【四十二】連続殺人事件の続報
翌日は、秋雨が降っていた。夜まで僕達は、特に依頼が入るわけでも何があるわけでもなかったから、ダラダラとリビングで過ごしていた。
特に目立って会話をするわけでもないのだけれど、山縣と同じ空間にいると、不思議と落ち着く。今では、居心地がよくなりつつある。それだけ、時間が経過したからかもしれない。時が解決してくれることは、思いのほか多いのだと思う。
「ん」
その時、山縣のスマホが音を響かせた。通話に応答した山縣の顔が、険しく変わる。
通話を終了してから、舌打ちし、山縣が僕を見た。
「この前の事件の続きだ。お前も来るようにという指示だ。邪魔はするな」
「う、うん!」
こうして急な呼び出しで、僕達は外へと出て、玄関前に停まっていた青波警視の車に乗り込んだ。
改めて概要を聞くと、失踪事件の被害者の……生首が発見されたという知らせだった。
僕はグロテスクな話に怖くなって、両腕で体を抱きしめる。
山縣は慣れた様子で、被害者の首だけの写真を見ている。
チラリとそれが視界に入るだけで、僕の背筋があわだった。
すると山縣が、後部座席にともに座っている僕を、呆れたように一瞥した。
「何を怯えてるんだ? こんなもの、ただの肉の塊だ」
「っ、で、でも……こんなご遺体を見るのは……」
「死ねばそれはもうただの肉の塊だ。いちいち衝撃を受けてどうする?」
「……」
果たしてそうなのだろうか。
僕は殺害される前には、きっとこの被害者だって、恐怖しただろうと思い、胸が痛くなった。亡くなる前にも、色々な人生があったと思う。
同時に、首から流れ出たらしき血痕が、現場のアスファルトを濡らしているの光景を写真から見て、気分が悪くなった。
「山縣。何かわかったか?」
その時、運転しながら青波警視が声をかけてきた。
すると山縣が忌々しそうな目をした。
「分からん」
「ほう。珍しいな、山縣がそういうのは。寧ろ俺は、はじめて聞いたよ」
「相手は少なくとも、一般人ではない。普通の犯罪者とは考えられない」
山縣の声が険しくなる。
僕はその横顔を見ていた。
それから僕らは、現場へと出かけた。そこで本物の生首を見て、僕はギュッと目を伏せる。怖い。
けれど、山縣の助手になるというのは、こういった事件とも向き合うということだ。
だから僕は双眸を開けて、しっかりと向き合うことに決めた。