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【第零話】魔王、封印される。




 勇者が言った。

「魔王! お前を封印する!!」

 来た。ついに来てしまった。俺は絶望的な気分で、目の前で閉じつつある時空の歪みを見た。俺は膨大な魔力を腕に抱えているが、これを放つのも無理そうだ。空に浮かんだ時空の歪みは、まさに亀裂のように亜空間と世界を繋いでいる。その周囲に、三角を描くように、勇者・王子・魔術師が立っている。彼らの足元に、淡い黄緑色の光の線が走った瞬間、俺ごと時空の歪みの周囲には、封印のための結界が構築された。本来これは王族しか使えないが、今回は三人ともその血を引いている。ああ、俺、封印されるのか。

 正直嫌だ。キツイキツイキツイ。
 そう思った直後、俺は凄まじい吸引力で、時空の歪みの内側に引っ張りこまれた。そして目の前でそれが閉じると、薄っすらと見える時空の歪みが残した魔力膜の向こうで、俺を中心にした三角柱の結界が構築されたのが見えた。

「これでもう魔王の肉体は、王族以外は摘出不可能だ。封印は完了だ。あとは魂だが、それは消滅しない。だが、この結界ならば、違う時空に魂を飛ばせるはずだ。よって、この世界のこの時代からは消失する。即ち、俺達に出来る最善の方策だ」

 やりきったというような勇者の明るい声を聞いた直後、俺の意識は暗転した。


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