第42話 鉱石の回収とリリのクッキング
「『ファイアボール』!」
「『サンダーボルト』」
「ギヤァァァ!!」
俺とリリは次々と現れてくる魔物たちを魔法を使いながら倒していった。リリは俺の『ファイアボール』を【助手】のスキルによって習得したらしく、俺の半分ほどの大きさの火の玉を作って迫ってくる魔物にぶつけていた。
俺は同じく初級魔法の雷の魔法を魔物にぶつけていた。雷のようなものを手のひらに集めて、それを相手にぶつける魔法である。本来は、そこまで殺傷能力の高い魔法ではないと思うのだが、俺の魔法の『サンダーボルト』は着弾した場所に焦げ跡を作り、そのまま魔物が倒れてしまうほどの威力だった。
中級魔法とかも試してみたかったが、初級魔法が初級魔法の威力ではないくらい強くなってしまう今の状態で中級魔法を打ち込んだら、ここが崩れてしまうような気がしたので、初級魔法だけしか使わなかった。
「よっし、一旦ここら辺でやめて鉱石を『スティール』で引き抜くぞ」
「わかりました! そっちに魔物集めていきますね」
そして、一定数まで魔物を倒し終えると、倒した魔物を拾いながら『スティール』を浴びせていく。そうして、鉱石を溜め込んでいる魔物から鉱石を奪い取って、そのままアイテムと魔物をアイテムボックスに収納する。
そんなふうに繰り返していくと、つるはしで掘り出すなんて比ではない量の鉱石を集められていた。
そして何より、魔物の体内にいたことで魔力を浴び続けたせいかその鉱石は大きくて、素人が見ても質が良いと判断できるくらいの物だった。
これなら、数日でガルドが言っていた量に達することができるだろう。
まぁ、言われた鉱石ではない鉱石も取ってしまったので、少し余分かもしれないけどな。
「もう随分と鉱石取りましたね」
「ああ。正直、ここまで取ればもう帰ってもいいんだろうけど、依頼料を貰う分の仕事はしないとな」
なんだか少し試されているような気もするし、せっかくならガルドが言っていた分くらいの鉱石を持って帰ってやりたい。
それに、テントなども貸してもらっておいて日帰りで帰宅というのもよくはないだろうしな。
「リリ。今日は結構奥まで来たし、あそこで休むことにしよう」
丁度良い所に少し開けたところがあったので、俺たちはそこに移動して休むことにした。鉱山に入ってから歩き回ったり戦ったりしてきたので、もうお腹がペコペコだった。
俺たちはテントを張るよりも早く空腹を満たすために、ルードから借りたアウトドアセットをアイテムボックスから取り出して、調理器具を出していった。
「リリ。料理をお願いしていいか? 俺はテント以外の野営セットを準備しとくから」
「お任せください! アイクさんの胃袋掴んじゃいますから!」
「お、おうよ。お手柔らかに」
リリは俺が簡易的な机の上に置いた調理器具と食材を手にしながら、嬉々とした表情でそんなことを言ってきた。
言葉の意味を分かって言っているような気がしなかったので、俺は冷静を装ってリリに背中を向けて野営の準備をした。
……不意打ちはあまり心臓によくはないようだ。
俺はリリがリズミカルに包丁を使う音を聞きながら、野営の準備をしていた。その音を聞く限り、料理ができるというのは本当みたいだった。
やっぱり、なんやかんや言いながら助手というだけあって、俺にできないことをできるんだなと俺は静かに感心したのだった。
しかし、リリが火を使ったあたりで俺はとあることに気がついた。
「今さらだけど、こんなところで火を使って料理したら魔物が寄ってくるんじゃないか?」
「……なるべく早く済ませるので、寄ってきた魔物はアイクさんにお任せします」
リリの手元からはブラックポークとスパイシーな香辛料の匂いが香ってきて、今にもよだれが垂れてきそうだった。
そして、そんなことを考えているのは俺だけではないようだった。
「ギャぁ?」
その料理に釣られてやってきた魔物の声を聞いて、俺はそっとその場から立ち上がった。どうやら、まだゆっくりとご飯を食べるのには時間がかかりそうだった。
「アイクさんには肉多めに盛っておきます」
「……よっしゃ!」
俺は深いことを考えるのをやめにして、肉が多くもらえるということだけを考えて魔物に向けて魔法を唱えるのだった。