巨乳女騎士を添えて~人外もあるよっ!
「敵が魔王城に侵入してきたぞーー!!」
どこからかそんな声が回廊中に響き渡った。
ついに表の門を破り、人間たちがこの難攻不落と謳われた<魔王城>を不遜にも、席巻しにきたようだ。
まあ、そんなこと、俺には関係ねーが。
「何故だ!? 何故こんな穀潰しに――!!」
「ゲーーヘッヘッヘ!! 今日はホントについてるなあ!!」
魔王城の端の端、先端に位置するこの砦は、本丸と地続きで繫がっている珍しい作りの重要な防衛拠点である、が、今は人間に攻められ珍しくピリピリしているこの魔王城内部の砦の回廊、そのド真ん中で、茣蓙を引き、俺は堂々と賭け事(人間の間で人気だというチンチロ)に興じていた――。
俺、というより、俺たち防衛部隊全員といった方が適当か。
「ぷぷっ、ねえねえ今どんな気持ちー? 馬鹿にしてた相手に乗せられて全身剥かれるって、なあなあ、どんな気持ち~?? オホッ、いい顔すんな~、プルプル震えちゃって、怒った? ねえねえ怒った? ぷはあ˝あ˝あ˝、その悔しそうな顔見ながら飲む酒は格別だなあああ! ゲヘヘ…ゲヘ、ゲーーヘッヘッヘ!!」
俺の目の前には鎧も全身剥かれ、小さくまとまっている、ココの防衛を任されている獣人族(コボルド)の隊長さんがプルプルと怒りを噛み殺しながら「なぜ…なぜ…」と小さく呟いている。
このお偉い隊長さんは、防衛任務で回廊に集められた十数人の部隊長を任されたらしく、戦争中にもかかわらずダラダラと茣蓙を敷き部隊の後ろで賭け事に興じていたところ、偉そうに、いや、蔑んだ目で、鎧を着ろだの士気が下がるだの喚いていたので、ちょろっと酒を見せびらかして誘ったら、今はこの通り、大人しく、小さくまとまっているってわけだ。
「そんなんでココの防衛とか出来るんですかー? 偉そうに言ってたよなあ、頭ヨワヨワのテメーにもわかりやすく言ってやるよ、テメーみてえなもんがいくら張り切っても、昇進なんて夢のまた夢、お前の憧れてるヴォックスにもなあ届くわけねーんだよ、現実みろヴァーカ!!」
「テメェ! ぶっ殺してやる!!!!」
「うあああああ! 待て! 分かった、言い過ぎた! 謝る、謝るから!! ぎゃあああああああああ!! 折れた、マジ折れたって!!」
「ヤレッ!! ヤレエエ! 金返せええええ!!」
と、そこで隊長の堪忍袋の尾が切れたのか、もはや攻め込まれていることなど忘れ、コボルドの隊長に押し倒されタコ殴りにあう。
というか。
さっきまで一緒になって賭けてた連中まで好きかって言いやがって、このクズ魔族どもが。
俺は顔を防御していた手を払いのけられた衝撃で、指から魔道具である指輪を茣蓙に落とすと、指輪は淡い光を発し、中に収納し隠していたシゴロ賽をばら撒いてしまい、それを見た隊長はますますいきり立ち、俺を理不尽にも責め立ててくる。
「ジン。テメェ! やっぱりイカさまシテやがったな、このクズ野郎」
「なにアメーこと言ってんだ、見抜けねーオメーが悪いんだろうが!!」
「このッ!」
「分かった! 落ち着け、分かったって!!」
ったく、ぼこすか殴りやがって、これ以上殴られたらゴブリンみてーになっちまうじゃねーか。
降参の意を表すように両手をあげると、しぶしぶと、俺の上から降りそのこぶしを収める。
「チッ…分かったよ、鎧と武器は返してやる」
「ふざけんな、俺から奪った金も時計も全部返せ! イカサマ野郎」
「それはできないね、俺がイカサマしてたのは鎧と武器の時だけだ」
「このッ、クソ野郎が! いい加減に――」
「おい、これでもサービスしてんだぞ? イカサマはギャンブルの基本、その場で指摘できないお前が悪い」
「くっ…」
「それに<惑わし、騙し、奪う>こっちは魔族の基本だろ? 魔族の王、魔王様に仕える魔王軍の兵士ともあろうヤツが、それ以上ピィピィ泣き言並べるわけじゃあないよな? ん? どうなんだ?」
「…ちっ」
「納得していただけたようで、じゃ、俺はこれで――」