76 マナト、ジンの考察②
ルナが、マナトの顔をのぞき込んだ。
「えっ、あっ、美味しいですか?」
「はい。……でも、どうしました?」
いぶかしげな顔をマナトに向けている。
「いや、ちょっと、そうですね……ルナさん、一つ、聞いていいですか?」
「いいですよ〜。ムグムグ……」
「実際に、ジンに会ったことはありますか?」
「ムグムグ……ないですよ。むしろ、マナトさんは、会ったこと、あるんですか?」
「あっ、いや、ええと、ないというか。そうですか……」
……ジンのあの身体の構造、どうなってるんだろう?
激闘の末、余裕の表情で塵と共に消えるジン=マリードがマナトの頭に浮かんだ。
……いや、もう、そこを考えるのはナンセンスか。てゆうか、ドレイクとか人魚の時点で、もう何が起きても不思議でないという……
「あっ!」
「えっ!?」
ルナが驚いてマナトを見た。
……そうだ!不思議といえば、マナだ!
マナの力が当たり前のこの世界。しかし、前の世界から考えてみれば、当たり前でないどころか、完全な超常現象だ。
水壺だって、水を自在に操るのだって、現象をもってしか説明できず、科学的には説明できない。なぜか。マナの力が働いている、としか言いようがない。
「……マナトさん?」
ルナがまた、マナトの顔を覗き込んだ。
……この水の能力だって、操れるようになってしまえば、たとえばスイッチを押せば電球がつくように、アクセルを踏めば車が走るように、詳しい原理を知らなくてもできてしまうのと一緒の感覚で水を動かすことができる。
それはともかくとして、マナの力と、ジンとの関係性だ。
ジン=マリードは、マナトが水を操れるように、火を操っていた。
「……いや、全部使えるって、確か言ってたな」
「えっ?」
……しかも、あえてと言っていた。おそらくマナトと同じように水も操れるし、他の能力も持っているということだ。
そして自分は、マナを取り込むことにより、水を操れるようになった。
「マナトさ〜ん」
ルナが手を振っている。
……確証はないが、あれはおそらく、マナの力で操っている。
このことから考えるに、ジンは塵とマナでできていると言えるのではないだろうか?さすがに簡易的か……いや、そうでないにしても、少なからず関係性は……
「えい!」
「ムグ……!」
ルナが口に入りきらないくらいのナンを、マナトの口に突っ込んだ。
※ ※ ※
「おう、お前ら、戻ってきたな」
「お帰り、ルナ、マナトくん」
マナトとルナが宿屋に戻ると、先にケントとフィオナが戻ってきていた。ミト、ラクト、ウテナもいて、ロビーで何やら話をしていた。
「俺とフィオナで、王国の外に出て、護衛団の前線基地に行ってきた」