35 共行⑤／盗賊団との戦い
「マナト！」
ケントが大声で言った。
見ると、敵数人、マナトと集まっているラクダに向かって素早く距離を詰めてきていた。
「頼んだ！」
「はい！」
マナトは、今度は落ち着いていた。
右手をかざす。
――シュゥゥォオオオ。
水壷の栓は外れ、水流が渦を巻きながらマナトの周りを巡り、かざした右手のもとに集まる。
「あ、あのコ、まさか、能力者なの！？」
「あの水！あの時の……！」
「えっ！？」
フィオナ、ウテナ、ルナが、ビックリした様子で、水流をまとうマナトを見た。
「そうだ！マナトはマナの力を得た、水を操る能力者だ！どうだ！」
戦いながら、ラクトが、得意げに言った。
――シュゥォォ……！
マナトは右手に集まった水を、左手で下から包み込むように収め、両手で水を圧縮した。
そして構える。
「なんだ！？」
敵が異変に気づき、一瞬、動きを止めた。
「今！」
マナトは両手を押し出した。
――ピュゥゥゥウン！
マナトの両手に収められていた水の塊から、レーザーのように、水が直線に勢いよく放たれた。
――ビィイイイッ！！
「んぎぃぃ！？」
敵の顔に命中。水圧に負けて後退した。
「おぉ、あれか！水の光線『テッポウウオ』。実際に見るの、初めてだぜ！」
ケントが言った。
テッポウウオという魚がいる。
その魚は口に含んだ水を勢いよく発射し、水面の遥か上にいる小動物を撃ち落として、捕食するという特技を持っている。
そこから、ヒントを得た。
右手を上顎、左手を下顎として、僅かに開いた指の間、つまり口として、手の中で圧縮した水を飛ばし、水圧で敵を攻撃する。
これが、マナトが水を操る能力を得てのち、覚えた技の一つ『テッポウウオ』だった。
――ピュン！ピュン！
テッポウウオは、連射可能だった。そんなにダメージはないが、次々と命中し、どんどん敵は後退していった。
「クソ！何だ、たかが水鉄砲くらいで……！」
敵の一人が、ダガーを上手く使って、テッポウウオをいなしながら、再度、マナトに向かってくる。
「……今度は、ちょっと、危ないよ」
マナトが指を開いた。そして、足に力を入れた。
「はっ！」
――ドドドドォォオオオ！！
「んなにいぃぃぃ！？」
木の幹くらいの太さの水柱がマナトの手から放たれ、敵に直撃した。水圧も、何倍もの強さだ。敵はもの凄い勢いで吹き飛んだ。
「驚いたわ……。能力者になるには、確か、マナを身体に取り込む必要が……」
フィオナは、チラッと、ルナを見た。
「ほ、本当に、マナを……」
ルナの青い瞳には、マナトにまとう水流が写っていた。
「ナイッスゥゥ〜！」
ケントが拍手していた。
テッポウウオで敵を一掃したマナトは、ケントを見た。
……あれ？ケント隊長、あんまり、戦ってないんじゃ？
ケントは、筋肉隆々な上、背中に凶悪そうな大剣を背負っていた。明らかに強いオーラが出ている。
おそらく、その姿を見て、盗賊団も最初から明らかにケントを避けている感があった。
