巨乳女騎士を添えて~〈新キャラ!〉獣人と淫魔のハーフもいるよっ!
「な、なんだ? この妙に可愛い子は、お前の知り合いか?」
「あ? ああ、コイツは魅惑の獣姫<バラック・ヴォックス>別名:ディアボリック・ヴォックス…」
「うへー、ディアボリックって止めてよねー。こんにちは人間さん、気軽にヴォックって呼んでねっニッシッシー!」
腰に手を当て、ピースサインを突き出し天使のような笑顔で笑う。
乳山は「なんだこの人!? まともすぎる! というか可愛い過ぎる! お前の知り合いのはずなのにおかしいぞ!?」と失礼なことを騒いでいたが、すぐさま打ち解けたらしく、下らない雑談なんかを交わしていた、女の友情ってのはまさに疾風迅雷だな、ケケッ。
仲良く談笑していた乳山とヴォックスだが、ところで、と話題を変え、俺に「さっきの<幼稚>な夢は何だったんだろうな…」と、聞いてきた…ほらな、まさに疾風迅雷。
「よ、幼稚!?」
「ああ~ケケッ、あれは…なあヴォックス、オメーの能力じゃなかったか? 淫夢、オメーのだろ?」
「い、淫夢!? あのメルヘンが!?」
「人間さん!?」
ヴォックスとは知り合いっつうよりは、腐れ縁みてーな関係だった、だからといって人よりもコイツのこと良く知っているだとか、深い関係だったとかは――なかった、気がする。唯一俺が知ることといえば、コイツの女児趣味なところくらいか、このネタで何度かちょこっと金を借りたりだとか、無理をきかせたりだとか、そういったことはしたが、その程度の関係だ。
…だったんだが、それとは別に、今は結構その趣味が頭に来ている。
「いまだに少女趣味とか恥ずかしーぜえ、何だっけ? 白馬に乗った王子様がお花畑に王女様を迎えに来て? キスするって? お前五才児か!!」
「うー…それ言わない約束……、でも人間さんなら分かってくれるよね? ど、ドキドキするよね? そういうお話、純愛だよ!? みんな好きでしょ?」
「かあああ、ペッ! もっとやる気出せ! 仕事しろ淫魔!! ぜんっぜん興奮しねーわ、淫夢って他にもっと誘惑する感じであるだろ!? なにあれ!? 絵本の読み聞かせ!? そういうのマジでいいって! お前の想像力の限界あれかよ! ピュアすぎるだろ! 淫夢なめんな!!!!」
俺は淫夢というものを体験したのは初めてだったので、必要以上に怒ってしまった、だけど分かるよな? 淫夢、男なら期待しちゃうだろ!? それを、このドぐされ淫魔が…だから部下にもガキ扱いされんだよ。
「うあああ!! ジン君が! ジン君がイジメてくる! 必要以上に言ってる気がする! 夢の最後は結構ノリノリだったくせにィ! バカ! バカクズ魔族ウウウウ!!」
「淫夢っていう自分の性癖暴露された上に、その性癖が余りにも幼稚すぎて、ピュア扱いされる淫魔って…おいお前、言い過ぎだぞ」
お前もな。
「おいこら起きろ、オメーもう泣き止んでんのバレバレだからな、ん、おい蹲るな! …寝転がるな! 情けねーとこ見せるんじゃねーよ! オメー<四天王>だろうが!」
「え…………ええええええええ!!!! し、四天王!?」
ずいぶんとオーバーに驚く乳山は、地面でうつぶせになりふて寝しているヴォックスを見ると、これが!? という目を向けている。なんだか俺まで恥ずかしくなってきた、悪かったな、こんなんが四天王で。
ヴォックスはのそのそと起き上がり、パンパンと体についた汚れを落とすと、ポーズを決め。
「フッフッフ、よくぞ見抜いた、私が、私こそがッ! 魔王軍最高幹部の一角<四天王>魅惑の獣姫バラック・ヴォックスその人だったのだ!! ガオーー!」
いや、いまさらなかったことには出来ねーぞ?
まあ、ある意味、最悪のタイミング四天王バレしてるさなか、なかったことのように名乗れるのはさすが四天王と言うべきか? いや違うか。おい、その何とかなったって顔やめろ。
「くッ、最悪のタイミングで四天王バレしてるのに、最後のガオーの可愛さで全部持っていかれた! 悔しい! でも可愛い!!」
「そーかそーか良かったな、じゃあヴォックス、俺たちは先急ぐんで」
俺は乳山に目くばせを送ると、一瞬ポカンとしていた乳山だったが、手をたたき「うむ、そうだった追われてるんだった」と自分達の置かれている状況を思い出したようだった。忘れるか? そもそも。
明らかに耳と尻尾を垂らし、しょんぼりして俺たちを見送るヴォックス。よく残念そうにできるな。
「「…。」」
「…。」
俺たちは速足でこの部屋の出口、すなわち本丸へと繫がる扉を目指し歩みを進める。
二十メートル…十九メートル…十八メートル。
「ちょっと待ったーーーー!!!!」
後ろからヴォックスの呼び止める声が部屋に響き渡る。ちっ、気が付いたか。
俺たちはお互いに目配せをすると、――――全力ダッシュした。
もちろん、待つわけない。後ろから「ち、ちょっと!」という声が聞こえた気がしたが振り返らずに駆け抜ける。
十メートル…五メートル…三メートル。
「すううううううう――――、ギッ」
後方から空気を吸い込む音が聞こえ、確認するまでもなくヴォックスが<やる気>だと感づくと、俺はすぐさま走るのを止め、両手で耳をふさいだ。
ジン「耳を塞げ!!」
乳山「え?」
ジン「早くしろ!!!!」
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』