朝早いのもあって魔物たちがうろついている。もう少し時間が経てばうろつく魔物の数は減るだろう
 アルーラに向けて歩いていると魔物とよく遭遇する
 その度に倒しているので素材がかなり集まった
 アルーラの街にギルドがあればそこで換金しよう


 「|超力《パワーパウンド》!」

 パレードがさらに現れたゴブリンに攻撃を浴びせ、殲滅する
 何度見ても強烈な攻撃だ。喰らったゴブリンは原型をとどめておらず、ぐちゃぐちゃになっている
 この攻撃が俺に飛んでこないように気をつけないと(パレードを怒らせないようにしよう)


 「これで最後ですね」

 「うん。先に進もう」

 旅は全てが予定通りに進むわけでは無い
 だから、旅と言うのかもしれない


 「あともう少しだと思います」

 「あと少し頑張ろう」

 ここまでノンストップで歩いてきた
 そのおかげでアルーラはあと少しだ
 あと少し頑張るか


 


  ――――――


 「見えてきましたね」

 「やっと着いた」

 しばらく歩き進めていると前に建物がズラリと並んだ街が見えてくる
 隣には天まで届きそうな山々がそびえている。これがファルマンさんの言っていた神の森だろう
 ルースほど大きい街ではないが人が行き交っており活気を感じる
 活気のいい街だな。ここを目指して正解だった


 「まずはこの街で休憩しましょう」

 「この街もせっかく来たんだから色々見て回りたいしね」

 「そんな時間はないですよ。国からお声がかかってるんですから」

 「そうだけど、俺たちがしてるのは旅じゃん。そそくさと街出てくなんてつまらないよ」

 「それはそうですけど、相手が大きすぎますよ」

 「ちょっとくらい遅くなっても何も言われないって」

 パレードはモゼのわがままに付き合うことにした
 パレードはモゼの言ってることも一理あると考えたのだ
 俺たちはベレバンから招聘されているが自分たちのペースで行く
 俺たちは冒険者であり自由な旅人だ。国から声がかかっていてもだ
 そこを曲げる気はない
 ということで何日か滞在しよう

 
 「見て回るなら一日じゃ足りませんね。宿を確保しましょう」

 「そう来ないとね。早速宿探しだ」

 俺たちは宿を確保するためアルーラの街を回った
 宿を見つけるまで間、出店で何か食べたりはしたけど(見てたら食べたくなった)
 これで拠点は大丈夫。あとは思う存分、アルーラを堪能するだけ


 「街巡りだ!」

 「ちょっと待ってください。その前にギルドへ行きましょう」

 「なんで?」

 「アルーラに着く前に倒した魔物の素材を換金しましょう」

 「ギルドあったっけ?」

 「見てないんですか?目の前通ったじゃないですか」

 「……覚えてない」

 ギルドの前なんて通ったっけかな
 覚えてないな。この年で記憶力が皆無なのか。辛い
 出店ばっか見てたから視界に入らなかった可能性もあるけど、目の前ならさすがに視界には入るよな
 やっぱり記憶が抜けてるな
 
 
 「モゼさんって戦闘以外ポンコツなんですね」

 「俺も思った」

 パレードに先に言われたけど俺ってポンコツだな
 旅をすると言うのに1000トークンしか持ってない、肉を焼く火力を間違えて焦がす(ほとんど事故)、パレードが川で体を洗っているというのに覚えておらず川に向かう……etc.
 上げたらまだあるがこれくらい俺のポンコツエピソードがある
 俺って神の力が無かったら生きていけなかったのではないか
 いや、まさかポンコツになるのが神の力の代償か?(絶対違う)
 いずれにせよ、俺は戦闘面以外ポンコツ要素が多い
 (よく旅をするとか言ったな)


 「とにかくギルドに向かいましょう」

 「うん。分かった」

 パレード先導の元、ギルドへ向かった
 ギルドに向かう途中、気になる場所が何箇所かあったけど今は我慢だ
 ギルドで用事を済ませた後で行こう

 
 「ここか……やっぱ記憶に無いな」
 
 「でしょうね」

 「とりあえず入ろう」

 他の建物に比べ立派な建物のギルドの前についたが、やはりこの建物に見覚えがない
 パレードにツッコまれたけど、もうポンコツのイメージが定着したのかな?
 ポンコツのイメージを払拭したいけど自他ともに認めてるからな……
 厳しい……いや、不可能な気がする


 


 ――――――


 「換金をお願い出来ますか?」

 「はい。素材をいただけますか?」

 「これです」

 ギルドの中に入り、受付に声をかける
 俺とパレードが持っている分の素材を受付に渡す


 「査定が終わるまでお待ち下さい。時間が経ちましたら受付にお声をおかけ下さい」

 「はい」

 あとは査定が終わるまで待つだけ
 どれくらいの時間がかかるかは分からない
 査定を待つ間、街を巡りたいな


 「街を巡りに行こうか」

 「そうですね。待ってても何も無いですしね」

 「行こう!……ん?」

 街巡りに行こうと出口に足を踏み出した時、ある物が目に留まった
 任務の一覧表だ。様々な任務の内容が書かれた紙が張り出されている
 内容をよく見ると推奨ランク・報酬額なども書かれている
 ここにある任務の報酬額の高い任務は推奨ランクが高い傾向にある
 これはどこも変わらないだろう。高い報酬ほど危険が伴う
 自己責任で任務を受けろってことか
 俺が目に留まったのはある任務が書かれた紙だ
 そこには「神退治」とだけ書かれており、報酬額は破格の5万トークン
 内容は全く何も書かれていない。写真が貼られている。これが退治目標ということだろう
 だが、ボケすぎて何も見えない。何か写ってるような気はするが
 5万トークンするだけあり推奨ランクはA以上と書かれている
 神退治、気になるな。神の森に住む、神と崇められた生物のことだろうか
 任務の場所も神の森周辺だしな
 街巡りも気になるけどこれも気になる。悩ましい
 

 「任務の一覧表ですか?1つだけ桁外れのものがありますが」

 「この任務は気になるな」

 「一覧表なんてルースにありましたか?」

 「無かったと思うよ。多分」

 「モゼさんがそう言うってことはあったんでしょうね」

 「俺が言う事って全部真逆なんだ……」

 ポンコツすぎてとうとう信用されなくなった
 ギルド・ルース支部に一覧表があったかは覚えてないけど多分無かったと思う
 はっきりは見てないから分からないけど
 その上で言ったのに一蹴された
 逆の信用が生まれてるような気もするが
 言う事が信用されないのは普通に傷つくよ


 「その桁外れな任務がどうしたんですか?」

 「気になってね。神の森が隣にあるじゃん。任務場所、神の森周辺だしそれと関係あるのかなって思って」

 「でもその任務の推奨ランクA以上ですよ。私はCランクなので推奨ランクには入ってませんけど……」

 「大丈夫じゃない?俺がいるから」

 「モゼさん一人だと迷いそうですし付いていきます。戦闘は全てお任せします」

 「うん。戦いは任せてよ」

 まとまったところで任務の場所に出発しよう
 案内はパレードに任せて俺は戦闘に集中する
 戦闘しか取り柄ないからね(言ってて悲しい)
 もっと出来ることが増えればいいけど


 「よし、案内よろしく」
 
 「まだギルドの中ですよ。街を出るところまでは分かりますよね」

 「……うん。多分」

 「……分かりました。案内します(これ、ダメなやつですね)」

 もう怪しい。どこから入ってきたっけ?
 入り口が分かればそこから出られるけど覚えてないや
 パレードも察してくれてる
 これじゃあパレードが俺の世話係になる。世話してもらうために一緒にいるんじゃない
 俺たちは仲間だ。助け合いは必要だけど、これじゃあ依存だ
 パレードにもパレードの旅がある。パレードに迷惑はあまりかけたくない(もうかけてるか)
 これから迷惑をかけないように気をつけないと
 自分のことは自分でやる。当たり前のことだ
 アドナイ様、生活面どうにか出来ないですか?

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