ある日の七夕日記1 番外編
ある日、ぽかぽか精霊樹の下では
「ご~ちきにょ た~んじゃく~♪」
サーヤとゲンさんと凛さんがテーブルで何かしてるのを見つけたフゥとクゥとちびっこたち。
サーヤがご機嫌に何か歌いながら、足をぶらぶら、手をぐりぐり動かしております。
「さ~ぁやがかいちゃ~♪」
何を?
「お~ほしちゃま き~りゃきりゃ~♪」
お星様を書いたのかしら?
「きんぎんすにゃも~♪」
金銀、砂も?
『サーヤ、なんかもう、めちゃくちゃだな⋯』はぁ
「う?」
ぐりぐり。おいちゃん、なんですか?
『あらあらまあまあ、サーヤ、「砂も」じゃなくて「砂子」ね』
「う?」
ぐりぐり。おばあちゃん、すなご何?おいしい?じゅるり
『サーヤ、食べないわよ⋯砂子は金箔や銀箔を砂状にした物ね。まあ、キラキラの砂って言ったら分かるかしら?』
「ふお~きりゃきりゃ~」
ぐりぐり。いいな~
『それで、サーヤはさっきから何をしてるの?』
『それは何だ?』
フゥとクゥが覗き込んできました。
「う?」
ぐりぐり。これ?
「はちしゃんにょ、くりぇよん!」
ぐりぐりぐりぐり。
『ハチさんの』
『くれよん?』
フゥとクゥが仲良く同じ形に首をかしげてます。
「あい!おえかきちてりゅにょ~♪」
ぐりぐりぐりぐり。
『おえかき~?』ふんふん
ぴゅいきゅい『『なんかいいにおい~?』』ふんふん
『『ちょっとペトペト?』』つんつん
『『『いろんないろ~』』』ふわふわふわ
みゃあ『まるにゃ?』
『う~ん。何の絵なのだ~?』
ちびっこたちも興味津々で匂いを嗅いだり、触ったり、絵の上を飛んでみたり、なんの絵なのか考えたり
『『ゲンさん?』』
こういう訳の分からないことはゲンさん!解説も!原因も!
『う~ん、少し前から紙漉きと並行して筆記用具の開発をな、親方や他のドワーフ達としてたんだよ。サーヤたちに読み書きとかさせるにも必要だからと思ってな?』
そうなのです。おいちゃんは、こうぞ?とか、みつまた?とか、がんぴ?とかいうのを育てたり(もちろん種はサーヤだよ!)工房を建てて、道具を作ったり色々してたんだよ。木炭っていう、絵を描いたりする道具はすぐ出来たみたいなんだけど、えんぴつは『黒鉛はあったんだけどな、丁度いい硬さの粘土がなかなかな~』って、ちょっと大変みたい。それで先に
『レンゲ女王とアカシアに頼んでな、巣から蜜蝋を分けてもらったんだよ。このクレヨンは蜜蝋とオリーブオイル、色付けは食材で出来るんだよ。万が一、口に入っちまっても安全な訳だ』
『これは試作品一号だそうよ。実際にサーヤに試してもらってるところね』
そうなのです。おいちゃんはレンゲたちにお願いして先にクレヨンを作ってくれたのです!クレヨンには和紙が巻いてあるからお手手も汚れないよ!
『そういうことね』
『それでサーヤこれは何を書いたんだ?』
「う?おにぇがいごちょ!」
サーヤは今、おいちゃんたちがお野菜を混ぜて作ってくれた色んな色の紙にお願い事を書いてるんだよ。見たらわかるでしょ?ぐりぐり。
『え?お願い事?このぐちゃ⋯』パシっ『んーんーっ』
『色違いのただの丸じゃ⋯』パシっ『むーむーっ』
「う?」
フゥ?クゥ?どうしたの?急に黙っちゃったから、顔を上げたら
『んーんーっ』
『むーむーっ』
後ろから抱きつかれたフゥとクゥが。
「あー。じーにしゃま、むすびはしゃま」にぱっ
ピッタリお顔くっつけて仲良しだね!
『んー』違うわー
『むー』助けろー
〖ふふ。サーヤ、お絵描き上手ね(ダメでしょ?せっかくサーヤが楽しくかわいくお絵描きしてるのに)〗
ジーニ様がフゥにお顔をくっつけてのぞいてきました。
「えへ~?じょーじゅ?」
〖ええ。上手よ。ねぇ?〗
こくこく。頷くしかないフゥ。
「えへへ~♪」
上手だって~
『サーヤ、一生懸命書いたのねぇ。えらいわぁ。これは水饅頭かしらぁ?(小さい子が頑張ってたら褒めてあげなきゃ、ねぇ~?)』
こくこく。こちらも頷くしかないクゥ。
「しょだよ~♪」
水まんじゅう上手に書けたでしょ~?じゅるり
『水まんじゅう~?あれ~?』
ぴゅい?『サーヤ、おねがいごと』
きゅい?『かいてたんでちょ?』
『『みずまんじゅう?』』
『『『なんで~?』』』
みんなが不思議がってます。
『それがな?試し書きがてら、七夕も近いし、せっかく色紙が出来たからな短冊にしてお願いごと書いたらどうだ?って言ったんだよ』
「あい」
そうだよ。おいちゃんが言ったんだよ。だから、今かきかきしてるでしょ?ぐりぐり。
『そうしたら、書き出したのがね⋯サーヤ、これは?』
おばあちゃんが端っこの紙を指さしました。教えてあげなくてもみんな分かるでしょ?仕方ないな~
「みじゅまんじゅう!」
『あ~たしかに、この薄い水色の真ん中、あんこか』
(この微妙な潰れ具合、水色のスライムじゃなかったのか⋯結葉様、よくお分かりになったな)
「あい!ぷりゅぷりゅ~」
ギン様いつ来たのかな~?おいしそうでしょ?
『じゃあ、この黄色いのは?』
「こんぽちゃ!」
〖ああ。黄色いスープの中によく見るとコーンの粒がありますね〗
(この黄色い丸は満月ではなかったのですね)
「しょだよ~!」
コンポタはつぶつぶ入りじゃないとね!エル様もつぶつぶ派かな~?
『ふむ。では、この緑の山は?』
「ずんぢゃぷりん!」
アルコン様も好きでしょ~?
『なるほど、枝豆の色がよく出てるな』
「えへ~♪」
(良かった。破壊した山を戻せとかいう意味では無いのだな)
『じゃあ、サーヤこれは~?』
ハクが白い何かモサモサした絵を指すと
「はく!」
『え~?ぼく~?』
「あい!しょだよ~もふもふ~♪」
『これ、ぼく⋯』
(ぼく、丸いの?ぼさぼさなの~?)
なんでハク泣きそう?そんなに嬉しいのかな?
みんなでハクに同情の視線を送ってから、信じられないものを見るようにジーッと目をこらして絵をみると⋯
ぴゅいきゅい『『あっおみみ!』』
よ~く見ると白くて丸いもしゃもしゃの絵にはてっぺん近くに小さい三角らしきものが二つ
「しょだよ~!もふもふ!」
見ればわかるでしょ?
『あっこれ!』
『しっぽ!』
「しょだよ~!もふもふ!」
ふりふりしてるんだよ~
『あ~なるほど』
『だから~おしりから』
『さんぼんも~ながいの』
みゃあ『でてるにゃ~』
『でも、これ全部お願いなのだ?』
並べられたのはサーヤの好物と大好きなハク。
確か、お願いごとと言ってたはずなのに?
『どうやら、お願いごとと言うよりは、食べたいものになったらしいんだよな』
『え?ぼく、食べられちゃうの~?』
ぴゅいきゅい『『だめーっ』』
おいちゃんの説明に誤解したちびっこたちが震え始めちゃいました。
「はく、ちゃべにゃいよ?」
ハクはなまものだから食べられないでしょ?
『サーヤ、ハクは生物とは言わないわ⋯もう、ゲンさんたら言葉が足りないから誤解されるんですよ』にっこり
「ご、ごめしゃい」ぶるぶる
『す、すまん。凛さん』がくがく
『みんな、大丈夫よ。ハクを食べたりしないわ。大好きだからずっともふもふしたいのよね?ね?サーヤ』
「あい!はくだいすち!もふもふは、しぇいぎ!」
もふもふさいこー!
『ほんと~?サーヤ~僕も大好き~』
「はく~」
ぎゅうっとハグです!
ぴゅいきゅい『『え~』』
『『ぼくたちは~?』』
『ん~?』
『まって~?』
『みんなみて~?』
みゃあ『あっ!くび?のとこ、何かあるにゃ!』
「しぇにゃかだもん⋯」
『にゃっごめんにゃ?』
首じゃないよ背中だよ⋯
『色んな色の点々あるのだ!』
「みんにゃだもん⋯」
『ご、ごめんなんだな』
ちびっこ同盟みんないるのに~
ぴゅいきゅい『『うれちい!』』
『『サーヤ大好き!』』
『『『だいすきー!』』』
みゃ『ココロもにゃ!』
『姫もみんな大好きなのだーっ!』
「さーやみょ、みんにゃだいすち~!」
ちびっこ同盟が抱き合ってお団子状態!!その傍で
〖ううう。サーヤ私たちは~?〗
ジーニ様ったら、自分がいないと滂沱の涙⋯
『ふふ。ジーニ様ぁ、サーヤが書き途中の紙ぃ、見てみてぇ~?』
〖え?〗
そんなジーニ様に、結葉様がニヤニヤしながらサーヤの書きかけの紙を見てみるように促すと
『お?気づいたか?くくくっ』
『大好きな人が多すぎて書ききれないから、みんなの色をぐりぐりしてたのよね?サーヤ』
「あい!」
おいちゃんとおばあちゃんの言う通りです!
「さーや、みんにゃだいすち!ずーっちょ、ずーっちょ、いっちょにいちゃいかりゃ~」
『みんなの絵を書こうと思ったら紙が小さすぎたから』
『カラフルな点々になっちゃったのよね~』
「あい~」
入り切らないの~。だから、さっきからたくさんぐりぐりしてるんだよ~。
〖うぅぅっサーヤ~なんていい子なのぉ~私も大好きよ~〗
「あい!じーにしゃま、すち!」
ジーニ様が大号泣
『サーヤ~私はぁ~?』
「あい!むすびはしゃまみょ、すち!」
『私も好きよ~』
結葉様もにこにこです。
〖ところで魔神、結葉〗
〖何よ?〗
『なぁに~?』
感動のシーンに割り込んできたエル様をギロッと睨みつけるジーニ様と、なんか楽しそうな結葉様
〖そろそろそれ、放してあげた方が良いのでは無いですか?辛うじて息はあるようですが⋯〗
〖それ?〗
『うふふ。あらぁごめんなさぁい』
それ。と言われてみんながエル様の視線を追うと⋯
『『⋯⋯』』
ジーニ様と結葉様の腕の中でぐったり動かないフゥとクゥが⋯
〖あっしまったわね〗
『あらあらどうしましょ~?くすくす』
ジーニ様はともかく、結葉様は絶対!確信犯。
「うきゃーっ!ふぅーっ!くぅーっ」ガタガタガタガタ
『死んじゃった~!?』だだっ
ぴゅいきゅい『『いやーっ』』ばびゅんっ
『『フゥーっクゥーっ』』たたたたっ
『『『しんじゃや~っ』』』ぐるぐるぐるぐる
みゃ『しっかりにゃーっ』だっ
『おきるのだーっ』びゅんっ
フゥとクゥの大ピンチに大騒ぎのちびっこ達!椅子の安全ベルトで動けないサーヤは椅子をガタガタ!他のみんなはフゥとクゥに一目散!妖精トリオはフゥとクゥの上でくるくる。そして双子がっ
ぴゅいきゅいーっ『『おきてーっ』』びたびたっ!
フゥとクゥの顔に張り付いた!二人とも、それはダメ押し⋯
『わーっジーニ様、結葉様!とにかく放せ!』
『あらあらあらまあまあまあ?』
『モモ!スイ!放しなさい!二人が窒息する!』
『とにかくみんな二人を放して!息をさせないと!』
おいちゃん、おばあちゃんが一瞬遅れて慌てだし、顔に張り付いた双子をアルコン様が引き離しにかかり、ギン様が説得し、更に大混乱!
『モモスイ!放・し・な・さい!』べりべりっ
ぴゅいきゅい『『いやーんっ』』
アルコン様がようやく双子を引き剥がすと
『フゥ!クゥ!しっかりしろ』ぺしぺしっ
『あらあらまあまあ、起きて~』ゆさゆさ
『フゥ!クゥ!起きなさい!』ぺろぺろっ
みんなで二人を起こします!すると
『『⋯う~ん』』
二人が起きました!
「ふぅ~くぅ~」
『良かったよ~』
ぴゅいきゅい『『ごめんなちゃーい』』
『『起きた~』』
『『『うわ~ん』』』
みゃ『心配したにゃ!』
『そうなのだ!』
ちびっこたちも安心して一斉に泣きだしました!
『え?なんか、おれ、今まで花畑にいたような⋯』ぼー
『奇遇ね?わたしもよ⋯』ぼー
『『きれいだったな~』』ぼえー
フゥとクゥおめめが?どこ見てるの?
『おいおい。ダメなやつじゃないか?それ』
『あらあらまあまあ?』
『双子までスマン』
『無事でよかった』
安心するおいちゃんたち、そして
〖良かったでは、済みませんよね?フフフ〗
『そうですわね。シア様』フフフ
『妖精たちが慌てて呼びに来たので、来てみれば』フフフ
『こんな事になってたなんてにゃ』にゅふふ
気づけばジーニ様と結葉様の後ろには鬼の形相をしたシア様や精霊王様たちが
〖あ、あら?シア?これには訳がね?〗じりっ
『いやぁん、みんなお顔が怖いわよぉ?』じりっ
あっ、逃げ出すつもりだ
〖黙らっしゃい。お母様〗
シア様、目元がぴくぴく
『お母様もですわよ?それに』
『どこに行かれるおつもりですにゃ?』
アイナ様とニャーニャにゃんが二人の逃げ道を塞いでます。
〖ま、待って?話を聞いて?〗じりっ
『いやぁん』じりっ
あ~まだ悪あがきしてる~
『問答無用!お二人共、そこに直れーっ』ピシャーンッ!
〖ぎゃーっ〗
『いやーん』
あ~あ リノ様が光の矢を落としちゃった⋯
『ただ短冊に絵を描いてただけだったよな?』
『あらあらまあまあ。平和だったはずよね?』
「あい」
どうしてこうなった?
〖フフフ。あちらは任せておけば大丈夫ですよ。私たちも短冊書きに参加させてもらいましょう。フフフ〗
ぶるっ
「あ、あい。どじょ」さむ?
『そ、そうだな。紙はまだあるしな』寒いな?
『みんな感想聞かせてちょうだいね』寒いわね?
『『『『『は、はーい』』』』』寒い~
ぼそっ『なんだろな?寒気が走った気が?』
こそっ『あらあらまあまあ。やっぱり?』
ぼそぼそ『エル様が一番ひどいんじゃないのか?』
こそこそ『それこそ確信犯ですよね?』
おいちゃんたち大人組がコソコソ話してると
〖なんですか?〗にこにこ
『い、いや?なんにも?』
『あらあらまあまあ、おほほほ』
『そうだな、なんでもないぞ?なあ?』
『は、はい。もちろんです』
ガクガクブルブル
〖それは良かった〗にっこり
ほのぼのお絵描きが、一気に肝試し⋯
〖フフフフフ⋯〗
こわこわこわ